ケアが多く多忙な日勤、体力的に辛い夜勤のシンプルな解決方法
看護師として働いていると避けられないのが交代勤務です。日勤・夜勤、二交代制・三交代制などのさまざまな勤務体制があります。
三交代制は、1日を「日勤・準夜勤・深夜勤」という3つの区分に分けてシフトを組む勤務形態を指します。一般的な勤務時間帯の例としては、日勤が8:00~16:45、準夜勤が16:00~24:45、深夜勤が24:00~8:45のように時間の割り振りをしている病院が多いでしょう。それぞれの勤務時間帯で途中に45分ほどの休憩を取りながら、実働が8時間となるようにしています。
他方、二交代制は日勤と夜勤という2つの区分に分けてシフトを組む勤務形態を指します。一般的な勤務時間帯の例は以下のように大きく2つあります。
①日勤が8:00~20:30、夜勤が20:00~8:30のように12時間ずつで交代する場合
②日勤は8:00~17:00、夜勤は16:00~9:00のように日勤を8時間、夜勤を16時間とする場合
夜勤を経験した看護師なら誰もが、夜勤が体力的にきついことを知っています。日勤もケアが多く、多忙できつい仕事です。
日勤も夜勤もきついと思いながら仕事を続けてもつまらない。そう思って、これらの日勤や夜勤の特につらい部分をシンプルに解決する方法をこの記事では書きました。この記事を読んだ方が、日勤も夜勤も少しでもきついと思うことが減れば幸いです。
目次
1 日勤の特に辛いと感じる多忙さを解決する3つの方法
看護師に聞くと主に日勤で辛いと感じる時は以下の通りです。
・日勤の看護師の人数が少なく、1人当たりの処置やケア、手術などが多い時
・日勤後に会議やミーティングの時間が設定されている時
これらの辛いと感じる時の解決方法を紹介します。
1-1 1人当たりの日勤業務が多忙すぎるときには病棟・チーム全体で調整する
1人当たりの日勤帯の業務が多すぎて、それを当日勤務の看護師で仕事を分担しても、日勤帯の時間内に記録時間を含めて終わらないと分かれば、事前に病棟やチーム全体で仕事を調整することが大切です。
特にその時には、実際の個々の業務内容がより把握できる、リーダーの役割が大切になります。
多くの病院では、日中に検査や手術が行われ、病棟看護などにおいても、日中に行われるケアが夜勤に比べて圧倒的に多いです。それを、日勤の看護師の人数で割り当てて仕事をしていきます。
しかし、日勤で行う業務が多く、それをこなす看護師に余裕がない状況でも、急な入院や検査、手術、患者さんの急変が起これば、その対応もしなければなりません。その上、多忙な業務を終えたら看護記録や看護計画の立案など、記録作業が山のようにあるわけです。その日行った看護業務の記録を終えた時には、すでに夜になっていることも十分あります。
日勤業務の多忙さは、休憩が十分に取れず、残業時間増に繋がり、それが続くと疲弊してしまいます。1人で考えて解決できずに我慢するのではなく、病棟・チーム全体で変えていこうと声を上げ、協力し合得る環境を作っていくよう努力しましょう。
1-1-1 病棟・チーム全体で調整する際にはリーダー看護師の動きがカギとなる
日本看護協会が公表するガイドラインによると、「実質的に日々の業務マネジメントを行うリーダー看護師の働きが、業務効率化のカギ」となり、かつ「終業時刻30分前に業務進捗状況を把握して必要な調整を行う」ことがリーダー看護師には期待されています。
また、「忙しいときこそ休む」ことが大切で、休むときにもそれぞれの看護師の休む状況が公平になるように配慮するよう指摘しています。(参照:日本看護協会 看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン)
