申し送りの苦手意識を劇的に改善するために実践すべきこと総まとめ!
憂鬱な申し送りの時間、これを劇的に改善したくて申し送りについて勉強したこと全部をこの記事にまとめます。
シーンとした雰囲気、先輩からの突っ込みなどなど、いつも憂鬱だったので、このままじゃ嫌だと思い「申し送り」そのものについて勉強し、実践しました。
その結果、申し送り時間を短縮し、先輩からの突っ込みも劇的に減少し、逆に教えて欲しいなど声をかけられるようになるなど、気づいたら苦手意識が吹っ飛んでいました!
そこで、自分と同じように申し送りが苦手だという看護師が1人でも減ったら良いなと思いこの記事にまとめます。
「申し送り」という言葉自体は、看護分野特有の用語というわけではありません。一般的には「進行中の仕事を前任の方から後任の方へ引き継ぐ」という意味で使用されています。看護師の行う「申し送り」も前のシフトに勤務していた看護師から次のシフトに勤務する看護師へ仕事(患者さんのケアなど)を引き継ぐという点は同じといえるでしょう。
看護師の「申し送り」は医師からの治療や処置に関する指示、患者さんの状態などをもれなく次の担当看護師に伝えることであり、継続的な看護を行うために必要な過程というわけです。
必要な業務であるからこそ、前向きに申し送りができる看護師が増えれば幸いです。
目次
1 先輩看護師に突っ込まれにくくなるためにまず抑えるべき申し送り時の話し方のポイント
申し送りが苦手になる大きな要因として、先輩看護師に怒られて苦手になるケースがとても多いです。先輩看護師に限らずですが、まずは相手に信頼される話し方をしっかりと押さえておきましょう。そして、質問に対して答えが直ぐには見つからないという場合は、相手を待たさずに「後ほど直ぐに報告します」と答えると良いでしょう。
1-1 信頼を得る申し送りの話し方3つのポイント
信頼とは、『信じて頼ること』。信頼されば先輩看護師に怒られることも激減するでしょう。信頼される話し方には『話すスピード』『声の大きさ・抑揚』『ミラーリング効果』という3つのポイントがあります。それぞれのポイントごとに良い例、悪い例を見ていきましょう。
3つのポイント | 良い例 | 悪い例 |
話すスピード | ・相手の話すスピードに合わせる | ・常に自分のペースで話す |
声の大きさ・抑揚 | ・大事なポイントは大きめに はきはきと話す | ・声が小さく、淡々と話す |
ミラーリング効果 | ・動作を合わせる ・姿勢を合わせる ・表情を合わせる | ・動きが固い ・姿勢が悪い ・表情が暗い |
話すスピードとミラーリング効果は主に相手に合わせるということです。早口の人にゆっくりした口調で申し送りとイライラされてしまいますし、ゆっくり話す方に早口で申し送りすると理解してもらえず後から質問攻めにあってしまいます。
相手に合わせると相手が自分と同じ波長を感じ、好印象・肯定感を持ってくれるのです。
1-2 相手が理解しやすい申し送りの話し方
申し送りの構成をいつも一定に決めてしまいましょう。いつも同じ会話の流れであれば相手も自分の申し送りの先を予見して聞けるようになるので、理解しやすくなります。
上述の信頼を得る話し方が相手を理解するという側面だとすると、こちらは自分を理解してもらうという側面です。
ドラマや映画などは先が見えてしまうとつまらなくなりますが、申し送りは、先を見てもらった方が良いのです。
おすすめは、『患者氏名』⇒『疾患名・術式』⇒『時間』⇒『処置内容』⇒『結果・現在の状態』⇒『申し送り事項』という流れです。第3章で紹介する定型文も基本的にこの流れに沿っています。
1-3 申し送り中のわからないことは「後で報告します」
申し送り中に相手から突っ込みが入った場合、うまく答えることができないのであれば「後で報告します」、「すみません、把握できていないので確認してから報告します」など、申し送り後に報告するように相手に伝えましょう。
申し送り中、相手から不明点や疑問点などに対して「つっこみ」が入ることもあります。自分が申し送った内容に突っ込みが入ると頭が真っ白になってしまい、「えっと…あの…」となってしまうこともあるでしょう。中には緊張のあまり思い付きや適当なことを申し送ってしまい、あとから修正しなければならない状況になったことのある方もいるかもしれません。
