呼吸器系で働く看護師が1歩先を行くためのおすすめ資格3選~取得の流れまで~
学習意欲のある方が多い職業でもある看護師はスキルアップを考える方が多くいます。今回はスキルアップを考えている看護師の中でも特に呼吸器系で働く看護師にスポットを当て、さまざまあるスキルアップに役立つ資格の中で以下の3つに絞ってご紹介します。
・慢性呼吸器疾患看護(認定看護師)
・3学会合同呼吸療法認定士
・禁煙支援士
この3つに絞ったのは、これらすべてが資格取得時だけでなく生涯にわたってのスキルアップを保証してくれるものだからです。
呼吸器を極めたいと考える方の1番のスキルアップは日本看護協会が認定を行う慢性呼吸器疾患看護です。そこまで時間も費用も捻出が難しい方におすすめなのは、3学会合同呼吸療法士です。そして、まだあまり知られていませんが、禁煙支援士という資格があります。
1つ1つ丁寧に解説していきますので、スキルアップを考える際に参考になれば幸いです。
目次
1 呼吸器でスキルアップに役立つ資格3選
まずはそれぞれの資格についてスキルアップの内容をみていきましょう。
1-1 呼吸器を極めたいなら認定看護師の1つ慢性呼吸器疾患看護がおすすめ
2020年より日本看護協会によって改定された認定看護師の資格です。この資格を取得することで安定期、増悪期、終末期の各病期に応じた呼吸器機能の評価及び呼吸管理、呼吸機能維持・向上のための呼吸リハビリテーションの実施、急性増悪予防のためのセルフケア支援をすることができるようになります。
この資格は第3章で触れますが、取得のために100万円以上の費用を覚悟しなくてはなりません。取得後も呼吸器分野の第一線で活躍したいという方、これからも呼吸器の分野でスキルやキャリアを伸ばしていきたいという方におすすめです。(参照:日本看護協会 認定看護師)
資格取得者の働く場はさまざまで、病棟で働いている方、病院の外来で専門外来を立ち上げている方、クリニックで働いている方、訪問診療を行っている方がいます。
また、現在検討中とされている専門看護師の資格に呼吸器疾患看護というものもあります。まだ詳細などは告知されてはいませんが慢性呼吸器疾患看護の認定資格を取得した後、次の呼吸器でのスキルアップ、キャリアアップとして検討してみてはいかがでしょうか。
1-2 呼吸器を極めるかどうか決めきれない方は3学会合同呼吸療法認定士
臨床工学技士、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士の中で、それぞれの職種において呼吸療法を習熟し、呼吸管理を行う医療チームの構成要員を養成し、かつそのレベルの向上を図ることなどを目的として、特定非営利活動法人日本胸部外科学会、一般社団法人日本呼吸器学会、公益社団法人日本麻酔科学会の3学会が合同で立ち上げた資格です。(参照:公益財団法人医療機器センター 3学会合同呼吸療法認定士の資格)
資格を取得することで呼吸療法の実施およびその遂行に用いる機器の管理が業務としてできるようになります。ですが、国家資格ではないため名称、業務の独占ではありません。呼吸器ケアをチームでサポートしていきたいと考える方、呼吸管理を生涯にわたって極めるかどうか決めきれないが着実にスキルアップしたいと考える方にはおすすめです。
1-3 禁煙外来や企業看護師は禁煙支援士がおすすめ
禁煙支援士とは、2008年にスタートした資格で日本禁煙学会によって位置付けられた資格で、資格名の通り禁煙の支援を行う資格です。特に禁煙外来など外来で禁煙の指導を行っている看護師や企業で働く看護師が取得するとスキルアップ、キャリアアップが狙える資格です。
禁煙支援士の資格は段階によって初級・中級・上級とあり、この資格を取得することで禁煙支援看護師を名乗ることができます。(参照:日本禁煙科学会 禁煙支援士認定)
2 呼吸器で役立つ理由
資格を取得することは呼吸器系で働く上でどのようなメリットがあるのでしょうか。
2-1 充実したケアが提供できる
ご紹介した資格はすべて取得すれば終わりではなく、その後も更新などがあり、更新のために論文の発表や学会への参加などが求められます。そのため資格を取得したことによって一定期間あるいは生涯にわたってしっかりと学習できる環境が整ったということになります。整った環境で学習し続けられるため、そこで得た知識や技術は患者さんにも還元することができ、充実したケアの提供につながります。
