【2020年版】看護師の初任給は総額27万円!手取りは22万円!【グラフ図解付き】
現在、看護師を目指して専門学校や大学で学んでいる方、あるいは受験しようとしている方にとって、「看護師の収入」は気になるところですね。
この記事では、日本看護協会が毎年行っている「病院看護実態調査」の2019年度報告(2020年3月発表)から、看護師の初任給、年収、ボーナスなどについてご紹介します。他の職種との比較も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1 看護師の初任給は総額27万円前後、手取り22万円前後
看護師の初任給は、学歴で大きく変わることはなく、基本給は20万~21万円、税込総額で27万円前後です。
高卒/3年課程 | 大学卒 | 大学院卒 | |
平均基本給与額 | 201,263円 | 207,856円 | 211,814円 |
平均税込給与総額 | 264,307円 | 272,018円 | 277,472円 |
なお、税込総額というのは一般的に『額面』といわれるものです。実際に振り込まれる金額はここから約20%が諸税金として差し引かれ、22万円前後になります。
全業種の平均初任給は下記の通りなので、看護師の初任給が大幅に高いことがわかります。
・ 高卒:16万7千円
・高専・短大卒:18万4千円
・ 大卒:21万円
・ 大学院修士卒:23万9千円
(参照:厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況)
1-1 年度別初任給に大きな変化はない
ここ5年間の初任給に大きな変化はありませんが、全体として微増の傾向にあります。これは他業種と同様に、日本経済が長い不況を脱して「ゆるやかな成長期」にあることを反映していると言えるでしょう。
【高卒/3年課程】
高卒/3年課程の初任給は、各年度とも基本給は約20万円で、総額は基本給プラス6万5千円前後です。ここ5年で基本給が2,486円、給与総額が2,294円増加しています。
【大学卒】
大学卒の初任給は、各年度とも基本給は20万5千円前後で、総額は基本給+6万5千円前後です。ここ5年で基本給が1,997円、給与総額が2,230円の増加です。
2 病院規模が大きいほど初任給が高い傾向にある
就職した病院の規模別に初任給を比較すると、規模が大きい病院の方が高い傾向にあります。
【高卒/3年課程】
基本給は、病床数が99以下の病院が平均19万8千円なのに対し、病床数500床以上が平均20万1千円と、約3千円の差があります。
税込給与総額は、病床数が99以下の病院が平均26万円なのに対し、病床数500床以上が平均27万2千円と、約1万2千円の差があります。
【大学卒】
基本給は、病床数が99以下の病院が平均20万4千円なのに対し、病床数500床以上が平均21万5千円と、約1万1千円の差があります。
税込給与総額は、病床数が99以下の病院が平均26万9千円なのに対し、病床数500床以上が平均28万円と、約1万1千円の差があります。
【大学院卒】
基本給は、病床数が99以下の病院が平均21万2千円なのに対し、病床数500床以上が平均22万3千円と、約1万1千円の差があります。
税込給与総額は、病床数が99以下の病院が平均27万4千円なのに対し、病床数500床以上が平均29万円と、約1万6千円の差があります。
3 設置主体別にみると私立学校や赤十字が高い
初任給を病院の設置主体別にみると、社会保険関係団体、日本赤十字社、私立学校の附属病院が高い傾向にあります。
最高と最低の差は、【高卒/3年課程】で約3万2千円、【大卒】で約3万4千円、【大学院卒】で約4万円になっています。
どの学歴でも最低額は「厚生連」(厚生農業協同組合連合会)の病院です。厚生連は、農山村地域を中心に105の病院と60の診療所を持っています。看護師の給与が比較的低いのは、都会と地方の給与格差が影響していると考えられます。
【高卒/3年課程】
基本給の上位は、1位と2位が社会保険関係団体と日本赤十字社で21万6千円、3位が私立学校で20万7千円となっています。
税込総額の上位は、1位と2位が私立学校と社会保険関係団体の28万円、3位が日本赤十字社の27万4千円です。
【大学卒】
基本給の上位は、1位が社会保険関係団体の22万5千円、2位が日本赤十字社の22万2千円、3位が公立の21万5千円となっています。私立学校は21万4千円で4位です。
税込総額の上位は、1位が社会保険関係団体の28万9千円、2位が私立学校の28万8千円、3位が日本赤十字社の28万2千円です。
【大学院卒】
基本給の上位は、1位が社会保険関係団体の23万4千円、2位が日本赤十字社の22万6千円、3位が会社付属の22万3千円となっています。
税込総額の上位は、1位が社会保険関係団体の30万2千円、2位が私立学校の29万6千円、3位が日本赤十字社の28万6千円です。
「その他の公的医療機関」が大幅に低くなっていますが、回答した病院数が2と少なく(大学院卒では0)あまり参考になりません。
4 初任給の都道府県ランキング
初任給を都道府県別に見ていくと、どの学歴においても、関東、関西、東海地方が高く、九州、四国、東北、沖縄地方が低い傾向にあります。
