デイサービスは看護師不在だと収入が30%減算!を回避する方法
看護師1名体制だと退職意向がいつ出るか不安な日々を送っている経営者が多いのではないでしょうか?
今後の体制と収入に不安を感じている方に向けて、30%の収入減少の仕組みや回避方法を解説していきます。
1番のおすすめ対策は業務委託契約を締結し、近隣の病院や訪問看護ステーションと連携をとることです。連携先を探すことの方が、看護師を雇用するよりも効率的であり、経営上のコスト管理も有利だからです。
2015年以降、定員が11名以上のデイサービスの看護師配置は、「単位ごとに専従で1人以上」と変更され、以前よりも緩和されました。
しかしながら、「単位ごとに専従で1人以上」といわれても、わかりにくいという意見をよく耳にします。
よくわからないままにしておいて、看護師配置の要件を満たしていないことに気付かず、行政から指摘されてから対策を練るとなると、収入が30%減少してしまうため、デイサービスの運営自体が危ぶまれます。
また、場合によっては行政処分の対象となってしまうこともあります。
デイサービスを利用する方からすれば、常に看護師がいてくれた方が安心できるので、正社員の看護師を1名雇用して配置するのが理想です。
しかし、人員不足の昨今、それが難しいことも多いです。そこで、看護師不在となった場合でも収入減少とならないように、業務委託による連携することをおすすめします。
筆者は訪問看護ステーションを運営して7年が立ちます。デイサービスとの連携により、実際に看護師とともにお手伝いさせていただいています。
収入減少を回避するためにまず知っておきたいのは、デイサービスで働く看護師は、デイサービス専従である必要はないということです。
専従で働く看護師の確保が難しい場合は、早い段階でクリニックや診療所、訪問看護ステーションと委託契約を行うことが大切です。
利用者の方に適切なサービスを提供するということだけでなく、減算の対象とならないためにも、看護師の配置基準を事例とともに理解し、収入減少になることが無いようにしましょう。
目次
1 【解説】非常勤や業務委託での看護師配置でも収入減少にならない
デイサービスでも、病院などの医療施設と同じように看護師配置が定められています。ポイントは、サービス提供時間を通じて、必ずしも看護師を配置する必要はないということです。
非常勤であっても、デイサービスに駆けつけることのできる体制があればよく、また、適切な指示ができる連絡体制などが整っている「密接かつ適切な連携」の取れる病院や訪問看護ステーション等と業務委託による連携をとっていれば、減算対象にはならないのです。
このあたり、法令を具体的に実務に適用することが難しいところなので、解説していきます。
1-1 【ポイント①】単位ごとに30分程度看護師がいれば良い
看護師の配置基準は、2015年に行われた介護報酬改定で、定員が11名以上のデイサービスに関して、原則として、単位ごとに専従で1以上とされています。
ただし、例外として『密接かつ適切な連携』があれば、通所介護の提供時間帯を通じて専従する必要はないとされているところがポイントです。
デイサービスの単位とは、「同時に一体的に提供される通所介護」のことです。具体的には、以下のように考えます。
① 1日を通して同じ利用者にサービスを提供する場合:1単位
② 午前と午後で異なる利用者にサービスを提供する場合:2単位
③ 午前と午後で利用者が異なるサービスと、1日を通して同じ利用者に提供するサービスの2種類が行われている場合:3単位
もし③に該当する場合、3単位なので看護師を3名確保する必要があるかというと、そうではありません。サービス提供時間を通じて専従する必要はなく、1日を通してずっと看護師が専従で働いていようが、最初の30分だけ働いていようが、看護師の配置を「1」として考えることが可能です。
そのため、午前の利用者、午後の利用者、1日通しての利用者に対して1名の看護師がそれぞれ30分関わっていれば、単位ごとに専従しているということになります。
この改定により、看護師配置が緩和され、看護師の配置基準を満たしやすくなりました。
1-2 【ポイント②】業務委託契約を結び、単位ごとに看護師に来てもらえば良い
上述したように、サービス提供時間を通じて必ず1名以上看護師がいる必要はありません。しかし、以下の条件を満たす必要があります。
- 病院や診療所、訪問看護ステーションなどとの連携により、看護職員が指定通所介護事業所の営業日ごとに健康状態の確認を行っていること
