インフォームドコンセントとは?患者や家族が知っておくべき重要性と看護師の役割
入院中の親族を思い、病気について色々勉強はしているけれど、医師からインフォームドコンセントを実施すると言われて、聞きなれない言葉で知識も乏しく困ってしまったことはありませんか?
また、看護師をしていると、医療職であるがゆえに親族や知人からインフォームドコンセントについて質問を受けることはありませんか?
確かに看護師は医師と患者さんの間に立ってサポートはするけれど、インフォームドコンセントは主に医師が行うもの。理解不足の部分はありませんか?
この記事ではインフォームドコンセントの意味や目的を徹底解説していきます。この記事を読めば医療職の方はいつ質問されても応えることができるようになり、患者さんのご家族は突然インフォームドコンセントを実施すると言われてもしっかりと準備をすることができるようになります。
言葉自体広がってきていると思いますが、まだまだ医療の世界の当事者でないとなじみが薄い言葉だと思います。インフォームドコンセントの根幹は、医師と患者側の医療処置に関しての共通理解に基づく信頼関係の構築です。
このことについて、以下で解説していきたいと思います。
目次
1.インフォームドコンセントの2大要素は「説明」と「承諾」
インフォームドコンセントという言葉は日本看護協会によれば、以下の通り定義しています。
インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。(引用元:インフォームドコンセントと倫理)
インフォームドコンセントは、ただ単に病状を告げ、同意書をとることではありません。医療従事者が治療や手術に関する情報を患者に提供し、患者が十分な理解を得た上で、自己決定権を行使し、治療や手術に対する同意をすることを指します。インフォームドコンセントを行うことで、患者は自己決定権を行使し、自分自身の治療や手術に対する選択肢を考えることができるようになります。また、医療従事者は、患者に対して責任ある医療を提供することができるようになります。
1-1.患者の自己決定権と人権について
インフォームドコンセントは、患者の自己決定権と人権を保障することが目的です。患者は、自分自身の健康に関する情報を受け取る権利を有しています。また、自己決定権は、医療行為に関する意思決定についても保障されています。つまり、患者は医療行為に対して自己決定を行う権利を有しているということです。
1-2.インフォームドコンセントの意義と必要性
インフォームドコンセントを行うことで、医療従事者と患者との間に信頼関係を築くことができます。また、患者が自分自身の医療に関する情報を持つことで、自分自身の医療について理解を深め、より積極的に医療に参加することができるようになります。また、患者が自己決定を行うことで、医療行為に対する責任も負うことになります。
1-3.あまり命にかかわらない、治療の選択によって結果があまり変わらないという場合はインフォームドコンセントが省略されることもある
本来インフォームドコンセントはいかなる場合でも、やらなければならないことになってきている事は事実です。
あまり命にかかわらない疾患に関しては正しい意味でのインフォームドコンセントは行われていないことも多いようです。これは患者がその事によって治療機会を失ったり再起不能になったり、かなり長期間の休養や治療を必要とする状況になったりすることが殆どない場合かと思います。
つまり、それほど重篤な副作用は起らない、治療方法の選択があまりない、治療方法の選択によって治療結果がそれほど大きく変化することはない等の理由によって充分な説明が無くても医師と患者の信頼関係は崩れないということかと思います。
風邪などのときでもインフォームドコンセントは適用されるため、どんな小さなことでも、気になることがあれば質問して納得させてもらう分には全然構わないということです。
ただし、インフォームドコンセントをもっと望むならば医学的知識もある程度患者側も必要になってくるでしょう。
2.インフォームドコンセントのプロセスと実際のケースの例
2章ではインフォームドコンセントのプロセスを実際のケースとともに解説します。
2-1.インフォームドコンセントのプロセス
インフォームドコンセントのプロセスは、以下のような手順で行われます。
- 患者に対して、治療や手術に関する情報を提供する。
- 患者が提供された情報を理解することを確認する。
- 患者に対して、治療や手術に対する選択肢を説明する。
- 患者が自分自身の医療に対して、どの選択肢を選択するかを決定する。
- 患者が自分自身の決定に対して同意する。
2-2.インフォームドコンセントを必要とする医療行為や状況の例
インフォームドコンセントを必要とする医療行為や状況の例としては、以下のものがあります。
- 手術
- 治療
- 検査
- 薬の処方
3.ケースとともにインフォームドコンセントのプロセス解説
ある患者が心臓手術を受けることになり、医師から手術の目的や手順、リスク、副作用などについての説明がありました。手術は高度な専門知識が必要で、高いリスクがあることから、患者は手術の必要性やリスクについて不安を感じていました。医師は、患者の質問に丁寧に答えるとともに、患者が理解しやすいように説明を補足しました。
患者:手術はリスクがあると聞いていますが、本当に必要なのでしょうか?
