看護師として知るべき一次救急、二次救急、三次救急の違い
看護師が一度は憧れるのが救急看護師だと思いますが、一次救急、二次救急、三次救急の違いをハッキリ応えられますか?多くの方は難しいと思います。
違いは「対象者」「来院方法」「受け入れ医療機関」「診療、処置内容」の4項目に当てはめると見えてきます。看護師にとっては対象者が異なることでやりたい看護、そして役割が多く変わってきます。
・一次救急:軽症者
・二次救急:入院加療や手術を必要とする患者
・三次救急:重篤者や多発外傷者
夜勤メインで働きたければ一次救急、新卒からチャレンジしたければ二次救急、三次救急は一次救急、二次救急を経験してから働くことをオススメします。是非この記事を読んで自身の働き方やチャレンジしたいことを見つめなおしてください。
目次
1 一次救急、二次救急、三次救急の違い
救急医療において重要な役割を担うものが救急指定病院と言われ、重症度によって3段階の体制がとられています。救急指定病院は都道府県知事が告示し指定する病院で、消防法2条9項による1964年(昭和39年)の「救急病院等を定める省令(昭和39年2月20日厚生省令第8号)」に基づいています。3段階の体制がそれぞれ一次、二次、三次に分けられています。
対象者 | 来院方法 | 受け入れ医療機関 | 診療・処置内容 | |
一次救急 | 軽症者 | 自分自身あるいは家族の付き添いで来院 | ・在宅当番医 ・休日夜間急患センター | 主に、自力で来院する軽症患者への夜間や休日の外来診療 |
二次救急 | 入院治療や手術を必要とする重傷者 | 救急車あるいは家族の付き添いで来院 | ・病院群輪番制病院 ・共同利用型病院 | 地域で発生する救急患者への診療と応急処置を行い、必要に応じて入院治療を行う。自施設で対応可能な範囲において専門治療を行い、困難であれば救命救急医療を担う医療機関に紹介・転送する |
三次救急 | 一次、二次救急では対応が不可能な重篤疾患や多発外傷者 | 救急車あるいはドクターヘリ | ・救命救急センター ・高度救命救急センター | 緊急性・専門性が高い、もしくは複数診療科にわたるなどの、幅広い疾患に対して専門的医療を実施する。その他の医療機関で対応できない重篤な患者の対応。 |
<出典:救急医療体制の現状と今後の課題について(厚生労働省)>
2 一次救急とは?
初期救急とも呼ばれており、入院の必要がなく帰宅可能な軽症患者に対して行う救急医療のことです。患者さんは自分自身、もしくは家族など身近な人に付き添ってもらって来院します。一次救急の診療は都道府県に配置されている休日夜間急患センターで行っているほか、救急指定を受けている地域の開業医や病院が1日ずつ在宅当番となって行っています。急な発熱や、蕁麻疹、腹痛など気になる症状があった場合が対象になります。
2-1 一次救急の看護師の役割
一次救急での看護師の役割は、基本的に通常の外来勤務と同様です。外来で勤務していると、再診の患者さんは、どのような疾患でどのような特徴かというのは把握できますが、初診では診断をすることから始まり、患者さん自身の特徴はつかめていません。
つまり、一次救急での看護師は、一般的な外来と同じような業務をする形になります。ただし、夜間や休日ですから、単に調子が悪いといったことではなく、緊急性を要することも多々あります。痛みが我慢できない、精神的に耐えられないといったことが背景にあって、一次救急を利用するため、外来看護師プラス救急医療に関しての知識や技術も求められます。
2-2 夜勤メインの働き方
一次救急の看護師は、休日夜間救急センターで働くため、夜勤がメインになっております。そのため、休日手当、夜勤手当がプラスされるため、給与相場は平均よりかなり高くなります。しかし昼間の勤務が少ないため、夜勤が好きな方には最も向いている職場になります。
2-3 一次救急は5年目以上で夜勤好きに最も向いている
一次救急は外来勤務に加えて救急医療に関しての知識が求められます。また医師や検査技師などの他職種連携が必要なため、5年目以上でリーダー経験をしているほうがスムーズに仕事に望めます。ほとんどが夜勤業務であるため、夜勤が得意な方、継続看護ではなく、初期治療に興味のある看護師に向いている働き方になります。
3 二次救急とは?