申し送りは上述の通り、重要な業務の1つです。間違った情報や確実でない内容を申し送らないように注意をしてください。曖昧な回答を続けると、聞き手の態度も悪い方向に向かってしまいます。
2 苦手克服のために用意しておくべき自分なりの申し送り定型文
あらかじめ自分なりに申し送る内容を定型文にしておきましょう。定型文を用意しておけば、あとは患者さんの情報を追加するだけで、しっかりまとまった文章を申し送ることができます。
忙しい業務の中で、申し送りの時間までに大切なことを整理しておかなければなりませが、毎回イチから文章を構成したり、申し送る内容を踏まえた文章を考えていると、申し送り時間までに内容をまとめることが難しくなります。その結果、「やっぱり自分は申し送りが苦手」と、さらに苦手意識を持ってしまうことになります。
ここではどの病棟でも役に立つ5つの状況に関しての定型文を紹介します。
最初のうちはこれから紹介する文章をプリントアウトしてノートに貼っていつでも見れるようにしておくことをおすすめします。慣れてきたら紹介する定型文を参考にして自分なりの定型文を用意しましょう。そして定型文の中で括弧でくくったところをノートにメモしておき、申し送り前にメモした内容を定型文にあてはめて申し送りすることで自信をもって迷いなく申し送ることができるようになります。
また、複数の患者さんの定型文を同じ用紙に記入していると、情報の整理がしづらい場合があります。できれば1人の患者さんにつき1枚のメモやノート1ページを使用すると整理しやすくなります。
2-1 入院された患者さんの申し送り定型文例
2-2 手術後の患者さんの申し送り定型文例
2-3 麻薬使用開始の患者さんの申し送り定型文例
2-4 酸素使用開始の患者さんの申し送り定型文例
2-5 中心静脈栄養(IVH)を挿入した患者さんの申し送り定型文例
3 さらに苦手意識を無くすためにやっておくべき申し送り前の整理
あらかじめ定型文を用意しておくと、安心して申し送りに臨むことができます。では、さらにスムーズで的確な申し送りをする際のポイントを紹介します。
申し送りに少し余裕の出てきた方は、ここから紹介する申し送り前の整理についても意識してみましょう。
3-1 申し送りの定型文から、必要のない情報は削除
申し送りを行う際、あらかじめ用意していた定型文の情報すべてを申し送る必要はありません。特に、情報収集すれば把握・理解できる情報があれば、申し送り時間の短縮のため、情報を削除しておきましょう。
実際にメモの例の中で申し送りが必要ない個所にラインを示しながら説明していきます。
Aさん、90歳、女性
本日10月1日に自宅で転倒し救急搬送される。左大腿骨頸部骨折との診断。10月3日、9時より人工骨頭置換術を実施予定。ベッド上安静で、ギャッジアップ45度までOK。排尿は膀胱留置カテーテル、排便は床上にて便器を使用。食事は刻み食で、オーバーテーブルを利用して摂取。ギャッジアップを行い、セッティングを行えば介助は不要。義歯なし。清潔ケアは、毎日陰部洗浄を実施。明日は手術前日のため、ストレッチャーを利用してシャワー浴予定。痛みに関してはロキソニンの指示あり。10時に内服後は使用せず経過観察できている。左足のしびれ、腫脹あり。聞こえは問題なし。高齢であるが認知機能に問題なし。キーパーソンは長男夫婦。手術の同意書等はすべて記入済。
このメモでは、下線で示した内容は特に申し送る必要はないといえます。個々に申し送りが不要である理由を解説します。
・排尿は膀胱留置カテーテルであること
→膀胱留置カテーテルが挿入されていることは、情報収集等でわかるため。
・排便は床上にて便器を使用
→情報収集をすれば把握できる内容のため。また、「床上安静」であり、車いす移動等が禁止されていることがわかるため。
・食事は刻み食、オーバーテーブルを利用して摂取
→情報収集すればわかる内容のため。
・清潔ケアは、毎日陰部洗浄を実施。明日は手術前日のため、ストレッチャーを利用してシャワー浴予定
→清潔ケアの内容は、情報収集をすれば分かる内容のため。また、該当日に日勤を行う看護師にしか必要でない情報のため。
メモを整理したうえでこれらの内容を以下で示すように定型文にあてはめていきます。
このように、申し送りに必要のない情報は整理するよう心がけましょう。