医師:はい、この病気に対して最も効果的な治療法の一つが手術です。また、手術はリスクがあることも事実ですが、手術を行わない場合、この病気が進行し、重大な合併症を引き起こす可能性があります。
患者:手術後の生活にはどのような影響があるのでしょうか?
医師:手術後は、一定期間の安静が必要です。また、手術によって心臓の機能が一時的に低下することがあり、リハビリテーションが必要になる場合もあります。詳しい内容については、リハビリテーション担当者と話し合うことができます。
患者の家族も、手術について理解するために、医師や看護師に質問をすることができます。
家族:手術中に何か予期しないことが起こった場合、どのように対処されますか?
医師:手術中に何か予期しないことが起こった場合でも、迅速な対処ができるよう、手術チームは常に待機しています。また、手術中に何か異常を感じた場合には、手術を中断することもあります。その場合には、別の治療法を検討することになりますが、患者の状態に合わせて治療法を選択することができます。
以上のように、患者や家族が医療に関する情報を理解するためには、質問することが重要です。医療従事者は、患者や家族の質問に丁寧に答え、分かりやすい説明をすることで、患者が自己決定権を行使できるよう支援することが求められます。
また、医師や看護師は、患者や家族に対して、医療行為に関する情報を提供するだけでなく、患者や家族が自分たちの意思を表明しやすいように配慮することも必要です。例えば、患者が話しにくい内容については、専門のソーシャルワーカーや心理カウンセラーに相談することができます。
医療行為において、インフォームドコンセントは患者が自己決定権を行使するための基本的な権利です。医療従事者は、患者に対して丁寧に説明し、患者が理解できるように支援することで、安心して治療に参加できるようにすることが求められます。
4.医師とのコミュニケーションで質問するべきポイント
前の章で患者や家族は医師に質問することが大事と書きました。そこでこの章では質問するべきポイントを解説していきます。家族が医師とのコミュニケーションで質問するべきポイントとしては、以下のものがあります。
- 医療行為の目的や手順について、詳しく説明してもらう。
- 手術や治療のリスクや副作用について、詳しく説明してもらう。
- 代替手段やオプションがある場合について、説明してもらう。
- 患者が治療や手術に対してどのように参加することができるか、アドバイスをもらう。
4-1.医療行為の目的や手順について、詳しく説明してもらう
医療行為の目的や手順について、詳しく説明してもらうことで、患者や家族は医療行為について理解を深めることができます。また、医療行為に対する不安や疑問を解消することができます。
4-2.手術や治療のリスクや副作用について、詳しく説明してもらう
手術や治療のリスクや副作用について、詳しく説明してもらうことで、患者や家族はリスクや副作用について理解を深めることができます。また、リスクや副作用が生じた場合の対処方法や治療方針についても説明してもらうことが必要です。
4-3.代替手段やオプションがある場合について、説明してもらう
代替手段やオプションがある場合について、医師から説明を受けることが必要です。患者や家族は、代替手段やオプションを知ることで、自己決定を行うために役立てることができます。また、代替手段やオプションによっては、医療行為を行わなくてもよい場合もあるため、医師から詳しく説明を受けることが重要です。
4-4.患者が治療や手術に対してどのように参加することができるか、アドバイスをもらう
家族は、患者が治療や手術に対してどのように参加することができるかについて、医師からアドバイスをもらうことができます。患者が医療に積極的に参加することで、治療や手術の効果を高めることができます。
5.患者側が医師とのコミュニケーションで主張することができる権利について
患者側が医師とのコミュニケーションで主張することができる権利としては、以下のものがあります。
- 治療の拒否権
- 治療方針についての意見表明権
- 治療中の情報開示権
患者は、自己決定権を有しているため、治療の拒否権を行使することができます。また、治療方針についての意見表明権も有しており、医師と共同で治療方針を決定することができます。さらに、治療中の情報開示権も有しており、自分自身の健康状態に関する情報を開示してもらうことができます。
6.自己決定権の重要性と患者の立場で医療に参加する方法
