脳神経外科の3つの特徴と看護師として働く上で知るべき仕事内容3選
脳神経外科病棟で働きたいと思っていませんか?
多くの看護師が一度は興味関心を持ち、調べる科の一つになります。
脳神経外科は脳と脊髄、神経を専門にしている科ですが、多くは脳疾患患者さんになります。脊髄と神経が難しいイメージでハードルが上がるかもしれませんが、半分以上は脳疾患患者さんになります。
しかし、急性期の方が多いので、仕事内容はハードで、寝たきりの方も並行で看護するため、体力的にも精神的にもハードにはなります。
併せてフィジカルアセスメントのスキルが求められるので、脳神経外科で働きながら習得するのはオススメです。
他の科で働く場合でも活用される機会は多いので、「MMT」や「対光反射」または「JCS(GCS)」で意識レベルの指標をマスターすることは看護師のスキルとしては大切になります。
多くの看護師が経験として必要な脳神経外科ですが、合うと思われる性格は3つになります。
・わずかな変化に気付ける人
・引きずらず切り替えが早い人
・勉強が好きな人
もしこれらの性格であれば迷わず、興味があれば異動や転職をすることをオススメします。合わないなと思っても意識することで変われるはずなので、是非諦めずにチャレンジして下さい。
目次
1.脳神経外科とは脳と脊髄、末梢神経を専門
脳神経外科では、脳と脊髄、末梢神経を専門として扱っています。
神経症状の多くはある日突然に痙攣、片麻痺、頭痛、歩行障害、めまい、意識障害、痴呆、しびれなどとして出現します。脳神経外科はこのような症状に対し、脳及び脊髄の異常を外科的に治療する科となります。
脳卒中を始め、脳腫瘍、頭部外傷、脊髄疾患、脊椎疾患などの患者さんが対象となります。
1-1 脳神経外科病棟の職場環境はハード
脳神経外科の病棟は基本的にハードになります。理由は命に関わる重篤な患者さんや緊急手術の対応を求められる場面が多いためです。
モニター管理は勿論のこと、バイタルサイン測定やフィジカルアセスメントを通して異常の早期発見を求められます。
また脳に障害を持っている方が多いので、意思疎通が難しかったり、不穏症状が出現することがあるため、対応に時間を要することが少なくはありません。
麻痺などを抱える方も多く、全介助の患者さんが多いため、夜勤などは特に大変になります。体力的にも精神的にもタフでないと務まらない病棟になります。
1-1-1 脳外科は急性期、慢性期の両方を学べる
脳外科はハードですが、メリットは急性期と慢性期の両方を学べることです。
術後の患者さんや急変時の対応は勿論、寝たきりであったり、レスパイトで入院される方も多いので、幅広い重症度の方を看護が可能です。
また、脳外科疾患はどこの科でも紐づくため、脳外科で学んだフィジカルアセスメントや、観察方法は、異常の早期発見にも必ず役に立ちます。
1-1-2 脳外科を経験した著者が語る楽しさ
著者も20代後半に脳外科を経験しましたが、正直忙しさよりも楽しさが勝っていました。
理由は様々な患者さんを経験できることと、日々の変化に気付いた時の喜びが高い部分にあります。
確かに体力的にはハードにはなりますが、患者さんが回復に向かっていく喜びや、ちょっとした変化に家族と喜ぶ場面は元気をもらえます。不穏状態をコントロールできた日は帰り道も軽やかになります。
ただハードであることは変わりがないので、興味があるなら体力がある内に経験することをオススメします。
1-2 脳神経外科では脳血管疾患患者が多い
脳神経外科で最も多いのは脳血管疾患の患者さんになります。
死亡数は悪性新生物、心疾患、老衰に続いて第4位になり、102956名も年間亡くなる病気になります。<参考:厚労省「令和2年人口動態統計月報年系の概況」>内訳でも脳梗塞が6万人以上で、次いで脳内出血が3万人以上になります。
その他では脳腫瘍や変形性脊椎症、頭部外傷や椎間板ヘルニアなども扱い、病院によってはてんかんやパーキンソン病、髄膜炎や脳炎の患者さんを看るところもあります。
1-3 脳神経外科の看護師にはフィジカルアセスメントスキルが必要
脳神経外科は他科と比べるとフィジカルアセスメントのスキルを求められます。
