訪問看護のデスカンファレンスで重要な7つのポイントを徹底解説

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訪問看護のデスカンファレンスで重要な7つのポイントを徹底解説

訪問看護でデスカンファレンスを経験したことのある看護師は非常に少ないのではないでしょうか。

私は訪問看護ステーションを立ち上げて10年目の看護師です。訪問看護ステーションでデスカンファレンスを開催する例はまだ数えるほどしかないですが、訪問看護は在宅医療分野での役割が強化されており、デスカンファレンスの開催が増えることが予想されます。

そこで今回は、デスカンファレンスに呼ばれたときに参加する際の事前準備や運営方法、デスカンファレンス自体の重点ポイントを解説します。

デスカンファレンスを主催するよう求められたときに、この記事が参考になれば幸いです。

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1 訪問看護のデスカンファレンスの目的は病棟のデスカンファレンスと同じ

デスカンファレンスの目的自体、明確な定義が確立されていないことが現状ですが、一般的にデスカンファレンスとは「今後のケアの質の向上、看護師個々の成長の支援、患者さん・ご家族への理解が深まる目的と意義がある」と考えられています。(参照:日本看護学会論文集 デスカンファレンス導入による看取りに関する意識の変化

訪問看護で行われるデスカンファレンスも、病棟で行われるデスカンファレンスでもこの目的や意義は同じであり、働く場が異なるからといってデスカンファレンスの目的が変わることはありません。

具体的には、ケアを評価することでこれからの利用者さんへのケアに生かすことができるということに加えて、遺されたご家族へのケアの計画を立てることに生かされたり、医師と看護師の考え方のずれを知ることで互いの理解を深めたり、スタッフ間で気持ちを共有し、スタッフ自身のグリーフケアを行います。

近年では、訪問看護の場でも以前よりもデスカンファレンスは積極的に行われるようになっており、今後デスカンファレンスにかかわる機会はますます増えてくることでしょう。

訪問看護のデスカンファレンスで1点だけ注意点を挙げるとすると、ご逝去されたご家族をカンファレンスに呼ぼうとする看護師が多いのですが、悲しみを思い出させることになることも多いので、ご家族を呼ぶべきかどうかは慎重に判断してください。


2 訪問看護のデスカンファレンスの重要ポイント~準備編~

訪問看護の現場でデスカンファレンスに参加することになった場合にカンファレンスをリードするのは多くの場合看護師です。そのため、デスカンファレンスの流れと、その重要なポイントをここからご紹介していきます。まずは、準備の段階からです。

2-1 参加者の対象は幅広く、在宅医療連携を図った職種を含む

参加者は看護師だけでなく医師、リハビリスタッフ、介護士、ソーシャルワーカーなど利用者さんにかかわった全ての専門家が参加することが理想的です。

また、利用者さんの病態や病気によっても参加者は異なりますが、例えば、がんで亡くなった利用者さんについて、外来で化学療法を担当していた看護師、病棟に入院していたころに担当していた看護師など幅広く参加を促しているところもあります。

介護資源を手厚く活用されていた方であれば、訪問の介護士だけでなく、介護施設の担当介護士などにも参加していただくと良いでしょう。さらに、遺されたご家族へのグリーフケアを兼ねるために、ご家族にも参加していただくということもあります。

幅広い方が参加をすることに越したことはありませんが、後述するように多くの場合、看護師が日程の調整などが必要となり、調整が追いつかずにデスカンファレンスが行えないということを避けるために、ある程度参加対象者を先に選定しておきましょう在宅医療で関わった医師や看護師、介護職などの参加を優先することが良いでしょう。

デスカンファレンスの経験が無く、自信が持てないうちは、訪問看護ステーション内の看護師、セラピストだけでやることから始めてみることをおすすめします。

なお、あまり経験がない場合の注意点として、ご逝去された方のご家族は呼ばない方が良いです。振り返りとして、ご家族の気持ちを知りたいと思いますが、ご家族としては呼ばれることを良く思わない方も多いのが現状です。

なぜなら、ご家族は在宅で看取ることができ、看取るまで支えることができたという思いから、ある程度やりきって満足してることが多いからです。そこで、ご逝去された方の悲しみを蒸し返すのはあまりおすすめできません。