もちろん、業務調整をすべてリーダー任せにするのではありません。チームメンバーの看護師も、自分に割り当てられた業務量が自分の能力からみて適切な分量なものか、またその仕事が日勤帯で終了できるのかをすぐに判断し、不安があれば即リーダーに相談することが必要です。
1-1-2 実際に働く看護師が多忙だという声を参考に周りを巻き込んでいこう
現場で働く看護師の多くが、多忙すぎる働き方に疑問の声を挙げています。
ここでは、実際の看護師の声を一部ですが紹介します。自分と同じ考え、意見だと思う読者も多いのではないでしょうか?(参照:日本看護協会「時間外労働および夜勤・交代制勤務に関する 実態調査」の自由意見欄に記載された看護師の 労働・生活条件に関する訴えと改善要求)
スタッフ不足で仕事量は増えるばかり。女性で子どもをもつ身であれば仕事を終えてからも 休むひまなく就寝まで動き続けることを考慮して欲しいと思うのはわがままでしょうか。疲れがとれないまま、もともとスタッフ不足のため自分が欠勤しては他の看護師に迷惑をかけると無理を続けたあげく、退職してしまう悪循環。主婦でもある看護師が、休日疲労回復のためにと寝ていられるわけはありません。新卒から20代の看護師が戦力となりにくい現代、今後も過労死は防げないと思います。
新人看護師が入ると、最近は教育に1年は必要。その新人も定数に入ると他の看護師の負担が重くなる。毎年、そのくり返し。指導者になるとさらに指導の負担がかかる。医師のように研修制度を設け、定数外での指導をとらないと、負担は減らないし、本来の7:1ではないと思う。
上司も辛い境遇にあります。中間管理職を担っている上司の意見も紹介しますので、上司の心情も察しながら、周りを巻き込んでいきましょう。
中間管理職としてのあり方を上司より常に問われています。日曜日に直当直をし、月火水木 金と日勤、つづけて土曜日に日直当直をしたことがあります。日勤では上司が頑張る方なので21時頃帰宅するのはあたりまえです。また上司は話が長いので人の都合なんておかまいなしに話をするので、帰るのが遅くなります。研究のサポートを3つぐらいかかえ、当直もレポートを見たりサポートすることを求められています。息がつけぬ毎日を過ごします。「朝患者の所に行って毎日見ていると変化がつかめる」ということで、朝は7:30~患者回りをしているので、業務時間が7:30~21:00という毎日です。
自分1人では解決できない問題も、チーム全員を巻き込めば解決できることが多くあります。
1-2 残業時間を減らせないか、日勤帯の中で業務を行えるよう病棟全体で考える
時間外勤務やサービス残業が少しでも減るように、業務の線引きを行い、残業が蓄積しないような努力が必要です。
2008年に日本看護協会が行った「時間外労働および夜勤・交代制勤務に関する実態調査」のアンケート調査の自由記載欄を分析した文献によれば、そこに記載されたキーワードでもっとも多かったのが、「時間外の常態化」や「サービス残業」でした。(参照:日本看護協会「時間外労働および夜勤・交代制勤務に関する 実態調査」の自由意見欄に記載された看護師の 労働・生活条件に関する訴えと改善要求)
これは、アンケートに答えた20歳〜50歳代のどの年代でも同じ結果です。それほどに、時間外勤務やサービス残業は大きな問題です。
もし、勤める病院でも、通常業務の残業だけでなく、会議やミーティング、カンファレンスなどでの残業が多く、それが常態化しているのなら、病棟や病院全体の問題として取り上げられるよう努力しましょう。
1-2-1 実際に働く看護師の時間外勤務についての声を参考に周りを巻き込んでいこう
時間外勤務に対する看護師の意見は非常に多く、今回はその一部を紹介します。
