【訪問看護ステーションのオンコールの実態】新型コロナウイルス流行前後の比較調査
2020年4月16日に、全国に緊急事態宣言が発令され、徐々に解除はされていますが、新しい生活様式が提言されています。未曾有の事態の中、医療現場は緊迫した状態が続いている中で、軽症者は在宅療養を強いられています。
在宅医療領域において、患者さんと直接接触する機会が多く、かつ医療行為を実施する必要がある場合、訪問看護を利用することになります。看護師が在宅療養患者の自宅に訪問し、その患者さんの病気や障害に応じた看護を行うこの業態は、主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行い、健康状態の観察から服薬管理、在宅での看取りまで幅広い業務を行います。
今回はコロナウイルス下における訪問看護ステーションでのオンコールの実態を調査しました。調査は、逼迫した在宅医療の状況の中で、コロナウイルスが蔓延する前の2020年2月と緊急事態宣言後の2020年4月のそれぞれ一か月間のオンコール回数を比較形式で行いました。
結果としては2月は61件の夜間早朝の緊急連絡に対して、4月は58件とほぼ変わりませんでした。その内、緊急訪問が必要な件数は、2月は10件、4月は6件と減少していました。調査の結果から、コロナウイルスが蔓延する中でも、日々の訪問看護の提供が必要であることが分かりました。患者さんは自宅で不安になり、通常と同じ程度の緊急訪問も発生することが分かったからです。是非見えない不安や、事実とは異なる情報ではなく、現実を捉えて普段の在宅療養や訪問看護の従事に対応頂きたく、今回この記事の作成を行いました。
1 訪問看護におけるオンコールとは
オンコールとは、患者さんの急変時の訪問に備え、夜間や休日といった勤務時間外に呼出に応じられるように待機することをいいます。
オンコールは勤務時間という扱いは一般的にはされていませんが、電話があればいつでも訪問に行けるように待機している必要があります。
訪問看護ステーションにもよりますが、常勤看護師の場合、オンコール必須としているところがほとんどですが、回数を希望に応じてくれたり、オンコールの無いステーションもあります。
2 緊急事態宣言後でも夜間の不安増強はない
都内にある「訪問看護ステーションリカバリー」では、500名以上のご利用者様と訪問看護の契約を結んでおります。今回営業時間外である、午後6時~翌朝9時までのオンコールの回数を2020年2月と4月で比較を行いました。
<2020年2月通話内容> <2020年4月通話内容>
2月は61件、4月は58件の時間外のオンコール電話がありました。
新型コロナウイルスが蔓延し、在宅生活が不安視される状況下においても、訪問看護が日々提供されることで夜間の不安が増強しないことがわかりました。
同ステーションが運営する、リカバリー高知においては、150名以上のご利用者様と訪問看護の契約を結んでおります。東京都同様時間外のオンコール電話は、2月は12件、4月は9件という結果になり、地方拠点においても同様の結果となりました。
3 夜間緊急訪問はコロナウイルス影響下でも減少
訪問看護において、夜間早朝の緊急電話では、80%近くが内服薬に関してや、発熱時の対応方法などの相談などがあり、電話で解決することが多いです。しかし、転倒や急変、急な腹痛などで実際にご自宅に訪問するケースもあります。
<2020年2月実働> <2020年4月実働>
電話相談と同様、実働件数で比べても、2月は10件、4月は6件の実働稼働という結果になりました。
オンコール内容は訪問看護ステーションの利用者様の特性により異なると考えられますが、ターミナルの利用者様が多いステーションではエンゼルケアや急変、精神疾患の方が多いステーションでは、眠れない・不安で話を聞いてほしいといったオンコールがあります。今回の集計概要でも、2月と4月で実働理由に関して大きな変化もなく、80%近くが電話で解決する問題でした。
リカバリー高知でも同様の傾向であり、2020年2月の実働は4回、4月は2回という結果になりました。地域差関係なく、訪問看護の実際では、コロナウイルス下において発熱で対応するなどの状況はありませんでした。
4 まとめ
新型コロナウイルスが蔓延する中、在宅に帰りにくい、医療が崩壊していると叫ばれている現状があります。2020年5月には、日本看護協会において、休職中や潜在看護師に対しても復帰を促す事態に陥っております。しかし、実際の在宅医療の現場においては異なった状況があるのも事実です。
感染予防対策は勿論ですが、日々の健康管理や、主治医との連携により、不安が増強することなく、普段に近い生活が送れている結果となりました。新しい生活様式が提言されている中で、まだまだニッチな世界である在宅療養の現場を知るきっかけになれば幸いです。
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