訪問看護未経験者も効率よく勉強できるe-ラーニングおすすめ2選!
私は訪問看護ステーションを運営する企業で経営に従事しています。当社の看護師は平均年齢が30代前半と比較的若いこともあり、訪問看護を未経験で入社される方がとても多いです。2022年時点で入社時に訪問看護未経験であった方は90%でした。当社に入ってくる看護師100人のうち90人は未経験で訪問看護を開始しているという計算になります。
訪問看護業界というのはまだまだ新しい分野であり、今後も未経験者が多数入社されるだろうと考えています。入社時の看護師に話を聞くと多くは未経験であることを不安に感じています。
そこで、今回は転職する前に病院に勤務しながらでも訪問看護について体系的に学ぶことができるe-ラーニングについて紹介して行こうと思います。
e-ラーニングの魅力は何と言っても自分の都合に合わせてすきま時間等に見ることができるという利便性です。書籍での勉強をすきま時間に行おうとすると常に持ち歩かなくてはいけないですし、セミナー等は時間が決められており、かつ、セミナー会場にわざわざ足を運ばなければなりません。
実際に訪問看護に携わって始めて知ること・学ぶことは多いと思います。しかし未経験者にとってはe-ラーニングで体系的にイメージを掴むことがまずは大事なことと考えます。なぜなら、訪問看護に転職する前にイメージを掴むことができるため、自分にあっているか否か判断できるようになるからです。
訪問看護が自分にあっていないと思えば、今の病院での勤務を続けることを選択すれば良いし、また別の興味を持てる分野を探せば良いのです。
私は、働きなれた病院で心に余裕を持って次のキャリアの選択肢を探すことが、より良いステップアップに繋がるものと考えています。また、訪問看護を学ぶことで実際には未経験だとしても、学んだことは退院支援に活きることがあります。
以上を踏まえて訪問看護のe-ラーニングをおすすめします。この記事が訪問看護に興味を持った方に参考になれば幸いです。
目次
1 訪問看護のe-ラーニングをおすすめする3つの理由
訪問看護のe-ラーニングをおすすめするのは以下の3つの理由があるからです。それぞれの詳細をこの章では解説していきます。
・病院に勤務しながら学べる
・いつでもどこでも学べる環境が忙しい看護師にあっている
・新しい分野である訪問看護が体系的に整理されている
1-1 病院に勤務しながら訪問看護を学べる
e-ラーニングであれば、訪問看護ステーションへ転職しなくても、訪問看護へ部署異動しなくても訪問看護を学ぶことができます。
看護という仕事は、今自分が働いている場所で患者さんの対応が終わったらそれで終わりというわけではありません。病院と地域あるいは在宅は密接に連携をしていくことが必要で厚生労働省は地域包括ケアシステムを推し進めてており、すべての職種が密接に連携することを推奨しています。(参照:厚生労働省 地域包括ケアシステム)
例えば病棟で働く看護師さんが退院後の患者さんについて知りたいと思い、訪問看護について学びたいということもあるでしょう。しかし、病棟で働いていると病棟での仕事や学習が手一杯でスクールに通うなどしてまで今働いている部署以外の知識のインプットをしに行く時間はないかもしれません。
また、スクールなどに行けば訪問看護を志す意識の高い看護師が多く集まっており自分は場違いなのでは…と考えるかもしれません。この点、e-ラーニングを活用すれば自宅で自分の手が空いている時に学習できるのはもちろん、自分の家などで学習できるので周りを気にせず勉強することが可能です。
1-2 いつでもどこでも訪問看護を学べる環境が忙しい看護師にあっている
e-ラーニングというシステムは働く看護師にとって学習環境が適しています。インターネットを活用しているため自分の好きな時に好きな場所で学習をすることができるからです。
勉強のためにわざわざ教室に通うなどの手間が省かれ、自分のペースで学習を積み重ねていくことができます。仕事をいったん辞めてまでの勉強といわれるととてもハードルが高くなります。働きながらスキルを身につけたいと考える看護師に特におすすめしたいシステムです。
特に以下で紹介するe-ラーニングは2018年以降からはパソコンだけでなくタブレット端末での学習も可能となっているため、パソコンを持っていないからと受講をあきらめていた方でも受講に前向きになれるのではないでしょうか。
また、働いていない看護師であっても例えば子育てや家族の介護に忙しく学校に通っている暇はないがひと段落した時のために訪問看護についての知識を身に着けておきたいという方にとっても、自宅で学べるということは、大きなメリットとなるのではないでしょうか。
1-3 新しい分野である訪問看護が体系的に整理されている
訪問看護は最近になって注目を浴び始めているもので、学校の教育課程にも取り入れられ始めた、まだ間もない領域です。そのため、体系的に整理された状態のもので学ぶことが理解の助けになります。
訪問看護という分野の歴史的背景を紐解いていくと、そもそも訪問看護は1997年に看護教育として導入されました。そして、訪問看護という分野の学習を看護学生のうちから本格化されてきたのは2005年以降とされています。