多くの看護師が学校では習っていると思いますが、実際そのスキルを使用しないといけません。
特に徒手筋力検査(MMT)や対光反射の確認あるいは意識レベルの確認は、脳神経外科特有の重要なスキルになります。2章で内容は詳しく説明しますが、是非抑えてほしいです。
ただ暗記している看護師ばかりではなく、まとめているスケール手帳や定規をもっている人も多くいるので、安心してください。
実際は他の科でも活きるのがフィジカルアセスメントであるため、興味があった瞬間、脳神経外科にトライするのは経験として重要になるでしょう。
2.脳神経外科の看護師に求められる主な仕事内容3選
脳神経外科では脳血管障害により失語を生じたり、術後のため意思を表出しにくい患者さんが多くいます。
そのため、最も重要になるのがバイタル測定になります。その上でフィジカルアセスメントを通して異常の早期発見が求められます。
また外科的処置が必要になり、脳室ドレーンを始めとしたドレーン類の管理を求められる場面が多いため、看護師に求められる仕事内容になります。
・バイタル測定(JCSまたはGCS)
・フィジカルアセスメント
・ドレーン管理
この3つが脳外科看護師が抑えるべき代表的な仕事内容になります。
2-1 基本となるバイタル測定とJCS(GCS)の確認
通常のバイタル測定に加えてJCSの確認が重要になります。病院によってはGCSを使用する場所もあるので、必ず抑えるようにしましょう。意識レベルを統一言語で言えることが大事になりますので、しっかり習得することは求められます。
<JSC:ジャパン・コーマ・スケール>
Ⅲ.刺激をしても覚醒しない状態(Ⅲ桁で表現) |
300.痛み刺激に全く反応しない |
200.痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる |
100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
Ⅱ.刺激すると覚醒する状態(Ⅱ桁で表現) |
30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する |
20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する |
10.普通の呼びかけで容易に開眼する |
Ⅰ.刺激しないでも覚醒している(Ⅰ桁で表現) |
3.自分の名前、生年月日が言えない |
2.見当識障害がある |
1.意識清明とは言えない |
<GCS:グラスゴー・コーマ・スケール>
E:開眼反応 | V:最良言語反応 | M:最良運動反応 |
4:開眼している | 5:見当識良好 | 6:命令に従う |
3:呼びかけで開眼 | 4:混乱した会話(見当識障害) | 5:痛み刺激の場所を手足で払いのける |
2:痛み刺激で開眼 | 3:混乱した言葉 | 4:痛み刺激から手足を逃避する |
1:開眼せず | 2:声は出るが言葉は言えない | 3:痛み刺激で手足を異常屈曲 |
1:発生せず | 2:痛み刺激で手足を異常伸展 | |
1:運動反応なし |
2-2 フィジカルアセスメント
脳神経外科では患者さんの動きを毎日確認して、医師と共に看護師同士でも同じ数値での共有が求められます。
特に徒手筋力検査(MMT)で運動麻痺の程度を客観的データでまとめるのが重要です。
<徒手筋力検査(MMT)>
5:強い抵抗を加えても運動可能 |
4:重力及び中等度の抵抗を加えても関節運動が可能 |
3:重力に逆らって関節運動が可能であるが、それ以上の抵抗を加えればその運動は不能 |
2:重力の影響を除去すれば、その筋の収縮によって関節運動が可能 |
1:筋収縮はみられるが、それによる関節運動はみられない |
0:筋収縮が全く見られない |
また意識レベルの確認と共に対光反射を見る必要があるため、ペンライトは脳外科では必須アイテムになります。
確認するものは以下となりますので、復習することが大事になります。
<対光反射>
対光反射 | 瞳孔所見 | 原因 |
