看護師の適性検査はどんなことをするの?3つの種類と検査内容を徹底解説!
看護師として働くためには看護師の国家試験に合格して看護師資格を取得すること以外に、就職先・転職先の採用試験を通過しなければなりません。
採用試験には筆記試験や面接などがありますが、「看護師としての適性があるか」「職場にマッチしている人材か」といった判断をする材料として、多くの職場が適性検査を実施しています。
適性検査で落とされてはとてももったいないです。適性検査には事前に準備しておいた方が良いものもあります。
この記事では、看護師が受ける可能性のある適性検査にはどのようなものがあるのか、適性検査の種類と実施する目的や検査の概要、例題について解説します。適性検査で確認できることを理解し、就職活動や転職活動の前に準備して、自分が行きたい就職先・転職先の内定を勝ち取りましょう!
目次
1. 看護師の適性検査は3種類
適性検査にはさまざまな種類がありますが、看護師の就職や転職の際には「Y-G性格検査」「クレペリン検査」「SPI3」の3つの種類のいずれかを実施することが多いと言われています。
では、これらの適性検査では、受けた人の性格や特性の傾向をどのように判断するのでしょうか。ここからは、それぞれの検査を実施する目的や、各検査の内容について詳しく見ていきましょう。
2. 質問に答えていくY-G性格検査
Y-G(矢田部-ギルフォード)性格検査とは、「人前に出ることが苦手」「他人の世話をすることが好きである」といった簡単な内容の質問に答えることで、回答者(受検者)の性格の傾向や特性について客観的に判断するために使用される適性検査です。
Y-G性格検査は、アメリカ・南カリフォルニア大学の心理学教授であったギルフォード(Guilford)教授によって考案されました。現在日本で利用されているY-G性格検査は、京都大学の矢田部(Yatabe)教授が日本の文化や環境に合うように改変したものです。
Y-G性格検査では、全120問の質問に答えることで、人の性格を形づくる12個の因子の強弱を測定できます。
■Y-G性格検査で測定する12個の因子(尺度)
尺度 | 性質 |
D尺度 | 【抑うつ性】 |
C尺度 | 【回帰的傾向】 |
I尺度 | 【劣等感】 |
N尺度 | 【神経質】 |
O尺度 | 【客観性】 |
Co尺度 | 【協調性】 |
Ag尺度 | 【攻撃性】 |
G尺度 | 【一般的活動性】 |
R尺度 | 【呑気さ】 |
T尺度 | 【思考的外向】 |
A尺度 | 【支配性】 |
S尺度 | 【社会的外向】 |
では、これらの12個の因子からどのようなことがわかるのでしょうか。ここでは、Y-G性格検査で判断できる4つの特性について簡単に見ていきましょう。
2-1. 情緒特性:心の安定性がわかる
Y-G性格検査では、次のようなポイントを総合的に判断し、回答者が情緒面で安定しているかどうか確認ができます。
- 抑うつ感情を抱きやすいか
- 気分が変化しやすいか
- 心配性か
- 自分の経験だけで物事を認識しやすい傾向があるか
- 人や物事に対して不信や不満といった感情をもちやすいか
人材を採用したり配属を考えたりする上で、気持ちが安定しているかどうか、環境によって情緒にムラがないかどうかといった情緒面の特性を知ることは非常に重要です。
2-2. 人間関係特性:社交性・協調性がわかる
Y-G性格検査では、次のような観点から「社交的な性格か」「協調的な性格か」といった人間関係における特性を判断できるとされています。
- 他人と広く付き合えるか(社交性の有無)
- 気軽に他人と接することができるか
- 他人に劣等感を抱きやすいか
- 自分の経験だけで判断せず相手に合わせて物事を考えられるか(協調性の有無)
- 人間関係における感受性の傾向
- 他人に不信感や不満感をもちやすいか
看護師という職業は、担当の患者さんをはじめとして、同じ職場で働く看護師や医師などといった医療従事者、患者の家族、福祉関連の仕事に従事されている方など、人と接する機会が多い仕事です。
2-3. 行動特性:積極性がわかる
Y-G性格検査では、回答者が「積極的な性格か」「消極的な性格か」といった行動特性の傾向も判断ができます。積極性の高い方は、活動的で仕事もてきぱきとこなす方が多いため、職場でも重宝されるでしょう。
一方、「消極的な傾向が強いからダメ」というわけでもありません。適性検査の目的は職場に合った人材を採用するための判断材料にすることです。仕事の内容や職場の雰囲気、一緒に働く同僚たちの性格の傾向、担当する患者さんの性格の傾向などを考慮し、控えめな性格の方のほうが適している職場もあるため、自分の性格に合った職場に就職したい方は正直に回答することが重要です。