- 病院や診療所、訪問看護ステーションとして通所介護事業所が提供時間帯を通じて『密接かつ適切な連携』が図られていること
例えば、クリニックや診療所、訪問看護ステーションがデイサービスと業務委託契約を結ぶことで、デイサービスにおける看護職員の役割を、業務委託されたクリニック等の看護師が担うことが可能なのです。
1-2-1 『密接かつ適切な連携』を満たすために、委託契約先は利用者の急変時に来てくれる看護師がいることが大事
『密接かつ適切な連携』とは、すぐに駆け付けることができる体制や、適切な指示ができる連携体制などを確保するということです。具体的には、以下のように考えることができます。
・指定されたデイサービスの単位ごと、提供日ごとに、看護職員として専従する時間を確保すること
・同一法人内の他事業所で勤務している時間帯に必要があった場合、デイサービスに駆けつけることができる体制の確保
・利用者の急変時に対応できる連携が保たれていること
・利用者の健康状態に何かあった場合、適切な指示ができる連絡体制が整っていること
必ず、上記の条件満たすことができるよう注意しましょう。
2 人員基準欠如とならないために計算方法をマスターしておく
デイサービスでは、サービス時間を通じて、必ずしも看護師がいる必要がないということはわかりました。
しかし、サービス提供日に看護師の配置予定があったとしても、体調不良などの急な欠勤により、看護師が配置できない日があるかもしれません。
そんな時でも慌てず自分で計算チェックできるよう、人員基準を満たすか否かの計算方法をマスターしておきましょう。
2-1 看護師配置基準違反の計算方法
看護師配置基準の計算は、1ヶ月間の延べ人数とサービス提供日数から、下記の計算式で算定します。
1か月のサービス単位ごとの看護師の延べ人数(同じ人でも単位ごとに人数に加えて良いということ)を、その月のサービス提供単位数で割り、1か月あたりの勤務している看護職員の平均を出します。
出された平均が、「1.0以上」であれば基準をクリアしていると判断され、「1未満」であれば違反ということになるのです。
勤務している看護師が退職をする場合、退職までに必ず新しい看護師を確保しなければなりません。十分注意しましょう。
2-2 30%減算の対象期間は2パターン
看護師は一基準を満たすことができていない場合、どれくらいの期間、減算の対象期間となるのでしょうか。対象期間は2通りあります。
2-2-1 看護職員の平均値が「0.9未満」の場合
減算期間:翌月から人員不足が解消された月まで減算の対象
サービス提供日が20日間、看護師の延べ人数17名の場合。
看護職員の平均は17名÷20日=0.85
「0.9未満」となってしまうため、翌月から減算されます。
2-2-2 看護職員の平均値が「0.9以上1.0未満」の場合
減算期間:翌々月から人員不足が解消された月まで減算の対象
サービス提供日が20日、看護師の延べ人数19名の場合。
看護師職員の平均は19日÷20日=0.95
「0.9以上」「1.0未満」となってしまうため、翌々月から減算されます。
看護職員の平均値によって減算の対象期間は異なるため、注意が必要です。
また、看護師配置基準違反を繰り返している場合、行政処分の対象となることもあります。
デイサービス専従の看護師を確保することが難しければ、クリニックや診療所、訪問看護ステーションとの連携の1つである委託契約を早めに検討しましょう。
3 その他の事例によるQ&A
デイサービスの看護師配置について説明しましたが「なかなか細かいところまでは理解が難しい」「特例はあるのか」と考える方もいると思います。いくつかわかりづらい箇所をQ&Aで紹介しますので、参考にしてください。(参照:令和元年 実地指導結果からみた人員・運営 基準上の留意点について)
①:9時00分~12時00分 定員15名
②B:13時00分~16時00分 定員15名
③C:9時00分~16時00分 定員15名
→この場合、各サービスの定員が18名以下となっている。しかし、サービスを提供している時間帯(午前・午後)で考えると、利用定員が19名以上となるため、「通所介護」に区分される。
4 まとめ
デイサービスの看護師配置や、サービス提供日に看護師が不在の日がある場合の考え方などについて、デイサービスの運営に関することを紹介しました。
利用者の方に適切なサービスを提供するということだけでなく、減算の対象とならないためにも、看護師の配置基準を満たすことができるようにしましょう。
コメント