入院治療や手術を必要とする重症患者様に対応する救急医療のことを指します。いくつかの病院が当番日を決めて救急医療を行ないます。
病院群輪番制や、共同利用型病院方式がこれにあたります。病院群輪番制とは、二次救急の指定を受けた複数の病院が当番制で救急患者の受け入れ・診療を行う方法のことを言います。
もう一方の共同利用型病院方式とは、その地域の拠点病院などが施設の一部を開放し、そこに地域の医師が出向いて診療を行っています。通常、入院や手術を必要として救急車で搬送されるのは、この二次救急指定病院で、24時間体制がとられています。
3-1 二次救急の看護師の役割
二次救急での看護師の役割は、救急車での搬送患者のアセスメントの応急処置や、手術が必要な患者さんの準備になります。特に多いのは高齢者の大腿骨頚部骨折や交通外傷、脳幹出血や、急性虫垂炎や腹膜炎、尿管結石や心筋梗塞など早急な治療が必要なものが多くあります。一番は救命に向けた対応が求められ、応急処置や医師の処置の介助、その上でアセスメントが必要になります。
3⁻2 2交代制がメイン
二次救急は地域の救急対応を受け入れるため昼夜問わずの勤務が強いられます。そのため、二交代制で行っている病院がほとんどになります。給与に関しては、夜勤手当や残業も多いため高めに設定はされています。
3₋3 二次救急は新卒からも十分通用する
二次救急は看護師としてのアセスメントや処置の勉強が必要になります。ただ1人で担当することは少なく複数の看護師で担当するため学べる環境があります。そのため、救急を勉強したい方や希望があれば新人からでも学べる職場にはなります。むしろ体力がいる仕事にもなるので、20代のうちに希望があれば経験することを強くオススメします。
4 三次救急とは?
一次、二次救急では対応が不可能な重篤疾患や多発外傷に対する医療を指します。救命救急センターや高度救命救急センターのことを言います。
高度救命救急センターとは、救命救急センターの中でも特に高度な診療機能を有する物として、厚生労働大臣が定める医療機関です。また、三次救急の指定を受けている病院は救急医療の教育機関としての役割もあり、医師や看護師、救急救命士などが日々救急医療を学んでいます。
4-1 三次救急の看護師の役割
三次救急の看護師は、他で対応できなかった重篤患者や、心肺停止状態で運ばれてくる患者が多いため、1分1秒を争う場面が少なくありません。的確な救命処置、初療を施すなど、きわめて迅速な対応を迫られます。
救急患者の発生は時を選んでくれないだけに、スタッフも息つく暇がありません。緊迫しがちな現場でチームワークを重視しながら動くためのリーダーシップやコミュニケーション能力は、救急領域の看護師として必須のものといえるでしょう。治療やアセスメントは勿論ですが、三次救急ではチームをまとめる役割が望まれる場面が多くあります。
4-2 2交代制あるいは3交代制
三次救急の現場では、2交代制が多いですが、3交代制を取り入れている病院も少なくありません。救命センターでは夜勤手当や残業手当の他に、救命センターでの手当やオンコール手当てがあるため、給与はトップクラスになります。併せて基本給も他の病棟よりも高い傾向にあります。
4₋3 一次救急、二次救急経験が望ましい
三次救急は高度な知識や、場所によってはフライトナースやドクターカーへの同乗が必要になります。フライトナースに関しては「救急看護の最高峰のフライトナースの働き方と仕事内容の徹底解説」に書いてある通りキャリアが必要です。そのため三次救急を経験するにおいても救急看護の経験をしているほうがイメージもつきやすく、業務につきやすいです。
5 まとめ:違いはたった4項目
一次救急、二次救急、三次救急それぞれの違いは「対象者」「来院方法」「受け入れ医療機関」「診療、処置内容」の4項目です。看護師にとっては対象者が異なることでやりたい看護、そして役割が多く変わってきます。夜勤メインで働きたければ一次救急、新卒からチャレンジしたければ二次救急、三次救急は一次救急、二次救急を経験してから働くことをオススメします。是非自身に合った働き方を参考にして下さい!