対光反射あり | 縮瞳 | 両側大脳半球の障害、間脳の障害 |
(確認が困難) | 著しい縮瞳 | 橋の交感神経の障害 |
対光反射なし | 散瞳・眼振 | 中脳視蓋前野の障害 |
対光反射なし | ほぼ正常 | 中脳正中の障害 |
対光反射なし | 片側の散瞳 | 同側の動眼神経麻痺 |
2-3 ドレーン管理
ドレーンは脳室や脳槽などに入っているため注意点は多くあります。特に感染予防には十分気を付け、排液量の変化や刺入部の発赤、腫脹の観察は重要になります。
ベッドの角度により頭蓋内圧は変動するため、角度を15~30度(あるいは医師の指示に従い)で保ったまま清潔ケアや体位交換を行い、実施後はドレーンの観察を行うようにしましょう。
処置中は勿論のこと、患者さん自身でドレーンを自己抜去しないように環境整備や、説明は重要になります。
3 脳神経外科看護師に向いている性格
脳神経外科は急性期も慢性期も対応し、体力的にも精神的にもタフな人が求められます。フィジカルアセスメントスキルを始め、観察力も求められる科であります。
やりがいもある科で、患者さんの回復や変化を見守れるため新卒や若い看護師には人気の科でもありますが、向いている傾向は大きく分けると3つあります。
・わずかな変化に気付ける人
・引きずらず切り替えが早い人
・勉強が好きな人
これらの性格だとより脳神経外科に合いますので、参考にして下さい。
3-1 わずかな変化に気付ける人
脳神経外科はフィジカルアセスメントの技術でもわかるように、わずかな変化に気付く必要性があります。
日々の変化を感じ取り、医師や上司への共有が重要になります。数値的にわかる手段も多くありますが、ちょっとした変化や違いを察知できる方は向いているし、気付いたときは大きな喜びややりがいになるため向いているでしょう。
3-2 引きずらず切り替えが早い人
急性期病棟ではあるあるになりますが、患者さんの急変や死に対しての強さは重要です。
辛いことも少なくない環境で、違う患者さんの対応で引きづってしまいますと、ミスの原因になりやすいです。性格的な点なので修正は難しいかもしれませんが、切り替えの早さは脳外科病棟では求められる傾向です。
3-3 勉強が好きな人
脳外科領域は特に、医療の進歩と共に変化が激しいです。
10数年前は脳外科=外科的治療という状況が、保存的や点滴治療などでも回復するようになっています。看護技術自体も求められる幅が広がってもいるので、勉強が他の科以上に求められます。
看護師の多くは勉強を頑張る傾向にありますが、苦も無く好きな方は向いているといえるでしょう。
4 脳神経外科で働くには希望を出すのみ
脳神経外科で働きたい方は、異動希望を出すのが一歩です。専門病院で働きたい場合は転職が必要ですが、多くの中核病院には脳神経外科の部署があります。
人気の科の一つでもありますが、体力的に厳しいので、数年で異動希望を出す方も多いので、枠は出やすい科でもあります。
著者のオススメは希望があれば体力のある「今」が最も適した時期になるので、遅くならないうちに経験するのがコツだと思います。
5 まとめ:脳外科はハードな職場だが学びが多い
脳神経外科は脳と脊髄、神経を専門にしている科ですが、多くは脳疾患患者さんになります。
脊髄と神経が難しいイメージでハードルが上がるかもしれませんが、半分以上は脳疾患患者さんになります。仕事内容は急性期から慢性期の対応が求められ、状態の変化も激しいためハードです。
フィジカルアセスメントのスキルが求められるので、学ぶことも多くあります。しかし、意識レベルやMMTなどは他科でも必要になる場面があるため、脳外科でマスターすることで、異常の早期発見に気付きやすくもなります。
・わずかな変化に気付ける人
・引きずらず切り替えが早い人
・勉強が好きな人
上記の性格の方は向いている傾向ではありますが、体力的にも求められ、全科にも共通する部分が多いので、興味がある方は早めに経験すべき科の一つになります。
是非悩んでいる方はチャレンジすることを強く勧めます。
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