2-4. 知覚特性:主観性・客観性がわかる
Y-G性格検査では、回答者が物事を判断するときの主観性・客観性の傾向の強さを判断できます。主観性が強い方は思い込みが強いタイプであり、空想的になりがちなタイプでもあります。一方で、客観性が高い方は物事を客観的に見る能力が高く、思考も現実的であることが多いとされています。
Y-G性格検査を行うことで、「情緒特性」「人間関係特性」「行動特性」「知覚特性」の他に、「リーダーシップ傾向」や「仕事への姿勢」「集団への適応性」といった性格特性がわかります。病院やクリニックといった採用側は、検査の結果を総合的に判断し、「採用してもよい人物かどうか」「採用するのであればどの部署に所属するのがよいか」といったことを考える判断基準とするため、自分に合った職場に就職したい方は、自分をよく見せようと回答するのではなく、正直な気持ちで回答することが大切です。
3. 単純作業を行うクレペリン検査
クレペリン検査とは、単純な計算を一定時間繰り返して行い、その結果から受検者の性格や作業を行う能力、行動の傾向などを総合的に測定する検査です。
人間は単純作業を続けて行うと、時間の経過ともに作業効率が変化し、その変化の傾向は人によって異なるといわれています。この単純作業の効率と性格・行動面の特徴との関係性は、20世紀初めにドイツの精神医学者であるエミール・クレペリン博士によって見いだされました。クレペリン検査(内田クレペリン検査)とは、1920年代に日本の心理学者である内田勇三郎博士がクレペリン博士の知見をもとに完成させた適性検査です。
クレペリン検査では、「1桁の足し算を1分間ごとに行を変えて行う」という作業を、休憩を挟んで合計30分間(前半15分・後半15分)行い、全体の作業量(計算した量)や1分間ごとの計算量およびその変化、正答数などから、受検者の能力や性格、行動する際の特性を判定します。ここでは、クレペリン検査において受検者の特性を判定する要素となる「計算の処理速度」「作業曲線」「処理の正確性」といった3つの側面について簡単に見ていきましょう。
3-1. 計算の処理速度(発動性):仕事の処理能力がわかる
クレペリン検査における計算量(作業量)は仕事の処理能力に関連するといえます。クレペリン検査は、1桁の数字の足し算を繰り返すという単純な検査であり、高度な知識は必要とされません。計算の処理速度の速さから発動性(物事への取り掛かりのよさ・仕事への慣れ)の強弱を見ていきます。
■発動性の強弱とそれぞれの長所・短所
発動性 | 長所 | 短所 |
強い | 慣れがはやい・素直・気軽 | 先走りやすい・軽はずみな行動をとりやすい |
弱い | 自主的・手堅い・芯が強い | えり好みする傾向がある・内向的・我が強い |
計算の処理速度がはやい(発動性が強い)ということは、「物事への取り掛かりがはやい(仕事の滑り出しがよい)」「仕事に素直に取り組める」「仕事への慣れがはやい」と判断できます。一方で、やや先走り気味で軽はずみな一面もあるともいえるでしょう。また、計算の処理速度がはやくない方の場合、内向的で作業のえり好みをする傾向があるという短所が見られる一方で、芯が強く手堅いという長所があると判断されます。
なお、一般的に1行の半分以上が解けていることが最低ラインとされていることに注意してください。
3-2. 作業曲線(亢進性):仕事の進め方がわかる
作業曲線とは、クレペリン検査において1分間に解いた問題の数の変化を示す曲線のことを指しています。この曲線を見ることで、物事を進めていく際の勢いや持続性を判断することが可能です。
■亢進性の強弱とそれぞれの長所・短所
亢進性 | 長所 | 短所 |
強い | 行動的・頑張りが持続する・強気 | 無理をしがち・強引な傾向がある |
弱い | 控えめで穏やか・温和な性格 | 妥協しやすく受動的・持続性に乏しい |
作業曲線から亢進性が強い(作業に勢いがある)と判断された場合、行動的で持続的に頑張れる人であるという診断がくだされます。一方で無理をしがちで強引な傾向があることも導き出されるでしょう。
一方、亢進性が弱い方は控えめな性格をしている方が多く、温和で穏やかであるという長所があります。ただし、控えめであるがゆえに妥協しやすく受動的な傾向もあると判断されることに留意しましょう。
なお、作業曲線には、健康的で性格や適性に大きな偏りがない方が描くことの多い「定型曲線(平均曲線)」とよばれるものがあり、この形から大きく離れるとあまり良い評価がされないことに注意しましょう。
3-3. 処理の正確性(可変性):性格のムラがわかる
クレペリン検査では、計算結果の正答率(処理の正確性)から、物事を進める際の気分のムラや行動の変化の大小(可変性)を確認できます。
■可変性の強弱とそれぞれの長所・短所
