2019.11.6 |
訪問看護に向き・不向きってありますか?と聞かれることがあります。
向いているか、向いていないかは、主観でしか感じ取れないものではありますが、訪問看護師になりたくて当社に入社いただいた方々を見ていると、やはり「訪問看護に向いているタイプ」という特徴があるような気がしています。
今回はリカバリーで働く訪問看護師の方々に共通する「タイプ」をまとめてみました。
訪問看護という仕事上、車や自転車等の移動時間が多くなり、特に悪天候の日は体力を消耗します。坂道で急に電動自転車のバッテリーが切れた!なんてことも全くないわけではないため、基礎体力がある方や、もともと体を動かすのが好きな方のほうが「毎日自転車で移動して心地よく疲れた!」というように、ポジティブに体の疲れを受け入れやすいのかもしれません。
リカバリーの場合、野球が好きで週末は社会人野球をやっている、毎週末ゴルフ、元柔道部というように、体を動かすのが好きな方や、もともと運動部に所属していた、アクティブな方が多く在籍しています。
訪問看護では、慣れてくると1人で訪問するのが基本になります。分からないことがあった時や、不測の事態の時に、医師や先輩から指示をその場ですぐにもらわないと、どうしたらいいか分からない、という方は、訪問看護の現場でストレスを抱えるかもしれません。
「医者好きの看護師は向かない」と以前、訪問看護の大先輩から聞いたことがあります。
自分で考え、利用者様や家族のために能動的に行動できる方のほうが、訪問看護の現場でいきいき働けるでしょう。
最近では、当社のように従業員1人1人にスマートフォンを貸与し、いつでも先輩たちに電話連絡ができるように体制を整えているステーションも多いです。1人で訪問することに不安の強い方は、そうしたサポート体制があるステーションが合うかもしれません。
飲食店で1人で昼食を取るのも楽しめる方は、訪問看護の働き方を楽しめる人かもしれません。
というのも、訪問看護は外での移動が多い仕事です。その日のスケジュール次第ですが、事務所に戻ってお昼を取る人もいれば、外で済ませる人もいます。
お昼前後の訪問予定が入っていると、天気がいい日は公園で、イートインスペースのあるコンビニでお昼を取ることもあります。また、美味しそうな定食屋やカフェを見つけてふらっと入ってみたり、利用者さんからオススメされたお店に行ってみる、ということもあります。
今までこうした働き方がイヤだから辞めます!という看護師の方はお見かけしたことはありませんが、活躍している従業員を見ていると、1人で過ごす時間も楽しめる人が多いと感じます。
トラブルや予期せぬ事態が起きたときも、かえってそんな状況も前向きに、楽しんで仕事ができる方は向いているかもしれません。
病院は朝食の時間も消灯の時間も決まった管理医療体制で、入院時のルールもしっかり決まっているので、起きるトラブルに対して、対応フローが整っていることが多いです。しかし、家で暮らしていると色んなハプニングが起きるように、病院ではまず起きないような事態を目の当たりにすることがありますし、訪問看護の場では、まずは訪問に行った自分ひとりで対応することがあります。
例えば、これまで見聞きした中では「チャイムを鳴らしても出ないので窓から覗いてみたら利用者様が倒れていた」といった緊急事態の他にも、初回訪問でご自宅に上がらせてもらったら「今まで見たこと無いような虫が家の中にたくさんいた」「利用者さん家が火事になってた。すでに避難して外にいたので、外でバイタルとった」などなど…。
看護師以外の人が聞いたらびっくりするような事態も「聞いて!そういえば今日こんなことがあって!」というように話せるタイプの人や、難しい案件も「うまくやりきってみせる!」とかえって意気込む人は、臨機応変さやタフな精神を活かせる仕事だと思います。
訪問看護の場合、1人の利用者さんに少なくとも30分は時間をお取りし、ケアに介入することができます。ゆっくりとお話しながらケアをしていくので、利用者さんの生い立ち、好きなこと、価値観、家族のこと、ペットのことなど、じっくりとお話を聞ける機会があります。
