トリアージとは?「JTAS法」と「START法」の使い分け方と実践方法

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トリアージとは?「JTAS法」と「START法」の使い分け方と実践方法

災害が多く頻発したり、コロナが蔓延する状況が続いていると思います。

そんな災害の時や、院内で感染者が増えた時に行う「トリアージ」わかりますか?

トリアージとは、大事故や大災害などで多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うために傷病者の治療優先順位を決定することを言います。なんとなく選別はわかると思いますが、実はたった4つの違いを覚えておけば概論はバッチリになります。それは「軽症」「中等症」「重症」「死亡」の4つのカテゴリーに分類することです。

院内トリアージには「JTAS法」、災害時には「START法」が用いられます。基本的にトリアージは医師、看護師、救命士が行いますが、多くの場面で看護師が活躍するケースが多いので、今後の未曽有の事態に備えて勉強しておきましょう!この記事を読み終えた後にはトリアージのイメージがしっかりついていること間違いなしです。

採用情報

1 トリアージとは?

トリアージとは、大事故や大災害などで多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うために傷病者の治療優先順位を決定することを言います。そして優先順位の高い傷病者から順に治療することを指します。

トリアージは、フランス語で「選別」を意味する「trier」に語源を発し、良い物だけを選り抜く、選別するという意味で、フランス繊維商人が羊毛をその品質からいくつかのクラスに区分けするのに用いた言葉と言われています。医学の世界に応用されたのはナポレオン時代です。戦場で多くの傷病者の中から、治療により、再び兵士として戦闘に参加できる軽症者を選別される際に使われました。

1-1 トリアージ実施基準4分類

トリアージは災害発生現場か病院で行われます。まずは災害時に行われるSTART法を説明します。実施する人は「医師」「看護師」「救急救命士」です。傷病者を「軽症」「中等症」「重症」「死亡」の4つのカテゴリーに分類し、その際は統一された方法を用いて、歩行できるか、呼吸をしているか、脈はあるか、意識はあるかといった評価をします。トリアージを受けた傷病者は、トリアージタッグというトリアージの結果が書かれた札をもらうか、右手首に付けられます。(タッグは右手→左手→右足→左足→頚部の順につけられる場所に付けます)このトリアージタッグを元に災害現場では誰がみても優先順位が容易に理解でき、治療をはじめとする次の行動を明確にすることを可能にします。

優先順位

識別色

分類

状態

第一

最優先治療群

生命の危険性が高く、現場で直ちに治療が必要だと判断された疾病者

第二

待機的治療群

基本的にはバイタルが安定しており、治療が多少遅れても生命に危険が及ばないと判断された傷病者

第三

軽症群

軽症で専門的な治療を必要としないと判断された傷病者

第四

死亡群

死亡している、もしくは明らかに生存の可能性がない傷病者

1-1-1 最優先治療の赤:重症

最優先の症例で緊急治療もしくは直ちに病院搬送が望ましい状態です。生命の危機的状態にある症例で、気道閉塞または呼吸困難、重症熱傷、心外傷、大出血または止血困難、解放性胸部外傷、ショックなどが該当します。

1-1-2 待機的治療の黄:中等症

優先度第2位の状態で、赤タッグの対応が終了次第治療にあたる病態です。2~3時間処置を遅らせても悪化しないと考えられる疾患で、熱傷、多発または大骨折・開放骨折、脊髄損傷、意識のある頭部外傷などです。通常なら優先的に治療されてもおかしくない疾患ですが、災害時は赤タッグが優先されます。

1-1-3 軽症の緑:軽症

優先度が低い状態で、軽症で医師以外でも手当てができると考えられる疾患です。小骨折、外傷、小範囲熱傷、(体表面積の10%以内、気道熱傷なし)などで、鎮痛剤や湿布、添え木での固定、消毒などを行います。歩行できる方は、間違いなくここに分類されます。

1-1-4 死亡群の黒:死亡

死亡もしくは回復の見込みがない状態です。死亡診断と同等の判断になりますので、慎重に丁寧に判断することになります。呼吸をしていない、脈が触れないなど生命兆候のない症例です。平時なら時間をかけて心肺蘇生術を行い、救命を目指しますが、災害時は最低限の処置しかしないことになりますが、これが災害時のあり方です。

1-2 トリアージタッグの使用方法

トリアージタッグとは、トリアージの際に用いる識別票のことです。災害現場で救助された傷病者は、「医師」「看護師」「救命士」などのトリアージ実施責任者によりトリアージ区分されます。その区分に基づき医療機関に運ばれ必要な処置、治療を受けることになります。タッグに記載された内容は、適切な治療を受けるための重要な情報であり、簡易カルテとして利用することも可能です。又、受入れ患者の総数や傷病程度別患者数をより的確に把握するこができます。負傷者の右手首にタッグのゴム輪を二重に巻きつけますが、不可能な時は左手首→右足首→左足首→頚部の順になります。尚、タッグ用紙は3枚つづりで、1枚は災害現場用、2枚目は搬送機関用、3枚目本体は収容医療機関用となります。