特に、東京、大阪、愛知などの都市圏が高くなっています。九州の各県が低いのも目につきます。
もちろん、給与格差がそのまま「生活の質」の格差に結びつくわけではないので、ゆとりのある居住空間や美しい自然環境などに価値観がある人は、「田舎暮らしと看護師の仕事を両立させる」という選択肢もありですね。
4-1 基本給を重視する人の都道府県別ランキング
まずは、基本給のみの都道府県ランキングを見ていきましょう。
【高卒/3年課程】
基本給が最も高いのは埼玉県の21万2千円で、最も低い宮崎県の18万5千円と2万7千円の差があります。
ベスト5の内の3つを埼玉、神奈川、東京の関東圏が占め、ワースト5の4つを鹿児島、長崎、佐賀、宮崎の九州が占めています。
【大学卒】
基本給が最も高いのは愛知県の21万7千円で、最も低い長崎県の19万4千円と2万3千円の差があります。
ベスト5の内の3つを埼玉、神奈川、千葉の関東圏が占め、東京都は7位です。ワースト5はすべて福岡を除く九州圏が占めています。(福岡県はワースト11位)
【大学院卒】
基本給が最も高いのは愛知県の22万3千円で、最も低い佐賀県の19万6千円と2万7千円の差があります。
ベスト5の内の3つを埼玉、千葉、神奈川、関東圏が占め、ワースト5の4つを熊本、長崎、宮崎、佐賀の九州圏が占めています。
4-2 給与総額を重視する人の都道府県別ランキング
次に、夜勤手当等の諸手当を含む給与総額の都道府県ランキングを見ていきましょう。
都道府県で最大で6万円ほど差があり、年収では70万円ほどの差になるので、給与の高い都府県に移住して就職するのも、ありかも知れません。ただし、賃金水準の高い地方は、住居費その他の物価も高いので、見かけほど差は大きくありません。
【高卒/3年課程】
税込給与総額が最も高いのは東京都の28万8千円で、最も低い宮崎県の23万6千円と5万2千円の差があります。
ベスト3は東京、千葉、神奈川の関東圏で、大阪府が4位、愛知県が5位に入っています。ワースト5の4つを鹿児島、長崎、佐賀、宮崎の九州が占めています。
【大学卒】
税込給与総額が最も高いのは千葉県の29万6千円で、最も低い鹿児島県の24万4千円と5万2千円の差があります。
ベスト3は千葉、東京、神奈川の関東圏で、4位に静岡県、5位に愛知県が入っています。ワースト5は、宮崎、愛媛、島根、佐賀、鹿児島です。
【大学院卒】
税込給与総額が最も高いのは千葉県の30万1千円で、最も低い鹿児島県の24万6千円と5万5千円の差があります。
ベスト3は千葉、東京、神奈川の関東圏で、4位に愛知県、5位に大阪府が入っています。ワースト5は、青森、佐賀、宮崎、愛媛、鹿児島です。
5 1年目と2年目以降で異なる手取り額
初任給の総額から税金を引いた手取り額はどれくらいになるのでしょうか。
5-1 給与総額から23%も差し引かれる税金
毎月の給与やボーナスからは、所得税、住民税、社会保険料(厚生年金、健康保険、雇用保険)が合計で約23%天引きされます。
社会保険料の総額は給与のおよそ14%になります。所得税は、所得から給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除などの控除を引いた課税所得に対して5~45%(所得額による)の税率で課せられます。住民税は課税所得の約10%です。
独身者は配偶者控除と扶養控除がないので、同じ収入なら家族持ちより課税所得が多くなり、所得税、住民税は高くなります。税と社会保険料を差し引いた手取り額は、額面給与のおよそ77%ほどになります。
給与総額が27万円だとすると、手取りは20万1千円ほどです。
5-2 1年目は住民税の所得割が控除されず手取り額は額面の82%
住民税は、前年度の所得に対して課せられるので、1年目は住民税は課税されません。
住民税を額面給与の5%とすると、1年目の手取り額は額面の82%ほどになります。額面27万円なら1万3千円ほどが住民税に当たります。
2年目の昇給の目安は4千円ほどなので、住民税が課せられるようになる2年目は、1年目より手取り額が少なくなる可能性があります。
6 他の職種と看護師の初任給比較
総額27万円前後という看護師の初任給は、他の職種と比べてどうなのでしょうか。
2019年の上場企業の初任給の平均と看護師の初任給を比較すると次表のようになります。
平均給与総額(円) | 全職種 | 看護師 | 比較 |
短大卒 | 182,184円 | 264,307円 | +82,123円 |
大学卒 | 212,304円 | 272,018円 | +59,714円 |
大学院卒 | 229,951円 | 277,472円 | +47,521円 |
(参照:労務行政研究所 2019年度 新入社員の初任給調査)
「高卒/専門3年」の看護師は、全職種の「短大卒」と比較しています。
これを見ると看護師の初任給はどの学歴でも、上場企業の平均と比較して、大幅に高いことが分ります。
その理由は、国家資格の取得過程で相当程度の実践的な職業訓練を受けている看護師は、他の職種の新入社員よりは「即戦力」と評価されているからでしょう。
しかし、看護師の年収の上昇率は全職種平均よりも低く、35歳を超える頃から全職種平均の方が高くなります。
7 5年後10年後と年収はどうなる?