つまり、まだまだ訪問看護という分野のカリキュラムは十分に成熟しておらず、今一度体系的に勉強することをおすすめします。
訪問看護は現在では新卒訪問看護師をも推奨しているものの30歳代後半から40歳代が多いとしているため、訪問看護師の中には学生時代に訪問看護についての学びの機会がないまま訪問看護に従事している方もいるかもしれません。そういった方が再度学習をして学びを深められる場としてもe-ラーニングは活用できるものと考えています。
2 じっくり勉強したい方は訪問看護財団のe-ラーニング
e-ラーニングはさまざまな企業などが出していますが、ここでは2つのe-ラーニングをご紹介します。まず、じっくりと訪問看護の勉強をしたいと考えている方におすすめしたいのが訪問看護財団のe-ラーニングです。
2-1 最後まで学び終えるのに30時間前後を要する
訪問看護財団が提供しているe-ラーニングは全項目再生するのに20時間ほどかかります。参考映像の視聴やテストを含めると30時間前後の学習時間となります。そのため、じっくりと学習していきたいと考えている方に活用してほしいe-ラーニングです。
また、訪問看護財団という看護の世界では確固たる地位を確保しているところが大本でもあるため、学習した内容をすぐに訪問看護の世界で生かせる、どこで学習してきたかということを職場で伝えた時に信頼があるというところもこのe-ラーニングを使うことの特約とも言えるかもしれません。
2-2 訪問看護の基礎を学ぶことができるカリキュラム
訪問看護財団のe-ラーニングのカリキュラムは以下のような構成で、訪問看護の基礎が学べる内容となっています。
項目 | 内容 | |
訪問看護概論 | ・訪問看護の役割 ・介護保険など保健医療福祉制度 ・訪問看護ステーション開設、運営の基礎 ・訪問看護の倫理など | |
在宅ケアシステム論 | ・地域包括ケアシステム ・多職種連携 ・ケアマネジメント ・在宅移行支援など | |
リスクマネジメント論 | ・医療安全 ・労働災害予防 ・感染管理 ・災害対応など | |
訪問看護対象論 | ・訪問看護の対象(療養者、家族、地域) | |
訪問看護展開論 | ・訪問看護過程 ・訪問看護の実際・記録など | |
訪問看護技術論 | 訪問看護展開のための知識・技術 | ・療養生活の支援 ・フィジカルアセスメント ・リハビリテーション看護 ・服薬管理など |
医療処置別の知識・技術 | ・経管栄養法 ・中心静脈栄養法 ・スキンケアと褥瘡ケア ・ストーマケア ・腹膜透析 ・在宅人工呼吸療法など | |
対象別の知識・技術 | ・急変時 ・がん ・認知症 ・精神 ・小児 ・難病 ・エンドオブライフケア |
(引用:日本訪問看護財団_訪問看護eラーニングって? )
訪問看護を全く経験したことがない方でもわかりやすいよう、図表や写真などを使用した内容になっています。項目の各省の最後に確認テストがあり、70%以上の正解で合格となります。
2-3 16,000円前後で6か月間視聴できる
費用は個人申し込みの場合は16,000円で、もし当該e-ラーニングを活用する都道府県看護協会経由の申し込みの場合は14,000円です。
受講期間は5か月間です。その後1か月間は閲覧をすることは可能ですので、復習などに活用することができます。テストに合格してその章を修了しても閲覧ができる期間内は繰り返し視聴が可能です。また、PDFとして掲載している資料はダウンロード後印刷などをすることもできます。
全課程の学習を終え受講可能期間である5か月以内に全過程のテストまで修了することができれば「訪問看護eラーニング修了証書」が発行されます。訪問看護財団のe-ラーニングは「訪問看護人材養成基礎カリキュラム」に準拠して作られているため、修了することでしっかりと訪問看護の教育を受けてきたということの証明へとつながります。(参照:日本訪問看護財団 訪問看護人材養成基礎カリキュラム)
3 短時間でつかみたい人は学研のe-ラーニング
もう1つ今回ご紹介するのが学研のe-ラーニングです。短時間で、そして安い費用で受講をしたいと考える方におすすめしたいe-ラーニングです。
3-1 3つのコースに別れていて、1コースあたり5時間前後で学ぶことができる
学研の提供するe-ラーニングは3つのコースに分かれていて、それぞれ5時間前後で学ぶことができます。
1つ目は管理者コースで、これは訪問看護ステーション管理職の方、これから管理職として活躍される方におすすめのコースであり、訪問看護ステーションを運営していくうえで必須の知識を学習できる講習内容になっています。
2つ目はスタートアップコースで、初めて訪問看護に携わる方におすすめのコースとなっており、訪問看護師として知っておかなければならない基本的な知識を学習できます。
3つ目は在宅看護実践コースで初めて訪問看護に携わる方から現場の第一線で活躍している方などさまざまな方を対象としているコースで在宅看護に必要な看護技術を講義と動画で学習できます。