3学会合同呼吸療法認定士の活動状況に関するアンケート調査によると、医療施設に役に立っているという回答は『はい』が63%で、その中で『呼吸療法の技術水準向上』、『患者管理』の順に役立っているという回答が得られています。
(出典:3学会合同呼吸療法認定士の活動状況に 関するアンケート調査)
(出典:3学会合同呼吸療法認定士の活動状況に 関するアンケート調査)
2-2 キャリアアップにもつながる
資格を取得し、一定以上のスキルがある看護師はキャリアアップにもなり、活躍の場も広げることができるようになります。
例えば、慢性呼吸器疾患看護であれば呼吸器のプロフェッショナルとして、自分が中心となって専門外来を立ち上げる、チームを作ることができる、後輩への指導や育成ができるなどのキャリアを積んでいくことが期待できます。
呼吸療法認定士であれば、救急やICU、在宅など活躍の場が広くなります。
キャリアアップを検討しているという方にも資格取得はおすすめです。
2-3 給料アップにもつながる
資格を取得することによって資格手当がついて給料アップにつながることもあります。特に認定看護師の資格は日本看護協会が行っている資格であるということもあって資格手当がつく傾向にあります。ですが、手当の金額は施設によって異なり、万単位から数百円単位と幅があるようです。
3 資格取得の流れ
前述した資格それぞれの取得までの流れについてご紹介します。
3-1 慢性呼吸器疾患看護取得の流れ
慢性呼吸器疾患看護の取得は他の認定看護師とほぼ同じですが、資格制度が移行していく過渡期ですので注意が必要です。以下で詳しく見ていきましょう。
3-1-1 他の認定看護師とほぼ同じ資格要件で実務経験のうち3年は慢性呼吸器疾患患者が多い病棟の経験が必要
まず認定看護師の資格を取得する場合には日本国での看護師の資格を取得し、通算5年間の実務経験が必要です。その上でこの5年間の実務経験のうち3年間は慢性呼吸器疾患患者が多い病棟を中心とした職場で実務経験を積むことが必要となります。
その際、外来、IRCU、または在宅ケア領域での実践を含んでもよく、できるならば現在も慢性呼吸器疾患看護に携わっていることが望ましいとされています。加えて慢性呼吸器疾患の増悪期から回復期にある患者の看護を5例以上担当した実績を有することも基準としています。(参照:日本看護協会 特定看護分野の実務研修内容の基準 (特定の看護分野における看護実績及び教育課程入学時に望まれる勤務状況))
3-1-2 2020年に改定された新たな認定看護師制度
実は認定看護師の資格制度は2020年を境に変わりました。呼吸器疾患看護認定看護師という名前に変わり、特定行為研修を認定看護師制度の中に取り込まれたことで、教育時間は600時間から800時間に増加しましたが、1つのカリキュラムで2つを兼ねることができるため、短期間に看護師の専門性を高めることができるようになりました。
※出典:日本看護協会 認定看護師制度の改正
より詳細に認定看護師制度の移り変わりについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください【廃止ではなく新たな制度へ!認定看護師制度をわかりやすく徹底解説!】
3-1-3 費用は他のオススメ資格よりも高く、100万円以上を覚悟しておく
費用については研修を受ける教育機関によっても異なります。おおよその目安ですが、学校の入学金や授業料、資格の交付料など認定看護師資格を取得するための費用だけでおよそ90万円~100万円ほどかかります。
現在病院に勤めている方は認定看護師資格支援制度などでこの費用を病院側が一部負担してくれることもありますので調べてみましょう。
なお、資格を取得後は5年ごとに更新をする必要があります。
3-2 3学会呼吸療法認定士の資格取得の流れ
3学会呼吸療法認定士の資格取得には受験資格に単位数が求められています。また、合格率が他の資格に比べて低いです。
そのため、事前に資格取得の流れをしっかり整理しておきましょう。以下で解説していきます。