ボーナスを含めた年収は勤続年数によって、おおよそ下図のようになります。
「調査」では、勤続10 年で31~32 歳の非管理職の看護師の月額給与は、基本給与額が24万5,459円、税込給与総額が32万773円となっています。(回答病院数2,799)
税込給与総額は、通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当等を含みます。(時間外勤務の手当は除く)夜勤の回数は、月に三交代で夜勤 8 回(二交代で夜勤 4 回)想定しています。
別の調査になりますが、厚生労働省の統計調査によると、8年間勤務した40歳看護師が1ヶ月に154時間勤務すると、月収33万円、ボーナス81万円で、年収は約483万円となっています。(参照:厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査結果 職種別所定内給与額及び年間賞与額)
どちらもほぼ同じ結果になっていますね。これらは、専門卒も大卒も合わせた全国平均値です。
7-1 医療関係の他職種との比較
看護師志望の人の、もう1つの選択肢に入っていそうな職種の給与とボーナスを比較してみましょう。
令和元年の厚生労働省の調査によると、職種別の給与とボーナスの平均額は次のようになっています。医師の給与を別格とすると、この中では看護師の給与とボーナスがもっとも高くなっています。その主な要因は、資格取得の難しさと、看護師には夜勤があることだと考えられます。
【職種別所定内給与額及び年間賞与額】
職種 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 月給 | ボーナス(年間) |
看護師 | 39.5歳 | 8.2年 | 33万4千円 | 81万6千円 |
准看護師 | 50.2歳 | 11.6年 | 28万2千円 | 64万2千円 |
医師 | 40.7歳 | 5.2年 | 91万円 | 77万2千円 |
栄養士 | 35.4歳 | 7.7年 | 24万6千円 | 60万8千円 |
保育士 | 36.7歳 | 7.8年 | 24万5千円 | 70万1千円 |
幼稚園教諭 | 34.8歳 | 8.2年 | 24万4千円 | 73万8千円 |
ケアマネジャー | 49.9歳 | 9.3年 | 27万5千円 | 62万8千円 |
理学療法士・作業療法士 | 33.3歳 | 6.2年 | 28万8千円 | 64万6千円 |
(参照:厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査結果 職種別所定内給与額及び年間賞与額)
※所定内給与額とは、時間外手当を含まない給与です。
8 看護師が給与アップを狙うためには?
医療関係の多職種と比べて比較的初任給が高い看護師ですが、給与アップを狙うためにはどのようなことを意識する必要があるのでしょうか?
今回は3つのポイントをまとめてご紹介します。
8-1 初任給が高いところを選ぶ
給与アップを期待するなら、その土台となる初任給が高いところを選ぶのが得策です。
なぜなら、8割を超える医療機関が、看護師の賃金決定の基準を「年齢、勤続年数」としているからです。
件数 | 割合 | |
年齢、勤続年数などを基準としている(年功給) | 2,769 | 81.80% |
業務の遂行能力のレベル、およびその伸長などを基準としている(能力給) | 1,009 | 29.80% |
職務または役割などを基準としている(職務給・役割給) | 1,316 | 38.90% |
その他 | 97 | 2.90% |
無回答・不明 | 262 | 7.70% |
つまり、給与アップは初任給からの勤続年数による積み重ね、という病院が圧倒的に多いので、その土台となる初任給が高いところを選ぶのが得策です。
初任給は安くても頑張って能力を高めれば、という努力は給与アップにはつながらないことが多いようです。
8-2 役職を上げる
一般企業と同様に、看護師も役職を上げることで給与アップを狙うことができます。看護部長や主任などの管理職が役職にあたります。もちろん、席は限られているわけですから、資格を取得するなど、専門の知識、スキルをもち、経験を積んだほうが役職につきやすくなります。
上述の通り、長く務めること自体が給与アップにつながりやすくなりますが、業務の能力や資格についても意識して仕事に取り組みましょう。
8-3 資格を取得して、手当で給与アップを狙う
看護師には様々な資格があり、対象の資格を取得することで給与手当をもらうことができます。
中には資格を取得するためには、決められた時間分の講習を受ける必要があり、または試験に合格する必要があるものもあります。
通常の業務を行いながら資格を取得することは非常に難しいかと思います。しかし看護師にとって資格を取得することはキャリアップにもつながりますし、前項の「役職を上げる」ためにも資格の取得が必要になることも多く、看護師が給与アップを狙うためには有効な方法となっています。
9 まとめ
看護師の初任給は、専門卒、大卒などの学歴には大きく左右されず、税込総額は27万円前後で手取り額は22万円前後です。しかし、病院のある都道府県によってかなり差があり、最大で5万5千円ほどの差になります。
看護師の初任給は他職種よりも高くなっていますが、勤続年数による年収のアップ率は他業種の平均より低くなっています。その分、資格の取得など給与アップの手段も多く存在している職種ですので、看護師という職種の特色を理解して、普段の業務に臨みましょう。
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