空港で働く看護師になるために知っておくべきことまとめ!~給料・仕事内容・英語力等~
日本国内で看護師として働いている中で、空港で働くことに興味を持つことはありませんか?外国との玄関口、日常とは少し異なる雰囲気や風景がそこにはあります。
一方で海外の方も多く英語ができないと空港看護師として働くのは難しいのではないか?
日本と海外では医療に関する考え方が異なるので、病院勤務の経験だけでは空港看護師として働くのは難しいのではないか?そんな不安から自信をもって一歩を踏み出せないという方も多いのではないでしょうか。
このように、空港で看護師として働くことに興味があるものの、実際に空港で働くことを考えるとなかなか行動に移せないという方に向けて、空港看護師の仕事内容や働く上で活かせる強み、空港看護師になるための方法について解説します。給料や勤務できる空港についても併せて確認し、空港看護師への転職を検討してみましょう。
目次
1.空港における看護師の働き方
空港における看護師の働き方には、「空港内のクリニック・医務室で看護師として働く」「空港に設置された検疫所で検疫官として働く」といった2種類の働き方があります。それぞれの働き方の違いについて、簡単に確認しましょう。
クリニック(医務室) | 検閲官 | |
運営母体 | 民間 | 国 |
働く場所 | 全国10か所 | 全国30か所 |
給料(初任給) | 約25万円 ※求人票を基とした参考値 | 約19万円
|
(参照:【羽田空港】《直接雇用》経験活かす!ANAグループでの看護師・保健師のお仕事♪、厚生労働省「検疫所の設置状況」)
それでは、空港で働く看護師は一体どのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、「空港のクリニックや医務室」と「検疫所」のそれぞれで働く看護師について、仕事内容を簡単に解説します。
1-1.空港クリニックの仕事内容
空港内のクリニックや医務室で働く看護師は、地域にある一般的なクリニック・診療所のように、主に外来患者の病気やケガの対応を行います。
空港は多くの旅行客・ビジネス客が利用しており、飛行機に乗ったことによる体調不良や、ちょっとしたケガで困っている方も少なくありません。空港クリニックでは、基本的には軽症・軽傷の患者さんのみに対応し、患者さんが重症である場合には、周辺の病院や提携する病院へ搬送することとなります。
このように、旅行客の急な発病やケガに対応することも空港クリニックに勤務する看護師の仕事の1つですが、地震などの自然災害や航空機事故などが発生した場合に、災害や事故に遭った方のトリアージや看護ケアを行うといった役割も担っています。一般的な看護スキルとともに、災害時の救護活動や看護についての知識・技術も必要となるでしょう。
1-2.検疫官としての仕事内容
看護師の国家資格を取得していれば、「検疫官」となって空港内にある検疫所で勤務することも可能です。検疫官とは、海外と国内を往来する人々の健康をサーモグラフィーや採血、問診などによってチェックし、危険な感染症などの日本国内への流入を防ぐ業務を行う職業です。また、日本国内への持ち込みが難しい食品をチェックする役割も果たしています。
このように、検疫官の仕事内容は、一般的な病院やクリニックと大きく異なります。感染症や食品に関する知識・法律を身につける必要があることにも留意しましょう。
2.空港看護師になると活かせる3つの強み
空港看護師の仕事は、一般的な病院やクリニックで勤務する仕事と異なる部分も多く見られます。では、空港看護師として働く際に活かせる強みには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、空港看護師として勤務する場合に発揮しやすい「強み」を3つ紹介します。
2-1.英語力