2-2 難しい日程・時間調整のスタートは医師から行う

訪問看護の現場では、デスカンファレンスを行うのが非常に難しいとされています。その理由が、医師と看護師、介護職などが別の事業所であることが多いからです。

特に、多忙を極める医師のスケジュールを考慮すると、この調整はなおさら難しくなります。この課題を解決するためには、早い段階から日程調整を開始し、必要に応じて柔軟に日程を調整することが求められます。

多くの場合、看護師が日程や時間の調整を行うのですが、その際、事業所が別の場合には、医師の予定に合わせるとスムーズに合わせることができる場合が多いのでおすすめです。

医師は診療所で利用者さんを診たり訪問をしたりという仕事があることに加え、休みが他の事業所と異なる傾向にあるので、医師から日程調整をするようにしましょう。

一概には言えませんが、多くの診療所が午前中に診療所にて一般の利用者さんの診療、午後より訪問に回る傾向にあります。したがって、診療と訪問の間の時間を活用するか、午後の訪問終了後の開催が望ましいでしょう。

2-3 在宅はカルテが参加者内で同一システムではないため、記録書(サマリー)を別途作成する

デスカンファレンスでは各職種の観点からの情報を共有することが望ましいので、記録書(サマリー)を別途作成する必要があります。

在宅医療では、各事業所内でカルテを作成していることがほとんどだからです。そのため、当然ですが同一のシステムではありません。

デスカンファレンスを担当することになった看護師は、各職種から情報を集めてまとめ、記録書を作成することが望ましいです。

記録書は利用者さんの病態、ADLや使用されていた社会資源、経過をまとめたものが主となります。

また、デスカンファレンスにご家族が不参加である場合には、必ず遺族訪問を行い、遺族の思いを記録物として作成してからデスカンファレンスに臨むことが望ましいです。


3 訪問看護のデスカンファレンスの重要ポイント~当日編~

デスカンファレンスに参加する職種を集い、日程を調整し、記録物を作成したら次はいよいよデスカンファレンスを開催します。

デスカンファレンスの内容や進行の流れは利用者さんの事例に合わせて行うこととなりますが、おおよそ以下の内容となります。

・事例紹介
・遺族訪問の報告
・各サービス事業所から振り返り
・事例から今後に活かせること
・まとめ

以下では重要ポイントに絞って解説していきます。

3-1 デスカンファレンスを実践する際の心構え

デスカンファレンスは病棟や訪問の現場で通常行っているカンファレンスよりも気を付けておきたいポイントがいくつかあります。

下記3つのポイントは、全員の意識統一のため、司会進行役の看護師が最初に全員に向けて発信しましょう。

1つ目は、すべての人に発言権を持たせるというところです。

普段発言することが苦手で、聞き役に回っているという人でも必ず発言できるように、話しやすい環境や雰囲気を作っていくことが必要です。

2つ目は、デスカンファレンスの目的を確認することです。

デスカンファレンスは反省会ではなく、今回の看護を今後に生かしていくということが目的となります。

3つ目は、包み隠すことなく行ったケアの利点や欠点を話すことです。

その際には、欠点について咎めたりつついたりすることをしてはいけません。また、相手の悪いところに着目せず、相手の良いところを見るようにします。この部分を意識したうえでデスカンファレンスに臨みましょう。

3-2 他職種による異なる視点を重ね合わせる振り返りを意識して行う

デスカンファレンスを行う時には、まず、他職種による視点を重ね合わせて振り返っていくことが大切です。

記録物を見ながら、利用者さんについての情報共有がしっかりとできていたかの確認をします。また、連携が十分に取れていたかの確認も併せて行います。

特に、在宅療養中の自分が関わっていない時間の利用者さんの様子や、職種ごとの仕事内容や役割について、という部分は生前の合同カンファレンスでは理解しきれていない部分が多くあり、デスカンファレンスで初めて知ることができたという声は非常に多いです。

デスカンファレンスだから過去の視点なんてと思わずに、自分の行ってきた仕事について、しっかりと発言し、他職種の仕事についても理解する姿勢が大切です。

3-3 在宅医療の評価を行う

在宅医療の評価は、各職種が自身の行ってきたケアは本当に満足できるケアであったか、そのケアが適切であったかどうかというところを評価し、次につなげていけるような振り返りを行います。

