【目的別】グリーフケアに携わる看護師が読むべきおすすめ書籍4選
医療行為の枠を超えた次の時代の看護師へ、グリーフケアの実践やレベルアップのためにおすすめの書籍を集めました。
死別の悲しみを抱く人や死に臨んで絶望して悲しむ人をケアするグリーフケアの重要性は、日本では2000年前後にやっと認知されてきたばかりです。
医療者の間でも、手探りで取り組みを始めたところというのが実情でしょう。
この記事では、グリーフケアについて書かれた書籍の中から、目的別に評価が高いものを4冊選んでご紹介します。
グリーフケアに興味を持つ人がピッタリの本に出会えるように、さまざまな立場の著者が書いた本をピックアップしました。
目次
1 これからグリーフケアついて学びたい看護師なら『悲嘆とグリーフケア』
グリーフケアの研究グループやサポートグループの立ち上げを検討している看護師はもちろん、グリーフケアとはどういうものかを具体的事例とともに知りたいという看護師にも、ぜひおすすめしたい一冊が【「悲嘆とグリーフケア」広瀬 寛子 (著)】です。
医学書院:¥2,640
著者の広瀬 寛子(ひろこ)さんは、戸田中央総合病院(埼玉県)の看護カウンセリング室・室長で、専門は緩和医療における看護カウンセリングです。平成11年にわが国ではいち早くサポートグループを立ち上げて、患者さんの遺族やその悲しみに立ち会う看護師のグリーフケアに取り組んできました。
この本は、そのサボートグループの実践の中から、以下の2つのテーマについて書かれています。
- 末期のがん患者さんとその家族のサポートのあり方
- 患者さんやその家族との関わりで生じた看護師自身の悲嘆(グリーフ)のケア
この本にしばしば登場する言葉に、レジリエンス(resilience)があります。
レジリエンスとは、外部からの力で変形された物が元の形に戻る「復元力」のことです。もともとは材料工学の用語ですが、心理学では「ストレスや逆境にさらされたときの精神的回復力(立ち直る力)」という意味で用いられます。
著者は、人にはレジリエンスがあるが、一人ではその力には限界があり、人と繋がっていると思えることで大きな力になると考えます。グリーフケアとは、その繋がりをたとえ細々とでも紡いでいくことではないか、というのです。
東日本大震災では絆(きずな)が合言葉になりましたが、医療現場で日常的に起きる「死別の悲嘆」から立ち直るためにも「人と人との繋がり」がキーワードになると、著者は考えます。
この本では、看護師が対応に困ったいくつものケースが具体的に取り上げられ、サポートグループに参加した患者さんの遺族や看護師が「語り合い」の中でどのように回復し、成長したかが述べられています。
2 自分のグリーフケアが最優先の方には『永遠の別れ』
「愛する人を亡くしたら思う存分悲しみなさい」という言葉とともに見送る人の悲嘆の感情とそれが癒されるプロセスについて書かれているほんが、【「永遠の別れ―悲しみを癒す智恵の書」エリザベス・キューブラー・ロス/デーヴィッド・ケスラー (共著)】です。
日本教分社:¥ 1,925
著者の一人であるエリザベス・キューブラー・ロスは、高名な精神科医で、主著に『死ぬ瞬間』(中公文庫)があります。今回ご紹介する「永遠の別れ」は彼女が2004年に78歳で亡くなる前に書かれ遺作となった本です。
この本には、夫を亡くした妻、幼い子供を亡くした母親など、数多くの死別の事例が取り上げられています。精神科医として遺族に接した著者の目を通して、遺族の悲嘆のありさまや心の変化が克明に綴られています。
また、著者のロス博士自身も二度の流産、離婚した夫との死別、放火によって家を失った事件など、大きな悲哀を幾度も味わっており、そのときの経験も本書の土台の一つになっています。
著者は43歳のときの著作「死ぬ瞬間」で、死を前にした人は<否認⇒怒り⇒取引⇒抑うつ⇒受容>という「悲しみの5段階」を経て死を受け入れると述べて、大きな話題になりました。
その35年後に書かれた「永遠の別れ」では、死ぬ人ではなく見送る人の悲嘆の感情とそれが癒されるプロセスについて書かれています。
その中で多くの読者の心を打ったのが「愛する人を亡くしたら思う存分悲しみなさい」という言葉です。泣くのを我慢して、悲しみを押し殺していては、心が癒されて悲嘆から立ち直るプロセスは前に進まなくなるというのです。
来る日も来る日も泣いてばかりだった日々が、結局は私が立ち直るために必要な時間であったことがわかった。同時に泣くことを否定しない助けがあったことに感謝をしたい。「元気を出しなよ!」的内容ではなく、「みんな同じ思いを抱えるんだよ」という内容で、私を苦しめていた悲しみ、怒り、安堵感と罪悪感、いろんな感情を肯定してくれて、心から救われた気がした。ほっとした。(引用元:アマゾンカスタマーレビュー)
上記は、この本を読んだ多くの人が持つ感想です。愛する人を亡くして悲しみに心が押しつぶされそうになっている人に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