上述した看護財団のe-ラーニングと異なり立場ごとにコースを組んで学習ができることが魅力です。例えば、管理職の方などにおいては訪問看護のことはわかるけれど手続きや管理者としての仕事についてはわからないという方もいらっしゃるかもしれません。そういった知識を身につけることができるところが魅力の1つとなっています。
3-2 それぞれのコースのカリキュラム紹介
学研の提供するe-ラーニングは上述した通り対象者が明確で、かつ、簡潔にまとまったカリキュラムであるため、効率的に学ぶことができます。
前述した訪問看護財団のe-ラーニングのように修了しても修了証などの発行はありません。テストや資料などは印刷して活用することが可能です。
3-2-1 管理者コースはマネジメント業務に特化したカリキュラム
管理者コースのカリキュラムは全13テーマに分かれており、1テーマ約15分~45分ほどの内容で、各テーマ終了ごとに5問の確認テストがあります。
No. | 管理者コース カリキュラム |
1 | 訪問看護ステーションの管理業務 ①訪問看護ステーションにおける管理者の役割 |
2 | 訪問看護ステーションの管理業務 ②訪問看護ステーションの経営管理の基本と考え方 |
3 | 訪問看護計画書および訪問看護報告書の具体的な作成ポイント |
4 | 訪問看護ステーションにおける介護保険・医療保険の算定(加算の取り方) |
5 | 退院調整、および退院支援システムの構築と実践 |
6 | 訪問看護ステーションにおけるリスクマネジメント |
7 | 訪問看護ステーションにおける労務管理(メンタルヘルスを含む) |
8 | 訪問看護ステーションにおける人材管理と人材確保 |
9 | 訪問看護ステーションにおける人材教育 ①教育プログラムの構築 |
10 | 訪問看護ステーションにおける人材教育 ② OJT とoff-JT |
11 | 訪問看護ステーションにおける統計データの取り方と取り扱い |
12 | 訪問看護ステーションにおけるコロナ禍の感染対策と管理者の役割 |
13 | 訪問看護における利用者・家族からの暴力・ハラスメントへの対策 |
3-2-2 スタートアップコースは保険の知識から始まって利用者さんや地域との関わりを学ぶカリキュラム
スタートアップコースのカリキュラムは全14テーマに分かれており、1テーマ約15分から30分ほどで、各テーマ終了ごとに5問の確認テストがあります。
No. | スタートアップコース カリキュラム |
1 | 訪問看護の保険と回数制限 |
2 | 訪問看護の書類・報酬の基礎知識 |
3 | 訪問看護するうえでの注意点 |
4 | 患者がりようできる制度 |
5 | 多職種協働と各職種の役割 |
6 | 住宅改修 |
7 | 後見人 |
8 | 報酬の算定と加算 |
9 | 居宅以外への訪問・導入の流れ |
10 | 在宅がん医療総合診療科 |
11 | 配慮が必要な方への対応 |
12 | 地域資源 |
13 | 認知症関連 |
14 | 訪問看護でのインシデント、アクシデント |
15 | 死亡後に必要な手続き |
3-2-3 在宅看護実践コースは在宅の現場での看護を学ぶカリキュラム
管理者コースのカリキュラムは全13テーマに分かれており、1テーマ約10分から30分ほどで、各テーマ終了ごとに5問の確認テストがあります。
No. | テーマ |
1 | バイタルサイン |
2 | 活動と休息 |
3 | 感染対策 |
4 | 清潔の介助 |
5 | 食事介助 |
6 | 排泄 |
7 | 経管栄養 |
8 | 与薬 |
9 | 呼吸ケア |
10 | 吸引 |
11 | 創傷管理 |
12 | リハビリテーション |
13 | 死後のケア |
3-3 費用は月9,000円で3月31日まで視聴可能
残念ながら、学研のe-ラーニングは基本的に施設単位での申し込みのみとしており、個人の申し込みに関しては受け付けていません。施設単位で受講の場合、税別で月9,000円支払えば3アカウント配賦され、配信期間中の視聴が可能です。
また、施設単位で申し込みをしつつ個人でも学習したいという場合には月に税別で25,000円支払うことで別途50個のIDを発行してもらうことができ、個人での学習を行うことができるようになります。
配信期間は4月~翌年3月31日までで、購入した時点から3月31日までとなります。
学研のe-ラーニングはパソコンだけでなくスマートフォンやタブレット端末でも使用することができるため家にいなくても通勤や休憩時間などを活用して学習を進めていくことができます。
4 まとめ:訪問看護の世界を知るにはe-ラーニングがおすすめ!
インターネットの環境を活用することで家に居ながらにして学習を深めることができるe-ラーニング。
訪問看護の世界に興味がある、あるいは訪問看護師をしているがわからないことがあって悩んでいるという場合にはぜひこのe-ラーニングを活用して学習を深めてみてはいかがでしょうか。
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