在宅医療では、日頃から全職種が集まって話し合えるということがありません。そのため、デスカンファレンスの場で次の看護に生かせるように、同じようなことがあった場合の対応方法を確認、共有することが重要です。

また、病棟でのデスカンファレンスでは、患者さんへ目が行きがちですが、在宅医療においては、ご家族へも目を向けていくことが大切です。

自分たちが行ってきた医療によって、ご家族がどのような受け止めをしたか、また、ご家族がどのような思いをもって在宅医療に臨んでいたかなど、自身の行ってきた在宅医療を評価するとともに、遺族訪問で得た情報を活用して、ご家族からの在宅医療への評価も真摯に受け止めていくことが重要です。

3-4 各職種スタッフのグリーフケアを行う

各職種スタッフのグリーフケアでのポイントとして、まず、すべての職種が悩みを打ち明け、感情を表出することが求められます。

例えば、「医師や看護師を信頼している利用者さんだったので、自分は一歩下がった状態でしか関われなかったことが正しかったか悩んでいる」、「生前、看護師を信用しておらず、声掛けに悩んだ」、「ご家族に感情移入してしまい、看護師という第三者の視点が持てなかった」など、当時の自分の思いや状況を話し、他のスタッフの経験や思いを聞くことがグリーフケアへとつながっていくこととなるのです。

自分の発言は不適切ではないか、責められるかもしれないと考えず、当時および現在自分の持っていることや感情を吐き出すことがポイントです。

特に各職種のスタッフの思いを聞くことで改めてどのような思いでケアにあたっていたかを理解することができ、互いへの信頼感にもつながると考えられます 。(参照:J-STAGE 地域における多施設・多職種デスカンファレンス参加者の 体験に関する探索的研究

各職種によって吐き出された感情への理解や受け止め方は異なるかもしれませんが、決して否定せずにありのままに受け止めるようにしましょう。


4 訪問看護のデスカンファレンスの重要ポイント~後日編~

訪問看護のデスカンファレンスは、開催して終わりではありません。全ての看護師がデスカンファレンスに参加するということは職務上難しく、代表者が参加しているため、その後の対応が今後の在宅医療の発展のために非常に重要となるのです。

4-1 自分の組織に持ち帰って、組織内共有を図る

デスカンファレンスの内容は、自分の組織に持ち帰ってしっかりと共有しましょう。口頭で伝えきることが難しいのであれば、報告書を作成して配布するということも良いでしょう。

組織内で共有をすることで、組織全体において共通の認識を持つことができ、よりよい在宅医療へ発展させていくことができるからです。

デスカンファレンスの対象となった利用者さんに関わったことのあるスタッフには、ご家族からの思いも伝えてあげることで、今回参加できなかったスタッフが自身の看護について振り返るきっかけになることができるかもしれません。

また、他職種の認識を理解することができ、この点においても今後に生かすことができます。

とある研究によると「組織メンバーは、組織の一員としての役割と調和できないときジレンマを感じたり、バーンアウトに陥ったりする」といわれています。

つまり、自分の組織に持ち帰ってしっかりと共有することは、在宅医療をよりよく発展させていくことに加えて、自分の組織の結束力を深めていくことにもつながると考えられています。(参照:人間発達学研究 第8号 地域におけるデスカンファレンスの専門職役割遂行サポート機能

ぜひ、自分の中でおしまいにせずに広く組織内で共有されることをおすすめします。


5 まとめ:訪問看護の現場でのデスカンファレンス、その重要性と準備法

今後訪問看護の現場において、デスカンファレンスはますます活発に行われていくことが予想されています。

準備から実施までの流れや重要ポイントを知ることで、いざ参加者となった時に自身の行ってきた看護を振り返りながら有意義な時間を過ごすことができるでしょう。

デスカンファレンスは病棟で働いていても出席できる確率は非常に少ないものです。もしも働いている訪問看護の場でデスカンファレンスが開催されることになったらぜひ積極的に参加し、看護師としての経験値を上げていきましょう。

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