時間外勤務を減らす取り組みを行い、対策を考え行うことはとても良いことだと思う。仕事にとらわれている時間が、自分や家族に向けられることで、心に余裕も得られると思う。病棟で自分の勤務のタイムスケジュールを記入し、なぜ時間内に終了できなかったのかというアンケートを定期的に行っている。自分の行動を振り返るのに大いに役立つし、みんなの意識づけにもつながり、良いことだと思う。病棟により残業の多いところ、いつも時間内に帰れるところの差は大きい。ストレスもすごい差だと思う。
サービス残業は当たり前と言われていますが、勤務時間を過ぎて残業をしていたら、患者様の対応や、雑務をしないといけなくなります。そして、だんだんと時間がたち、残業が長引くことが多いです。以前働いていた病院は、日勤・深夜の日でも、人によっては後輩の指導で、家に帰れずそのまま深夜に入る人もいました。業務改善などの対応も、大きな意味はあると思います。まずは、看護職員自身が今までの風習を変えていかないと、何も変わらないような気がします。勤務時間を過ぎたら、途中の業務は責任を持ってするが、勤務時間終 了後に出た指示により、新しく始めなければいけない業務は、手をつけないなど、徹底していく必要があります。
とにかく看護師がたりなすぎる。名前だけで育休や病休などのスタッフが多く実際の人数が少ない。だから日勤も、夜勤も時間内に仕事が終わらず、残業になる。看護師という職業は好きであり、ずっとつづけたいと思うが給料も安く、休・祭日手当てもない。もっと処遇を改善すべきだと思う。また看護助手の人数も 足りないため夜間のオムツ交換などは、看護師がすべて一緒に手伝う。看護師はきちんと看護業務を行なうべきで ある。現場の声を聞くシステムや、実態を正確に把握しないと、改善もできないし、過労死もなくならないと思う。
私の病院では平均週に2日、手術日がありますが、手術開始時間はいつも、時間外です。そのため、帰宅時間が深夜になることはたびたびあり、次の日は普通に出勤、疲れがとれない状態で仕事をしている 毎日です。医師不足、看護師不足がこのような状態を招いているような気がします。医師は、外来診察、病棟廻診を終えないと手術に入れず、看護師は病棟の仕事、検査等などを終えてから手術準備に入ります。この状態を改善 してほしいです。
1-3 時間外の会議やミーティングなどは極力減らせないか、日勤帯の中で行えるよう病棟全体で考える
サービス残業になりがちな会議やミーティング、カンファレンスなどへの参加時間は、本来なら労働時間とされるべきです。こういった会議体は日勤帯の中で行えるよう病棟全体で考えるようにしましょう。
看護師が勤める病院の規模が大きいほど、看護部にもさまざまな組織や委員会があり、そのメンバーになり活動することもあります。そのような組織や委員会の会議の多くは、日勤業務が終わってから開かれることが多いです。
そのため、日勤後にその会議に出席すると、日勤業務が時間通りに終わっても、結局帰宅が遅くなってしまうことも多々生じてしまうことになります。
帰宅時間が遅くなると自宅での休息時間が必然的に少なくなり、体や心の疲労を取る間もなく、次の日にまた勤務ということにもなり兼ねません。そうした日々の疲労の積み重ねが、やがては大きなストレスにもなっていきます。
そのため、残業時間帯の会議体がある場合は、日勤帯で行うにはどうしたら良いか、それが難しい場合はできるだけ余分な会議やミーテイングは減らし、可能であればできるだけ短時間で終わるように病棟全体で話し合えるよう努力しましょう。
2 体力的にしんどい夜勤に対する2つの対処法
看護師に聞くと主に夜勤で辛いと感じる時は以下の通りです。
・体力的にしんどい
・活動と休息のバランスが取りづらく、生活リズムが一時的に崩れる
これらの辛いと感じる時の解決方法を紹介します。
2-1 夜勤の間にできるだけ仮眠をとり、少しでも質の良い睡眠を確保する
まずは、夜勤での疲労が大きくならないようにするために、夜勤中に十分な仮眠をとることです。