3-2 夜勤から日勤への申し送りは朝イチの採血データも報告
手術後の患者さんや状態に変化のあった患者さん、抗生剤が変更となった患者さんなどの場合、朝食前に採血を行う指示が出ます。スムーズに結果が出れば、日勤業務が開始となる前までに検査結果が出ることが多いでしょう。
余裕があれば、申し送り前までに検査結果を確認し、「朝イチの採血で確認したかった採血項目の結果」を合わせて申し送りをしてください。術後の感染等で炎症反応を確認するための採血であれば、CRPやWBCの値を確認しておくと、患者さんの状態と合わせて報告することができます。
3-3 状態の不安定な患者さんの申し送りは最新の情報が最重要
急変を起こした患者さんや術後の患者さんなどは、頻回に訪室してバイタルサインを確認したり、状態を確認するでしょう。患者さんのバイタルサインや状態は、時間とともに変化します。そのため、あらかじめ定型文に記入することは避け、申し送りぎりぎりの最新の情報を記入するようにしましょう。
「最後、いつ患者さんのもとへ行くことができるかわからない」となるのであれば、定型文の用紙に「7時:38.0度 7時50分:37.8度」など、時間とともにデータを記入するようにして最新の情報がわかるようにしておくと安心できます。
3-4 頭の中で行う申し送りをする前のリハーサル
申し送りをする前に一度は、頭の中でリハーサルをしておきましょう。
どんなに素晴らしい定型文を用意していたとしても、緊張したり不安があるとスムーズな申し送りをすることはできません。目が泳いでしまい「どこを読んでいるかわからない」という状況になったり、申し送り中に文章が変な個所が気になることもあります。
頭の中でリハーサルをしておき、少しでも落ち着いて申し送りできるようにイメージトレーニングをするようにしましょう。
3-5 読み上げれば申し送れるよう略語を使用せず正式名称を使用
申し送りを行うときは略語を使用することはほとんどありません。そのため、定型文に記載する際、時間短縮のためについ略語で記載してしまいがちですが、高血圧を「HT」と記載しても、実際は「高血圧」と申し送ることになります。
緊張すると正式な名称をド忘れしたり、記載した内容をそのまま略語で読んでしまうこともあるため、略語を記載しているとわかりやすい申し送りができなくなる可能性があります。
特に申し送りに苦手意識や強い緊張を感じている方は、定型文をそのまま読んでもいいように極力略語は使用せず、正式名称で記入しておきましょう。
4 突っ込みは成長のチャンスと捉えて申し送りの苦手意識を克服
申し送りに苦手意識をもっている方の中には「先輩看護師からの突っ込みが怖い」と感じている方も多いのではないでしょうか。しかし先輩からの突っ込みは自分を成長させるチャンスでもあります。
突っ込みを入れられることで「自分の申し送りにはどのような点が不足しているのか」を認識し申し送りの内容を改善することができます。
先輩からの突っ込みはときにはグサリとくることもあるかもしれませんが、突っ込みを受けた内容について検討することで新しい視点を得られる可能性もあります。わからないことや聞きたいことがあれば先輩看護師に質問してみるのもよいでしょう。
ただし中には「単に後輩という立場が自分よりも弱い人を攻撃したい」という方もいます。そのような方に理不尽な突っ込みを受けないようにするには、自信がないように見える態度や小さな声で申し送りを行うのではなく、堂々とした態度でハッキリと話すことが大切です。自信をもって申し送りを行うためにも、今回ご紹介したポイントをしっかりふまえて準備を整えておきましょう。
5 まとめ:申し送りの苦手意識は克服できる!
どのような工夫をすれば、申し送りの苦手意識をなくすことができるか紹介しました。申し送りが苦手だからといってそのままにしておくと、さらに苦手意識が高まる場合があります。また、申し送りは回数を重ねれば上達するわけではありません。自分なりの工夫が必要です。
申し送りが苦手な方は、紹介した基本的なポイントや定型文、申し送り前の整理などを参考に、自分なりの申し送り方法を考えてみてください。この記事が申し送りの苦手意識を克服するきっかけになれば幸いです。
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