空港は、様々な国・地域から人が集まってくる場所です。特に国際線もある空港のクリニックや検疫所で接する患者さんや空港利用者の中には、日本語が話せない・通じない方も多数います。空港看護師として勤務する場合には、世界で広く使用されている「英語」や、訪日客が多い国・地域で話されている言語など、日本語以外の言語を使えることが求められるでしょう。
特に、世界共通の言語として広く使われている英語を日常会話レベル・ビジネス会話レベルで使いこなせる方は、空港看護師として働く場合にも重宝されます。TOEICスコアでいえば700以上、英語検定でいえば準1級以上に相当する英語スキルがある方は、空港看護師として英語力を存分に発揮できるでしょう。
2-2.コミュニケーション力
多様な属性をもつ人々と多く接することとなる空港看護師には、高いコミュニケーション能力が必要となるでしょう。空港には、様々な国や地域から幅広い年代の空港利用者が集まってきます。
もともと人と交流することが好きな方はもちろん、総合病院で複数の診療科を経験し、様々な世代の患者さんの看護に携わってきた方や、地域医療で多くの他業種の方と連携して仕事をしてきた方など、看護の仕事の中でコミュニケーション能力を磨いてきた方にもおすすめです。
2-3.臨機応変な対応力
空港クリニックでは、様々な症状・ケガの患者さんをケアすることとなります。様々な診療科を経験した方や、救急病棟で看護スキルを磨いてきた方など、臨機応変に適切な対応がとれる看護師は、空港クリニックでも大いに活躍できるでしょう。
また、検疫所では危険な病原体を保持している方と接することもあるため、常に冷静に対応できる力も必要とされます。冷静に判断する能力は、大規模な災害や飛行機事故の際の救護活動やトリアージ、看護ケア時にも役立つでしょう。
3.空港看護師になるには
空港で働く看護師の主な勤務先は「空港クリニック」と「検疫所」の2つがあり、それぞれの勤務先によって就職や転職のやり方が異なります。
それでは、空港で働く看護師になるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、「空港クリニック勤務の看護師」「検疫官」のそれぞれについて、勤務するための方法を紹介します。
3-1.空港クリニックで働くには
空港クリニックで看護師として働くには、空港クリニックを運営している医療機関に転職する必要があります。ただし、医療機関側が空港クリニックに看護師を派遣する形態の場合は、施設都合で勤務先が決まることから、必ずしも空港勤務とならない場合があることに注意しましょう。
また、看護師専門の転職サイトなどで、空港クリニックの看護師求人が出ている場合もあります。空港クリニックの求人に直接応募することで、空港クリニックで働ける可能性も高まるでしょう。
3-2.検疫官として働くには
空港で検疫官として働くためには、厚生労働省が実施する検疫官の選考をクリアする必要があります。募集人数が少なく、空港クリニックへの転職よりも難易度が高い傾向があるため、十分に対策をとってから採用選考に臨みましょう。選考を受けるために満たすべき条件もあるため、事前に必ずチェックすることが大切です。
【検疫官(看護師)の選考について】
■応募条件
①日本国籍を有する方
②看護師資格を取得している方
③応募の時点で医療機関において3年以上の臨床経験がある方
④普通自動車免許を取得している方
■選考方法
書類選考→人物試験(面接試験)
検疫官の選考に応募するためには、写真を貼付した履歴書や看護師免許証のコピー、1,200字程度の小論文を厚生労働省の担当部署に送付する必要があります。募集のタイミングによって、応募書類の内容が異なる場合もあるため、書類を準備する際に必ず厚生労働省の公式サイトを確認しておきましょう。
4.空港で働く看護師の給料は?
