急性期看護の代表的な2つの仕事内容と業務別のスケジュールの全て
急性期看護にチャレンジしたいと思ったことがある看護師は多くいると思います。
「難しそう!」「大変そう」「自分にはまだ早い」
とイメージする方が多いように感じます。
しかし代表的な2つの仕事内容は大まかに分けると2つになります。
・外科系の患者さんの対応
・急変時の対応
これを見ると大変そうに思えますが、実際のスケジュールを見ると今いる病棟勤務と何ら変わりがないと思います。急変のリスクが高いだけで、慢性期でも回復期でも十分起こりうる状況はあります。では何が違うかというと患者さんの入院している目的と必要な看護、そして急変事例の回数が違うだけです。もしあなたが興味があったり、チャレンジしたいという気持ちがあるのでしたら、学びも多いので働いてみることをお勧めします。
目次
1 急性期看護における代表的な2つの仕事内容
急性期看護とは、生命の危機に瀕している患者さんや、重症患者さんあるいは、手術後の患者さんを看護することを指します。そのため、患者さんの状態把握やアセスメント、モニタリングなどのスキルを求められたり、フレキシブルな対応が必要になります。安定している患者さんが少ないため、多重課題に追われる場面も多々あります。特に手術後や特殊検査なども多く外科系の患者さんを見る場面や、ICUを始めCCUやHCUなどの重傷者専用で変化の多い患者さんを看護する場面が最も多いです。
1-1 外科系の患者さんの対応
外科系といっても「一般外科」「消化器外科」「呼吸器外科」「泌尿器外科」など様々な種類がありますが、主になるのは、処置とドレーン類の管理モニタリング、そして術前術後の看護になります。
病気を抱える患者さんは大きな不安とストレスを持っています。そのため外科系の看護師は患者さんの想いに耳を傾ける看護が必要になります。その上で身体的な些細な変化を気付くことが大事になります。そのために日々のバイタル測定や患者さんの訴えに耳を傾けなければいけません。
また術後には処置が必要な場面が多いため、傷の処置方法を理解して理解しなければいけません。時には医師の介助をするのも重要になるため、緊張する場面が多くあります。必要なスキルは清潔不潔動作と、素早く処置を行える手際のよさが求められます。最初は自宅での自己学習や同僚と練習する必要があります。
1-2 急変時の対応
急性期の特徴は、急変が多いことです。出血をしたり、急にショック状態に陥る場面が多くあります。急変時にテキパキと動けることが求められます。特に急性期看護に携わる場合は最低限BLSの講習を受講してスキルを身に着けておくと自信にもなるのでオススメです。
急変時や急な変化にも冷静に対処すると共に、別の患者さんにも気遣えるような切り替えも必要な能力になります。急性期看護においては臨機応変に看護を提供するという姿勢が最も重要です。併せて入退院も多い部署でもあるので、患者さんの特徴やリスクを瞬時にアセスメントする能力も求められます。
2 急性期看護師の1日のスケジュール
急性期看護では、多くの業務に携わります。日勤帯はOPE出しや検査だし、患者さんの清潔ケアや処置などが必要になります。夜勤では食事の配膳下膳に始まり、体位交換やバイタル測定、中でもナースコールも頻回なので仮眠をとるのも難しいです。
2-1 日勤帯はOPE出しや検査出し、処置など満載
日勤帯は朝の情報収集に始まり、様々な業務を行います。受け持つ患者さんは7~10人程度のことが多いです。8:30~17:30の8時間勤務の日勤業務を見ていきましょう。
時間 | 業務内容 |
7:30 | 受け持ち患者さんの情報収集。夜勤中の様子や、前日のバイタル値、指示の変更や本日する予定の処置や検査、手術患者を受け持てば心理的側面も掲示記録から情報収集を行う。(勤務開始1時間前に実施する人が多い) |
8:30 | 朝礼、夜勤者からの申し送り |
9:00 | 患者さんへの挨拶と点滴などの準備や更新 |
10:00 | 検査出しやOPE出し |
11:00 | 清拭や陰部洗浄などの清潔ケア |
12:00 | 食前薬、血糖測定、配膳、食事介助、口腔ケア |
13:00 | 交代で昼休憩 |
14:00 | カンファレンスやMTG |
14:30 | 創部の処置や、尿量やドレーンなどの計測 |
15:30 | OPEお迎え、点滴投与や消毒など |
16:30 | 夜勤者への申し送り |
17:00 | 看護記録や必要度の記載 |
17:30 | 必要な業務を終えたか確認後、何もなければ業務終了 |
2-2 夜勤はナースコール対応が多い
夜勤は少人数での対応になるため、受け持ちが9~14名になります。そのため情報収集やスケジューリングが大事になります。特に下記スケジュールに対応しながらナースコールの対応も多く必要になります。2交代制で16:30~9:00の16時間の夜勤業務を見ていきましょう。
15:30 | 受け持ち患者の情報収集。患者さんの基礎疾患から日勤帯に行われた処置や注意点などを頭に叩き込む。併せて夜間急変時の指示も必ず確認をする。 |
16:30 | 日勤者からの申し送り |
17:00 | 患者さんへの挨拶と点滴などの準備や更新 |
18:00 | 食前薬、血糖測定、配膳、食事介助、口腔ケア |