インフォームドコンセントを有意義なものとするためには、医療者側、患者や家族が事前にしっかり準備する必要があります。
6-1.自己決定権の重要性についての説明
自己決定権の重要性は、患者の意思決定に対する尊重にあります。患者が自己決定を行うことで、医療行為に対する責任を負うことになりますが、同時に、自分自身の健康に関する情報を受け取ることができます。自己決定権を尊重することによって、患者と医師の信頼関係が構築されていくため、医師や看護師とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
6-2.患者の立場で医療に参加する方法についてのアドバイス
患者の立場で医療に参加する方法としては、以下のものがあります。
- 医療に関する情報を収集すること。
- 医療に関する疑問や不安を医師や看護師に相談すること。
- 医療において自分自身が望む結果を明確にすること。
患者は、自分自身の健康に関する情報を収集することで、医療に参加することができます。インターネットや医療機関のパンフレットなど、様々な情報源から医療に関する情報を収集し、自己決定のための知識を身につけることが重要です。また、自分自身の意見を持ち、医療に参加することも大切です。医師とのコミュニケーションにおいても、自分自身の意見を伝えることで、最適な医療を受けることができます。
7.インフォームドコンセントに関係する法令と看護師の役割
最後にインフォームドコンセントに関連する法令と看護師の役割についてみていきましょう。
7-1.インフォームドコンセントに関係する法令
インフォームドコンセントに関係する法令としては、患者権利法や医療法、看護師法などがあります。患者権利法によって、患者は自己決定権を保有しており、医療従事者は患者の自己決定権を尊重することが求められます。医療法によって、医療従事者は、医療行為に関する十分な説明を行うことが求められます。また、看護師法によって、看護師は患者の権利を尊重し、安全で適切な看護を提供することが求められます。
7-2.看護師の役割と責任
看護師は、医師と同様に、インフォームドコンセントの重要性を理解し、患者が自分自身の医療に関する情報を理解し、自己決定権を行使することを支援する役割を持ちます。看護師は、患者と家族が医療に関する情報を理解できるように、専門的な知識や情報を提供することが求められます。また、看護師は、患者が自己決定権を行使できるように、医師とのコミュニケーションを支援することが重要です。
7-3.患者と家族にインフォームドコンセントを提供するための看護師の役割について
患者と家族にインフォームドコンセントを提供するために、看護師は以下のような役割を担います。
- 医師からの説明の補足や患者の疑問に答えること。
- 患者の状況に応じた情報提供の方法やタイミングの調整を行うこと。
- 患者が理解しやすいように、わかりやすい言葉や図を用いた説明を行うこと。
- 患者が疑問や不安を持った場合には、適切なサポートを行うこと。
これらの役割を通じて、看護師は患者と家族がインフォームドコンセントを理解し、自己決定権を行使することができるようにサポートすることが求められます。
8.まとめ:インフォームドコンセントとは医療者と患者間の信頼関係構築プロセスである
いかがでしたでしょうか。インフォームドコンセントとは、医療者側と患者側間の信頼関係を構築するプロセスであり、その目的達成のための2大要素は「説明」と「承諾」です。
そして、「承諾」は患者側の自己決定に基づくものであるため、医師は自己決定できるだけの十分な理解を得る説明をしなければなりません。
患者側は十分に理解できるまで医師に説明を求める権利があるし、医療職側と患者側のコミュニケーションは対立ではなく、信頼を構築するプロセスであるということ、そして、そのプロセス全体をインフォームドコンセントと呼ぶんだということです。医師や看護師がインフォームドコンセントを提供することが求められます。患者や家族は、自分自身の医療に関する情報を収集し、医師や看護師とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。また、看護師は、患者や家族に対して、分かりやすく情報を提供し、自己決定権を行使するための支援をすることが求められます。
この記事がインフォームドコンセントを理解し、実際に病院でインフォームドコンセントを行う際の参考になれば幸いです。
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