空港クリニックで働く看護師や検疫官に興味を持っている方の中には、空港で働く看護師の待遇面が気になる方も多いでしょう。特に給料面は気になるポイントではないでしょうか。
ここでは、空港クリニックで働く看護師と検疫官について、それぞれの給料の相場を解説します。就職や転職で求人を探す際の参考にしてください。
4-1.空港クリニックは本院と同条件
空港クリニックは運営する医療機関や勤務形態、雇用形態によって給料などの待遇が異なります。空港内のクリニックを運営しており、本院で雇用している看護師を派遣する方式で運営している場合、給料は本院での雇用条件とほぼ同じと考えてよいでしょう。パートタイム勤務(日勤・土日祝日休み)の場合は、時給1,400円前後とイメージしておくと無難です。
なお、ANA(全日空)グループの派遣会社が空港勤務の看護師・保健師の求人を出していることもあります。このように、空港クリニックを運営する医療機関だけでなく、航空会社が空港勤務の求人を出している場合もあるため、こまめに求人情報をチェックしておきましょう。
【羽田空港】《直接雇用》経験活かす!ANAグループでの看護師・保健師のお仕事♪
4-2.検疫官は国家公務員給料
検疫官は国家公務員(厚生労働技官 検疫官)に当たるため、給与や手当の金額が法律で規定されています。初任給は19万2,400円とされていますが、経験年数などによって給与額も変動します。また、扶養手当や住居手当など、人事院が定める様々な諸手当も確認しておくとよいでしょう。
なお、2020年の新型コロナウイルス感染症対策では、成田空港や羽田空港で勤務し検疫業務に携わった検疫官・国家公務員に1日で最大4,000円の特例手当が支給されています。世界の感染症の状況によっては、リスクの高い業務を行うこともあるものの、手当が支給されるケースが多いことも覚えておきましょう。
(参照:人事院「国家公務員の諸手当の概要」、総務省「人事院規則9-129の一部改正」)
5.働く場所一覧
空港クリニックで看護師として働く場合でも、検疫官として空港で働く場合でも、クリニックや検疫所がある日本国内の空港は数が限られていることに注意が必要です。ここでは、看護師として空港クリニックや検疫所で働ける空港を一覧でチェックしましょう。
5-1.空港クリニックは全国10か所
日本国内に空港は大小多数ありますが、空港クリニックがある空港は次の7つ(全10か所)となっています。
■空港クリニックがある空港(クリニック名)一覧
空港名 | クリニック名 ※( )内は運営元 |
成田国際空港 | |
羽田空港 | |
新千歳空港 | |
中部国際空港 | |
関西国際空港 | |
大阪国際空港 | |
福岡空港 |
5-2.検疫官は全国30か所
検疫所は空港と海港に設置されており、日本国内で検疫所のある空港は次の30か所となっています。空港のある都道府県とともに場所をチェックしましょう。
■本所(2か所)
・成田国際空港(東京都)
・関西国際空港(大阪府)
■支所(7か所)
・新千歳空港(北海道)
・仙台空港(宮城県)
・羽田空港(東京国際空港)(東京都)
・中部国際空港(愛知県)
・広島空港(広島県)
・福岡空港(福岡県)
・那覇空港(沖縄県)
■出張所(21か所)
地方 | 空港名(都道府県名) |
北海道 | ・旭川空港(北海道) ・函館空港(北海道) |
東北地方 | ・青森空港(青森県) ・秋田空港(秋田県) ・新潟空港(新潟県) ・福島空港(福島県) |
関東地方 | ・茨城空港(茨城県) |
中部地方 | ・富山空港(富山県) ・小松空港(石川県) ・静岡空港(静岡県) |
中国・四国地方 | ・岡山空港(岡山県) ・米子空港(鳥取県) ・高松空港(香川県) ・松山空港(愛媛県) |
九州地方 | ・北九州空港(福岡県) ・大分空港(大分県) ・長崎空港(長崎県) ・佐賀空港(佐賀県) ・熊本空港(熊本県) ・宮崎空港(宮崎県) ・鹿児島空港(鹿児島県) |
(参照:厚生労働省「検疫所の設置状況」)
6.まとめ
空港で看護師として働くためには、「空港クリニックで看護師として働く」「看護師資格を活かして検疫官(厚生労働技官)として検疫所で働く」といった2通りの働き方があります。
空港で働く看護師は、英語力やコミュニケーション力、対応力といった高いスキルが求められる上に、募集人数が少なく勤務場所も限られており、採用自体が狭き門となっていることに注意が必要です。しかし、「空港を利用するお客さんのサポートができる」「感染症の国内流入を最大限防ぐことができる」といった点で大いにやりがいを見出せるでしょう。
看護師として空港で働くことで、一般的な病院・クリニック勤務では得られない経験も手に入れられるでしょう。英語力に自信がある方や海外で働くことに興味がある方は、ぜひ看護師として空港で働くことを検討してみましょう。
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