諦めるしかない?看護師が患者さんのセクハラから身を守る方法はこれ!
看護師として働いている人の半数以上が、一度は患者さんからのセクハラ被害にあっているということをご存知でしょうか。
この記事を読んでいる看護師の方も、被害にあった(あっている)人がいるかもしれません。
しかし、実際に被害にあっても患者さん相手に注意をしたり、誰かに相談することをためらってしまう人もおおいのではないでしょうか。
今回は看護師によくあるセクハラ被害について内容と対策を解説します。
目次
1. 看護師が被害に遭いやすいハラスメント5種類
数ある職業の中でも、看護師を始めとした医療や介護福祉系の職場はハラスメント被害が発生しやすいと言われています。
その理由は3つあり、①閉鎖的環境、②上下関係がはっきりしている、③他者との距離が密接であることが挙げられます。
近年、ハラスメントも細分化され、実際に裁判まで発展した事例では多額の賠償責任など厳罰化の傾向が見られるようになりました。
しかしながら、看護師のハラスメント被害の多くは上記3つの理由から明るみになることは多くありません。
ここでは、何がハラスメントなのか、言動事例を含めて確認してみましょう。
1-1. 医療現場で発生しやすいハラスメントの内容一覧
ここでは医療現場で特に発生しやすいハラスメント5種類の内容について表にまとめました。
「もしかしたら自分も被害に遭っているかも?」と思っている人だけでなく、指導する立場にある人も知らずに自分が加害者になっているかもしれません。
ハラスメント種類 | 内容 / ハラスメントとされる言動 |
セクシュアルハラスメント | 性的な言動とは、性的な内容の発言および性的な行動を差します。 対価型・環境型・制裁型・妄想型の4つに分かれます。 |
パワーハラスメント | パワーハラスメントとは、職場において、地位や人間関係などの優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて、身体的・精神的苦痛を与える行為や個の侵害、人間関係の切り離し、過度/過少の要求などにより職場環境を悪化させる行為です。 |
マタニティハラスメント | マタニティハラスメントとは妊娠・出産したこと、育児のための制度を利用したことなどに関して、上司・同僚が就業環境を害する言動をおこなうハラスメントです。 マタハラは、解雇や減給、雇止め、上司や同僚からの嫌がらせも該当します。 |
アルコールハラスメント | アルコールハラスメントとは飲酒の強要など酒席の場での迷惑行為が該当するハラスメントです。 酔っぱらって周囲を不快にする、迷惑をかけるという印象がありますが、無理やりお酒を飲ませる行為もハラスメントに該当します。 |
モラルハラスメント | モラルハラスメントは、パワハラやセクハラ、マタハラなどに該当しないもの(意図的に無視する行為や、常識を挙げて相手を非難する行為)が該当する場合が多いといえます。 例)「普通ならできる」などの自分の中の常識を押し付ける |
1-2. セクシュアルハラスメント(セクハラ)は大きく4つに分類される
さて、表では5つのハラスメントについてざっくり説明してきました。その中でも看護師の方が相談しづらく、対応に困るのがセクハラ被害ではないでしょうか。
セクハラの種類 | 内容 | 事例 |
対価型セクシャルハラスメント | 性的な言動を拒否したために労働条件に不利益を受けるセクハラ | ・「昇進させてあげるから」等と執拗に2人きりでの食事会を迫る |
環境型セクシャルハラスメント | 性的な言動を受けたために就業環境が害され、能力の発揮に支障をきたすセクハラ。 視覚型・発言型・身体接触型の3つに分類される | ・結婚・子どもの有無のような私生活にかかわることを執拗に質問する |
制裁型セクシャルハラスメント | 性差別的な価値観に基づき、女性の昇進や活躍を否定・抑圧するセクハラ。 | ・女性は育児に専念すべきだという自分の価値観を強く押し付け業務を外したのに、外れたことに対し「やる気がない」などの叱責をする |
妄想型セクシャルハラスメント | 相手が自分に好意があると勘違いし、しつこく付きまとうセクハラ。 | ・非常識な量のメールや電話での連絡 |
患者さんや医師、同僚から「○○さんより可愛い」や身体的特徴についての発言により、いじめの対象になってしまう例も少なくはありません。
クリニックでは経営者である男性医師にしつこく誘われたり、権力を翳して性的行為を求められるケースもあります。
これは男性看護師でも同じで、セクハラ被害に遭うことがあります。
「男なんだからしっかりしろ」といった性差別や、恋人・配偶者とのプライベートなことを執拗に尋ねられたり等、性別に関係なくセクハラは発生します。
2. よくある患者さんからのセクハラ被害対応策
ここでは患者さんによるセクハラ被害の対応方法について紹介します。
2-1. 看護中や身体介助での過剰な接触や発言
車椅子の移乗で抱きつかれて離してもらえない、恋人や配偶者の有無についてしつこく尋ねられる、清拭などで必要以上に局部や裸体に触れさせる等のセクハラ行為をしてくる患者さんに一度は遭遇した人もいるのではないでしょうか。
このような患者さんには次の3つを試してみましょう。