トリアージタッグ

<引用:一般財団法人「日本救急医療財団」>


2 看護師が抑えるべきトリアージ法

看護師が抑えるべきトリアージの方法は大きく分けて2つあります。院内トリアージと災害時のトリアージです。傷病者の選別を行うのは同様ですが、若干方法が異なります。院内で行う場合は日本版緊急度判定支援システム(JTAS)を用い、災害時トリアージの場合は、START法を用います

2-1 院内トリアージで用いるJTAS法

院内トリアージは、来院した患者さんが診察・治療を受けるまでの間、安全に待てる時間を決定するために行います。基本的に看護師が問診で行い、待合室で待機して頂くか、すぐに診察して頂くかの緊急度判定を行います。日本版緊急度判定支援システム(JTAS)を使い、5段階で判定を行います。

緊急度判定レベル

特徴例

待ち時間

レベル1ー蘇生(Blue)

高度の意識障害、ショック、重度の呼吸障害

観察の継続

レベル2ー緊急(Red)

心原性胸痛、激しい頭痛、、中等度の意識障害

15分毎

レベル3ー準緊急(Yellow)

動くと痛む胸痛、中等度の頭痛、変形のある四肢外傷

30分毎

レベル4ー低緊急(Green)

捻挫、意識障害のない頭部外傷、縫合のいる擦過傷

60分毎

レベル5ー非緊急(White)

風邪症状、軽度の腹痛、擦過傷

120分毎

多くはJTASのアプリを利用してベッドサイドや救急の待合で行う場面がほとんどです。患者さんの症状からカテゴリー分けをし、バイタルサインなどから緊急度を判定します。

2-2 災害時トリアージで用いるSTART法

災害時トリアージではSTART法を用います。Simple Triage and Rapid Treatmentの略で「単純なトリアージと迅速な治療」を意味します。災害なので多くの傷病者がいる場面のため、とにかく素早く行えるのが特徴です。重要なポイントは4つになります。

・歩けるか?

・呼吸は普通か?

・脈は普通にあるか?

・意識はあるか?

2-2-1 歩けるか?

緑タッグの判断は「歩けるか」です。誰かの力を借りないと歩けなければ緑タッグに該当しません。簡単な分類方法は「こっちに歩けますか?」と声をかけて歩ければ緑タッグにしましょう。まず初期段階が歩けるか歩けないかになります。

2-2-2 呼吸は普通か?

ここからは基本緑以外になります。まず呼吸を一人でできるかできないかの判断です。もし呼吸ができていなければ気道確保を行いましょう。それでも呼吸がなければ「黒」になります。呼吸ができていれば回数を数えます。1分間に10~29回以内であれば「黄」それ以下でもそれ以上でも「赤」をつけます。

2-2-3 脈は普通にあるか?

脈がなければ即「赤」になります。普通の判断が難しいですが、1分間に120回以上なら「赤」それより少なければ「黄」になります。

2-2-4 意識はあるか?

呼びかけに反応するか否かで意識の判断は行います。「大丈夫ですか?」の声にうなずいたり、返答をすれば従名反応ありです。何でも反応があれば「黄」何も反応がなければ「赤」になります。


3 院内トリアージは診療報酬300点

院内トリアージ実施料については、院内トリアージ体制を整えている保険医療機関において、夜間、休日又は深夜に受診した患者であって初診のものに対して算定が可能です。当該保険医療機関の院内トリアージ基準に基づいて専任の医師又は救急医療に関する3年以上の経験を有する専任の看護師により患者の来院後速やかに患者の状態を評価し、患者の緊急度区分に応じて診療の優先順位付けを行う院内トリアージが行われ、診療録等にその旨を記載した場 合300点診療報酬が算定できます。


4 まとめ:トリアージは4つの違いをまず理解する!

大事故や大災害の際に用いるトリアージでは、傷病者を「軽症」「中等症」「重症」「死亡」の4つのカテゴリーに分類し、その際は統一された方法を用いて、歩行できるか、呼吸をしているか、脈はあるか、意識はあるかといった評価をします。まずはこの4つの項目を抑えるようにして、傷病者をどのタッグを使用するかを理解しましょう。その上で看護師は院内トリアージで使用するJTAS法と災害時に使用するSMART法を理解すれば、問題ありません。災害が続いていますが、正しい知識を身に着けて助けられる命を守っていきましょう。

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