3-2-1 受験資格:2年の実務経験と12.5点以上の単位数
3学会呼吸療法認定士の資格取得の対象者は看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士となり、看護師は2年、准看護師が3年の実務経験が必要です。これに加え委員会が認める学会や講習会に参加して12.5点に上を取得していることも条件になります。
単位取得のためには、認定委員会の認めた学会及び講習会に出席する必要があります。この学会及び講習会はこちらのリンクをご参照ください。(参照:認定委員会の認めた学会及び講習会)
取得点数の目安は以下のように紹介されています。
a.期間が半日の場合12.5点
b.期間が1日の場合25点
c.講師として講義した場合30点
(※引用元:認定委員会の認めた学会及び講習会)
なお、認定試験の受験資格は条件を満たした年度から3年間有効となります。
3-2-2 合格率は70%前後とハードルは高め
2021年度の合格率は70.0%でした。過去5年の受験者数、合格者数、合格率を見てみると、合格率は70%前後とハードルはやや高いことが分かります。
(参照:認定実施状況)
3-2-3 認定までの費用は33,000円、5年ごとの更新料は3,500円
認定までに認定講習会の受講費20,000円、認定試験の費用10,000円、認定試験合格後の登録料3,000円がかかります。
試験はマークシート式で全部で140問です。内容は参加した学会や講習会の内容、配布されているテキスト、普段の業務内容からの出題ですので、勉強時間を十分に確保しなくても比較的解きやすいです。
5年ごとの更新も必要になりますが更新は3,500円の更新料と、試験ではなく講習会や学会、論文発表を行って一定の単位数を取得することが必要です。(参照:公益財団法人医療機器センター 3学会合同呼吸療法認定士の資格)
3-3 禁煙支援士の資格取得の流れ
禁煙支援士は新しい資格ですので、資格取得の流れや費用を事前にしっかりと押さえておきましょう。
3-3-1 初級、中級、上級と区分され、ハードルが低いところからチャレンジできる
初級の場合、日本禁煙科学会会員となり、5年の間に認定講習会等参加点2点を満たし、禁煙支援士認定試験に合格することで取得できます。
参加点は以下のように計算されます。
・日本禁煙科学会学術総会:参加点 3点
・日本禁煙科学会が主催・共催する講習会等(2日間):参加点 3点
・日本禁煙科学会が主催・共催する講習会等(1日間):参加点 2点
・日本禁煙科学会が後援する講習会等:参加点 1点
(引用元:禁煙支援士 認定条件の詳細)
中級の場合、日本禁煙学会の会員となり、初級を取得し、5年の間に認定講習会等参加点5点を満たすことで取得できます。
上級の場合、中級を取得し日本禁煙学会に年会費を支払い済みであること、5年の間で講習会等、参加点12点以上を取得しそのうち6点以上は学術総会参加によるものであること、教育研究点30ポイント以上を取得していることで取得できます。
3-3-2 費用は年会費5,000円、認定料及び更新料は5,000円~30,000円
資格の取得申請の際にかかる認定費は初級・中級で5,000円、上級で30,000円となりますが研修を受けるための費用や日本禁煙学会の年会費は別途5,000円かかります。研修の費用は研修内容によって異なります。更新料は認定料と同額になります。
試験は筆記試験となります。初級では経験などは不問ですが上級になると研究や実践した内容のレポートの提出が必要となるため、禁煙指導などのできる職場であることが理想です。(参照:日本禁煙科学会 禁煙支援士認定)
4 まとめ
呼吸器に関する資格を生涯にわたってスキルを保障してくれるものという視点で3つに絞って解説してきましたが、いかがでしたか?
資格取得までに時間も費用もかかりますが、医療機関によってはこの費用や時間を保証してくれるところもあります。是非、自身のレベルアップ、そして働いている医療機関のレベルの底上げを図るためにも資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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