そのため「看護師」として「入院期間中だけ/病気が治るまで」の関わりより「1人の人間として」利用者さんの「人生の一部/人生の最期」に携わる関わり合いの深さを求めたいなら、訪問看護師が向いていると言えます。
リカバリーで活躍中の看護師の中に、自虐ととれそうですが「自分はここ(訪問看護)に来るまでは、病院で浮いてた」と答える方もいます。例えば「自分がいた病棟では、夜間に患者さんが亡くなってエンゼルケアをする時は、ご家族がドクターと話してる間に済ませるもので、とにかく急がなきゃいけない雰囲気があることに違和感があった。でも訪問看護にきたら、せわしない感覚はなく、エンゼルもご家族と最後一緒に、寄り添いながら行う。自分がしたかったことはここ(訪問看護)にあると思った」というエピソードも。
看護観はひとそれぞれです。その看護観を尊重してくれる・共感してくれるような職場が、もしかしたら訪問看護にあるかもしれません。
訪問看護は1人で訪問するので、一見孤独な仕事と思われているかもしれません。しかし、1人の利用者さんの在宅療養に本当に多くの職種が協力しあって成り立っています。そのため、チームと協力し、アイディアを出し合いながらケアを進めていくのが好きな方は、やりがいを感じられるかもしれません。
特に、チーム制を置いているステーションでは、外部の方とだけでなく、同僚の看護師、リハビリスタッフとで利用者さんを支えていきます。
訪問看護の現場では、医療機関や施設ほど設備、備品が充実しておらず、医療資源が乏しいです。そのため、家にある、ありとあらゆるものを駆使して療養生活の環境を整えたり、ケア・リハビリに生かしたりします。
例えば、雑誌やサランラップの芯をリハビリ用具にしたり、ハンガーを点滴台代わりにするなど、スタッフやご家族とみんなで考えながら、療養生活をサポートします。身近にあるものを応用するアイデアがたくさんあると、スタッフから、ご家族からも頼りにされるかもしれません。
訪問看護で働いてみたときのギャップはあるか?という質問を訪問看護師たちにしてみたところ「意外と書類が多い」とコメントをもらったことがあります。実は、訪問看護には申し送り書を始め、指示書、提供表、報告書など書類がたくさんあります!
ケアマネジャーさんや関係各所とのやり取りは、FAXや電話が中心となるため、紙や電話のやり取りも多くなります。
そのため、電話の受け答えや書類整理といった仕事も必然的に多くなります。
カルテのファイリングを事務員の方が担当してくれることもありますがそうでないこともあります。電話をかけて要件を的確に伝えたり、書類を見やすいように整理したりするといった仕事も取り組める方は、向いているかもしれません。
訪問看護では、利用者様やご家族などさまざまな方の「価値観」に向き合わなくてはなりません。
そのため、利用者さんの人生に携わる中で「○○さんはああしたいって言ってたけど本当にこれでよかったのかな」「もっと違うやり方があったのではないか」と思いを巡らせることもあります。
この「価値観と向き合う」という仕事に対して、難しいと感じながらも、やりがいを感じられる人は、訪問看護が向いていると言えます。
例えば、誤嚥性肺炎のリスクが高い利用者さんの食事で「ご自宅で1日でも長く過ごしてもらうには誤嚥性肺炎を予防するために、嚥下食をすすめるべき」という看護師がいてもいいですし「最期なら好きなものを食べていいよね」という看護師がいてもいいのです。
その上で「長生きしてほしいので食べさせないでほしい」というご家族の価値観を尊重することもあります。
利用者さんの希望に対して、何がもっとも理想の過ごし方に近いかを看護師の視点でサポートするのに、正解はありません。
しかし、価値観の相違やぶつかり合いを経て、多職種と1人の利用者さんに対して全力で向き合っていくこの仕事のやりがいは大きいです。そこに楽しさややりがいを見いだせる人なら、訪問看護の仕事を楽しんですることができるでしょう。
※本掲載は取材当時のものです