3 緩和ケアでの患者さんの接し方に悩んでいる看護師には『死を前にした人にあなたは何ができますか?』
死を前にした人に対し、「苦しみを抱えている人にとっては『わかってくれる人、共に味わってくれる人がいる』と感じられることが、なにより大事」とグリーフケアの本質をついた解説をしてくれているのが【「死を前にした人にあなたは何ができますか?」小澤 竹俊 (著)】です。
医学書院:\2,200
著者の小澤竹俊(たけとし)さんは、緩和医療の専門家で、横浜甦生病院のホスピス勤務を経て2006年に「めぐみ在宅クリニック」を開院した医師です。2015年には「エンドオブライフ・ケア協会」を設立して、人生の最終段階の人に向き合い、対応できる人材育成を行なっています。
この本では、ホスピスで患者さんがどのような生活を送り、どのような過程で死を迎えるかが述べられ、医療者は患者さんの最後の日々を平穏な気持ちで過ごすためにどのような介護をしたら良いかを、介助テクニックも含めて具体的に述べたものです。
この本のテーマは、終末を迎えた患者さんの尊厳を守るために介護者は何ができるかですが、しばしば文中に登場する「無力」という言葉は、このテーマへの著者の自問自答の様子をよく物語っています。
- 「いろいろ学び、自分の無力さに苦しんだ結果、『無力でよいのだ』と気づいた」
- 「患者さんさんの問題をすべて解決することではなく、無力な自分を受け入れ、医者としてではなく一人の人間として関わり続ける事が本当に大事な事」
- 「たとえ無力でも、いや無力だからこそ、患者さんさんの言葉をきちんと聴き、共に苦しみを味わおうとする事が出来る、と思い至った」
緩和医療では医師も看護師も「無力」という思いを抱くことがしばしばあります。
医療者はそこで自分の仕事の意味に懐疑的になり、悩まざるを得ないのですが、著者は無力を自覚した上で、医療者の仕事の意味を次のように述べています。
- 「苦しみを抱えている人にとっては『わかってくれる人、共に味わってくれる人がいる』と感じられることが、なにより大事」
- 「『つらい』『つらいのですね』と、ただただ、相手の言葉をていねいに反復して肯定も否定もしない。すると相手は『わかってもらえた』と感じ、気持ちが落ちつく」
4 自分ががんになったとき、わが子にどう接するかで悩んでいる人には『がんになった親が子どもにしてあげられること』
幼い子どもの「死んじゃうの?」などの直裁で答えにくい疑問にも、著者の明確な答えが示されているのが【「がんになった親が子どもにしてあげられること」大沢 かおり (著)】です。
ポプラ社:\1,430
著者の大沢かおりさんは、東京共済病院がん相談支援センターの専任ソーシャルワーカーで、2008年にがんになった親とその子どもをサポートする「Hope Tree」を設立しています。
この本は、対象になる子どもの年齢を0~3歳、4~5歳、6~11歳、12~18歳など、発達段階に分けて、親ががんになったことをどう伝えれば良いかを書いています。
著者は、親が子どもにがんのことを伝えないと「子供が自分を責めることにつながる危険性」があると述べています。また、親や周囲の様子から子どもは何かを感じて不安を抱いています。「不安の正体をはっきりさせないと問題の先送りになる→その問題が大きくなる可能性が高くなる」とも述べています。
この本を読んだ読者の感想に次のようなものがあります。
癌の転移がわかったとき高校一年と小学五年の子供にどうしても伝えられなかった。本当に動けなくなるまで口にしてはいけないと思った。子供を苦しめる時間は短いほど良いと思った。しかし、転移の痛みから涙が溢れるまでになった時隠しきれないと思い現状を伝えるにいたった。
それで良かったのかいつもビクビクしてきたこの2年。この本に救われたような気がした。もし伝えていなければ私は逆に子供たちを傷つけていた、(中略)
子供は実際確実に成長した。私が絶対的に守ってあげなければ壊れてしまうと思っていたのに、真実を話してからは逆に自分が守られていると実感する。(引用元:アマゾンブックレビュー)
また、親の立場ではありませんが、緩和ケア病棟に勤務している看護師はこの本を読んだ感想を以下のように述べています。
「がん患者さん様が子供にしてあげられる事を一緒に考えることがありました。なかなか良いアドバイスが出来なかったように思い 何か学び得たいと思い購入しました。この本は とても参考になりました」(引用元:アマゾンブックレビュー)
5 まとめ
この記事で紹介した4人の著者は、それぞれ次のような立場にあります。
- 終末期の患者さんと家族のサポートグループを指導する看護カウンセラー
- 死別の悲しみから心に傷を受けた人を長年にわたって治療してきた精神科医
- ホスピス勤務を経て在宅医療の医院を開業した医師
- 病院のガン相談・支援センターのソーシャルワーカー
この中に、今あなたが抱えている問題や、知りたいテーマにピッタリの本があれば、ぜひ手に取って読んでみてください。
コメント