2020.01.30 |
訪問看護師になるためには、一昔前までは「看護師経験10年必要」と言われていました。
しかし、2025年には約6万~27万人の看護師が不足すると言われていることから(※1)、
特に需要が見込まれる訪問看護では、暗黙の“10年”を待たず、新卒看護師を訪問看護師へ育成していこうという傾向があります(そもそも10年の根拠も曖昧ですが)。
新卒看護師の育成に取り組む訪問看護ステーションはまだわずかです。
その理由は様々なので今回は割愛しますが、訪問看護に憧れる若手が増えてきていると実感するこの頃、改めて、訪問看護師になるためにはどんな経験があると良いのか?という点を深堀りしてみたいと思います。
未経験で訪問看護師になった看護師に「訪問看護師になる前にやっててよかった」と思った11の経験を聞いてみました。訪問看護師になる前に経験しておくことで、仕事への不安感が少なかったり、慣れが早かったり、利用者様やご家族様からの依頼にお応えしやすいというメリットがあるそうです。
ケア編
摘便
「便が出ず辛い」またご家族様から「便が数日間出ていないので摘便をお願いしたい」という依頼は比較的多くあります。入社後に身に着けていただくこともできますが、緊急訪問で摘便を依頼されるケースもあるので、経験があるほうが急な依頼にも構えていられるようです。また訪問時に便が出ずに苦しんでいる方に「できない」「わからない」などと悩んでしまうことがなくなります。
褥瘡の処置
在宅では褥瘡のご利用者様も多くいらっしゃいます。認定看護師とまでは言わずとも、褥瘡処置の専門知識や実戦経験が豊富にあれば、それらを生かして活躍できるでしょう。また、ベッドやマットレスの選定などケアマネージャーあるいは福祉用具の担当者との連携でも頼られる機会があります。
食事や栄養に関する知識
誤嚥性肺炎のリスクの高いご利用者様や、胃ろうをつけて退院したものの、なるべく家族と同じ食事を摂りたい、また口から食べられるようになりたいというケースはよくあります。しかし、在宅現場で活躍する言語聴覚士はまだ少ないこともあり、利用者様本人だけでなく、食事について悩むご家族様も多いです。利用者様やご家族様との距離の近い看護師は、食事の相談を受けることもあるため、基礎知識があったり、言語聴覚士がいる在宅医・在宅歯科との連携があると、療養生活を一層より良くするお手伝いができるかもしれません。
スキル・経験編
アセスメントスキル
訪問看護は病院とは違い、急変時に看護師が駆けつけるまでに時間を要します。そのため、訪問した日に、次の訪問までに安心して過ごしていただくために、バイタルサインやご様子など、小さな変化に気づけるかどうかが大切です。「この兆候は次の訪問までの間に、急変するかもしれない」と察知し事前にご家族様へ「もしも急な熱が出たときはこのお薬を飲んで様子を見てくださいね」「こんな時は夜間でもお電話くださいね」と声掛けができるとベストです。
新人のうちは先輩に指摘されて変化に気づくことが多いかもしれませんが、少しずつでも、磨き続けられるようにしたいスキルです。
変化の対応をしている
実際に患者さんの変化に対応した経験があると、いざという時に冷静に対応ができると言われます。予測のつかないことも起きることがある在宅では、変化への対応に抵抗感が無いことも大切です。
院内開催の退院時カンファレンスに出る
ある程度経験がないと出席する機会をもらえないかもしれません。しかし、もし先輩と同席できたりする機会があれば、一度でも出ておくと良いでしょう。1人の患者さんに多職種が関わり合う、連携している様子は、訪問看護のあり方に近いイメージを体感できます。
医師や他職種との連携
ホウレンソウができる場面があれば積極的にチャレンジしておきましょう。訪問看護では多職種がそれぞれが離れた所にいて、顔が見えないながらもこまめなホウレンソウをして、利用者様の生活を支えています。
その他
「こんなものまで?」というのもありますが、訪問看護師を目指す皆さんの参考になればと思います。
車の運転(地域による)
地域によりますが、車で訪問にまわることもあります。都内の場合はほとんど自転車ですが、乗り物に慣れておくと初めて訪問看護に挑戦するときの心配が少ないでしょう。
リハビリ
看護師が簡単なリハビリを行うこともあります。もしリハビリを教わるような機会があれば、積極的に学んでおきたいです。
ICLSの受講
訪問看護の苦手意識の1つに「急変したり、何かあったときに1人で対応できるか不安」というのがありますが、ICLSの受講経験がある看護師の方は、自信をもって訪問看護に望んでいる印象があります。
ご家族様対応
新人のうちは、なかなか対応をさせてもらえないこともあるかもしれません。しかし在宅ではご家族様の対応も必ず必要になりますので、マナーの勉強と併せて経験しておくと良いでしょう。
番外編
アレルギーチェック
機会があれば、アレルギーチェックをておくのがおすすめ。というのも、アレルギーが出るようなペットがいるお家に訪問に行くこともあるためです。以前、入社して、訪問に回るようになってから、アレルギーが発覚した従業員もいました。事前に分かっていた場合、アレルギーが出る恐れのあるお宅への訪問は前もって控えることができます。
※1 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51327360U9A021C1000000/