女性看護師の疲労の自覚症状と勤務の関係についての研究からは、「夜勤中の仮眠を確保できる体制を整えることが疲労を軽減するために重要である」と示唆しています。(参照:産業衛生学雑誌 女性看護師の疲労の自覚症状と勤務の関係)
夜勤でもっとも辛いところは、本来は体や脳を休ませるために睡眠を取るべき時間帯に勤務をしなくてはいけないところです。1回の夜勤をするだけでも体力的に相当ダメージがくることもあります。しかも、日勤のように働く看護師の人数が少なく、限られた人数の中で業務をしなければいけません。
日勤のような検査や手術は基本的には多くありませんが、重症の患者さんの看護に当たったり、薬の投与や点滴ボトルの交換、食事配膳、看護記録などすべきことはたくさんあります。体力の回復を図るためにも質の良い睡眠を確保することが重要です。
もちろん、夜勤の状況によって、十分な仮眠を取ることが難しいときもあるでしょう。しかし、前述の日本看護協会のガイドラインにおいても、夜勤時の仮眠は「夜22時以降におよび勤務に関しては、実労働時間が8時間を超える場合には、連続2時間以上の仮眠を取ることを検討してください」ともあります。
この連続2時間というのは、入眠から「除波睡眠」(深い眠り)を経て「レム睡眠」(浅い眠り)、覚醒にいたる90分の睡眠サイクルを取ることが可能になるため、推奨されている仮眠の時間です。
また、この夜間に2時間ではなく、少しの間だけでも睡眠を取ることが、昼型の生活リズムを維持する上でも重要といわれています。
よって、夜勤のときには原則2時間の連続した仮眠時間を取ること、そしてたとえ2時間連続して仮眠が取れなくとも、細切れでも構わないので睡眠を短時間確保することが疲労を取る大切な要素になります。
2-2 夜勤後になるべく早めに体のリズムを整える
夜勤の後の疲労をなるべく早くに回復させるためには、前述した看護協会のガイドラインでも「なるべく早くに一度眠り、日中は普通に生活をして、夜はいつも通りか少し早めの時間に」眠ることを推奨しています。
本来は睡眠を取るべき時間に勤務をするわけですから、どうしても一時的に生活リズムのバランスが崩れてしまいます。夜勤明けは、たとえ仮眠をとったとしても、夜間に集中力を維持し続けた結果、疲れがどっときたり、逆にやや気持ちがハイテンションになってしまうことってありませんか?
そんなとき、夜勤明けの看護師がコンビニでたくさんの甘いものを買ったり、「ドカ食い」してしまうのもよくある話です。
夜勤明けだからといって、気持ちが解放されて、何か食べたくなったり、遊びに行きたくなる衝動が出てくるのも理解できます。
しかし、まず大切なのは夜勤の疲労を少しでも軽減することです。そのためには、まず自宅に帰り2時間程度の睡眠を取ることが大切です。それにより、生体リズムを整え、いつも通りの生活に早く戻すことができるでしょう。
3 まとめ:日勤・夜勤の特長を整理して辛さを軽減しよう!
日勤・夜勤、それぞれに見られる勤務の辛さやそれを軽減させる方法をご紹介しました。それぞれの勤務ごとに見られる辛さも異なります。もちろん、病院の規模や診療科、看護体制や人員配置など、いろいろな条件によって違いはあります。
しかし、異なる辛さであっても、その辛さに対処せずに放っておくと、いずれ精神的・身体的疲弊につながりかねません。前述した文献からも、「女性看護師の疲労の自覚症状は強い」と指摘しているように、女性看護師はとくに疲労を感じやすいともいえます。
いずれの辛さにおいても、まずはその人が抱える精神的・身体的ストレスをいかに減らせるかがポイントです。今回取り上げた、日勤・夜勤の辛さを軽減する方法を参考に、心や体も元気に看護師としての業務ができるよう、周囲を巻き込み工夫をしてみましょう。
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