1. 毅然とした態度で注意する
2. 自分だけで対応しようとしない
3. 上長や医師から注意してもらう
環境型セクハラをしてくる人は、抑制しやすそうだと判断した相手だと誰にでもセクハラ行為をしてきます。よくナースステーションで噂されがちな「困った患者さん」の代表格とも言えますね。
こうした患者さんを適当にやりすごせる人もいれば、セクハラ的言動がトラウマになって業務に支障をきたす人もいます。大切なのは「チームで労働環境を守ること」であり、不要な我慢を暗黙の了解にすることではありません。
特に環境型セクハラをしてくる人は、自分より強い立場の人に弱い傾向にあります。注意しても改善されない場合は男性看護師や担当医師からも注意してもらうよう相談しましょう。
2-2. 特定の看護師に対し、連絡先をしつこく尋ねてくる
しつこく連絡先を尋ねたり、迫ったりしてくる患者さんに困っている人もいるのではないでしょうか。
このとき重要になるのが「患者さんと医療従事者という明確な線引きを貫き通す」ということです。
医療機関というのはネガティブな気分になりやすい環境にあり、その中で自分に対して親身になって話を聞いてくれたり、介助してくれる看護師を癒やしに感じる人は多いでしょう。
それが感謝や、入院中のささやかな思い出になればいいのですが、中には「あの看護師は自分に好意があるはず」と思い込み、しつこいつきまといになってしまうケースもあります。
こういった、妄想型セクシュアルハラスメントは近年増加傾向にあり、真摯に患者さんと向き合おうとする看護師ほど相談しづらいのが特徴的と言えるでしょう。
ここで注意してほしいのが、後で拒否設定にすればいいからとその場しのぎで連絡先を教えたり、「退院できたら」等の叶えるつもりもない裏切ることを前提とした言動を絶対にしないということ。
人から寄せられた好意を無下にすることに罪悪感を抱く人もいるかも知れませんが、曖昧な態度は相手を傷つけるだけでなく、周囲を巻き込んだ問題に発展してしまう可能性もあります。
3. セクハラ被害に遭ったときの相談先
セクハラ被害に遭った場合、必ず第三者に相談しましょう。
主な相談先は次の3つです。
・同性で歳の近い看護師
・先輩看護師や上長・医師
・弁護士
セクハラ行為の恐ろしさは、被害者側が助けを求めづらいところにあります。
その被害の多くは密室であったり、加害者と2人きりというシチュエーションに加え、相手よりも立場的に不利であることが多々あります。
加害者も相手を見極めてセクハラ行為に及んでくるので、周囲の評価や人望が厚いことも少なくはなく、誰かに相談するにあたってはまずは証拠を揃えるようにしましょう。
3-1. 同性で歳の近い看護師
加害者の特徴として、自分よりも権力や立場の弱い相手をターゲットにする傾向があります。
そのため、意外と表面化していないだけで同期や1〜2年先輩の看護師も同じ人からセクハラ被害に遭っていることがあるかもしれません。
被害に遭って早い段階であれば立場的に近い人の方が相談しやすいこともありますし、患者さん相手であれば一緒に入室してセクハラ行為を予防することにも繋がります。
3-2. 先輩看護師や上長・医師
先輩看護師や上長、ときには医師など自分よりも立場の強い同僚に相談してみるのもいいでしょう。
特に、何かしらの役職についている上長であればハラスメント等の対応マニュアルや研修を受けている場合が多いため、病院や施設・企業の規則に準じた対応をとってもらえます。
3-3. 弁護士
患者さんのような一時的な相手ではなく、同じ職場の上長・医師のように付き合いが長く続くような相手で改善の見込みが無い場合は弁護士に相談しましょう。
理由としては、職場内でセクハラ行為に及んでくる加害者は周囲にバレないという自信があったり、職場の雰囲気として「仕方ないこと」と諦めている傾向にあるからです。
また、雇用主側は労働環境を整える義務があり、男女雇用機会均等法に抵触する行為を見過ごしている場合は賠償責任等が生じることがあります。
こうした組織的な部分に対して決着をつけたい人は一度弁護士の無料相談を試してみましょう。
4. まとめ
入院施設のある医療機関で特に起こりやすい患者さんからのセクハラ被害。
セクハラをしてくる相手は往々にして「あなただから」そういった言動をしてきます。
他のハラスメント行為と違い、セクシュアルハラスメントは被害者側が口にすることをためらったり、苦痛を伴う行為もあります。
「ハラスメント」というと嫌がらせ行為のように感じられることもありますが、程度によっては傷害事件や強制猥褻行為といった立派な罪状になり得ることは被害者であっても忘れてはいけません。
特に看護師はどんなに嫌な思いをしても、苦手な相手であっても看護しなければなりません。患者さんや医師からすれば、看護師は自分の世話をしてくれる下の立場の人間と思う人もいるのが現実です。
「患者さん相手に強く言えない!」「これ以上立場的に追い詰められたくない」と泣き寝入りをしてしまう人も多いですが、一度毅然とした態度で「やめてください、セクハラです」と拒絶することから始めましょう。
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