19:00 | バイタル測定や寝る前の必要な処置の実施。検査や手術があれば説明したり傾聴する |
20:30 | 眠前薬の投与、交代で夕食休憩 |
21:30 | 消灯、体位交換 |
22:00 | 救急からの入院患者の受け入れや、長くなったOPE後患者さんの受け入れ |
24:00 | 体位交換、点滴の更新、尿量やドレーンの計測と破棄 |
1:00 | 記録や片付け、朝の点滴準備 |
2:00 | 交代で仮眠 |
4:00 | 体位交換、経管栄養投与 |
5:00 | バイタル測定、点滴の更新 |
6:00 | 点眼やモーニングケア、記録 |
7:00 | 食前薬、血糖測定、配膳、食事介助、口腔ケア |
8:30 | 日勤者への引継ぎ |
9:00 | 必要な業務を終えたか確認後、何もなければ業務終了 |
3 看護師のキャリアアップのために知りたい、急性期・慢性期・回復期の看護の違い
看護師が働いている際に悩んでしまうキャリアアップですが、大きく分けると3つの分類に分かれます。病院によって違いはありますが、大まかな分類になります。どのような目的をもって働きたいかで進む道がわかれるでしょう。
急性期 | 慢性期 | 回復期 | |
主な目的 | 生命危機の脱出、病気の治癒、根本の治療 | 長期的な治療途中であり、再発や社会生活や在宅復帰への戻り | 治療により大きな危機を乗り越え、機能の回復やリハビリ期 |
看護 | 手術後の管理や、検査後のアセスメント、治療支援 | 治癒後の教育指導、社会復帰支援、内服管理 | 急性期に戻らないようなアセスメントと管理、リハビリのサポート |
主な疾患 | 悪性新生物、脳血管障害、交通外傷、事故、災害、循環器疾患 | 糖尿病、高血圧、脳卒中後後遺症、透析 | 寝たきりやADL低下患者、手術後安定期の患者 |
求められるスキル | ・アセスメント能力 ・急変時の対応 | ・精神サポート ・長期目標の設定能力 | ・傾聴や寄り添う姿勢 ・他職種連携 |
向いている看護師 | ・変化を楽しめる | ・患者さんとじっくり関わりたい、根気がある | ・患者さんに寄り添いたい |
3-1 急性期看護
急性期看護では「外科系患者さんの手術や治療後」「状態が日々変化する患者さん」への看護が主になります。そのため目的は生命危機の脱出や、病気の治療や根本的な治療になります。看護師としては術前後やアセスメント、治療への支援や創処置が必要となります。急性期看護では変化に気付いたり、些細なことも報連相できるアセスメント能力、急変時の対応が求められます。変化を楽しめる看護師が最も向いていると言えるでしょう。
3-2 慢性期看護
慢性期看護では、病状が安定している「患者さんの再発防止」「予防や体力向上」への看護が主になります。そのため目的は治療後の教育指導、社会復帰支援や内服管理になります。看護師としては長期治療でストレスを抱えている患者さんへの精神的サポートや、長期的な視野を持って看護することが求められます。関わる期間が長い分じっくり関わりたい、根気がある看護師が向いています。
3-3 回復期看護
回復期看護では「急性期を脱してはいるので、合併症やリスク除去」「不安の軽減」をする看護が主になります。そのため目的は急性期に戻らないようにアセスメントし、管理することや、機能回復に向けたリハビリや生活支援になります。看護師としては傾聴や寄り添う姿勢は勿論のこと、他職種と連携して情報の集約をすることが求められます。患者さんと共に色々計画を立案したり、寄り添いたいと思う看護師が向いています。
4 急性期看護に携わる前に知っておきたいこと
急性期看護をキャリアに考えたときに気になることは主に給与面とキャリアアップになります。看護師として働く上で重要になりますので紹介します。
4-1 給与は慢性期や回復期とも変わらない
看護師の給与は労働時間に寄与することが多いので急性期だから、慢性期だからで給与が変わることはありません。もし給与を重視するのであれば夜勤回数を多い病棟に行くことを薦めます。看護師の仕事はそれぞれの病棟で大変さも異なるため、部署での手当などもありません。
4-2 急性期からのキャリアアップはICUか慢性期
急性期病棟で働いた看護師のキャリアアップは大きく分けて2つです。急性期看護を極めたくてICU看護の道に進むか、その経験を経て次のキャリアとして慢性期看護に携わります。急性期看護を経験すると、治癒後の状態やその後が気になるため、慢性期看護に進むことが継続看護に繋がるためです。急性期看護を経験した著者が思うに、一度経験すれば様々な症例に対応はできるため、キャリアアップは大きく広がります。
4 まとめ
急性期看護が大変そうと思いがちですが、主な仕事内容は2つになります。
・外科系の患者さんの対応
・急変時の対応
実は慢性期でも回復期でも少なからず、急変が生じたり、対応することがあるように感じます。1日のスケジュールを見ても、OPE出しや、検査出しや処置が多いだけでその他の業務はあまり違いはありません。それぞれの違いからも目的が違うだけで、看護の基本は変わりませんので、急性期看護を行いたいと思っていれば是非チャレンジすることをオススメします。
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