可変性 | 長所 | 短所 |
強い | 機転がきく・柔軟性がある | 気分にムラがある・感情的・動揺しがち |
弱い | 安定性がある・粘り強い・地道に取り組める | 融通がきかないことがある・機転がききにくい |
処理の正確性が安定しており、可変性の弱い方の場合、地道に粘り強く作業を行える傾向があると判断されます。一方で融通がききにくく機転がきかないといった印象を受ける可能性もあるでしょう。また、処理の正確性が安定していない方は、作業を行う際にも気分にムラが出がちです。一方で、機転がきいて柔軟性があるといった長所も見られます。
クレペリン検査で判断できる「発動性」「亢進性」「可変性」という3つの要素と、それぞれの強弱によって判断できる長所・短所について確認しましたが、これらの特徴は「強ければ良い」「弱いとダメ」というわけではありません。あくまでも職場が求める性格・特性かどうかを判断していることに注意しましょう。
4. 問題を解くSPI3
SPI3とは、リクルート社が開発した適性検査であり、いろいろな角度から受検者の適性を測定することで受検者のことを深く知ることを目的とした検査です。一般企業の新卒採用・中途採用でも多く利用されており、前身であるSPI、SPI2を含めて40年以上の実績がある適性検査であるため、看護師の採用選考でも多く活用されています。
SPI3では「言語分野」「非言語分野」の能力検査に加えて、「性格検査」も行われます。SPI3における性格検査は、職場が求めている人材に近いかどうか適性を判断するための検査です。職場が求める人物像を事前に確認し、イメージにあてはまるように質問を選んでいくといった対策も可能ですが、自分を偽った回答をしてしまうと「一貫性がない」と判断されたり、採用後のミスマッチに苦しめられる結果となってしまったりする恐れがあります。自分の軸をしっかり定め、正直に一貫性をもって回答することを心がけましょう。
また、「言語分野」「非言語分野」「英語」では受験者の基本的な学力・能力を判断できます。中学校から高校レベルの問題が出題されることが多いため、SPI3の参考書や問題集を活用して問題に慣れておくことをおすすめします。
では、SPI3の「言語分野」「非言語分野」ではどのような問題が出題されるのでしょうか。ここでは、SPI3の出題傾向について簡単に見ていきましょう。
4-1. 言語分野
言語分野では、文章を正確に理解する能力を問う問題が出題されます。パソコンやテストセンターなどで受検する場合、正答率が高くなると出題される問題の難易度も上がるといったシステムとなっているため、最後まで集中力を切らさないようにしましょう。
■言語分野で主に出題される問題の概要
- 二語関係…例に挙げられる2つの語句と同じ関係にあるものを選択肢から選ぶ
- 文の並べ替え…ばらばらになっている文を正しい順に並び替え、適切な文章を作る
- 語句の用法…複数の意味がある名詞や動詞、助詞などについて、選択肢の中から最も近い用法を選ぶ
■例題(語句の用法)
【問題】 【文】 【選択肢】 【解答】B(【文】における「で」は手段を表す格助詞。) |
(出典:SPI無料学習サイト)
4-2. 非言語分野
言語分野では、資料やグラフの読み取り、数列、確率、計算問題など、数学的な思考力を問う問題が出題されます。言語分野と同様に、パソコンやテストセンターなどで受検する場合は正答率が高くなるにつれて出題される問題の難易度も上がることに注意しましょう。
■非言語分野で主に出題される問題の概要
- 推論…提示された情報を利用し、正しいと考えられる事柄を導く
- 速度算…速さ・時間・距離の関係から、問われた内容を答える
- 情報の読み取り…表や資料から情報を読み取って整理し、計算を行う
■例題(推論)
【問題】 ① YのタイムはZとWのタイムの平均である 次のア~ウの推論のうち、必ず正しいと考えられるものはどれか。 【選択肢】 【解答】D |
(出典:SPI無料学習サイト)
5. 看護師の就職・転職の適性検査まとめ
看護師の就職・転職の際の採用試験では、Y-G性格検査やクレペリン検査、SPI3といった適性検査が多く利用されています。採用試験本番で、自分の実力や本来の適性を十分に発揮できるようにするためにも、適性検査の形式や内容を把握してきましょう。
クレペリン検査の計算練習やSPI3の言語分野・非言語分野では、性格や適性の傾向以外にも、仕事の処理能力や基本的な学力も測定されます。これらの検査に自信がない方は、ある程度事前に対策をしておきましょう。
一方、性格や適性の傾向を判断することを主な目的とした検査では、事前に職場が求める人物像を知っておくことも重要ですが、偽った回答をすると一貫性がないと判断されたり、採用後にミスマッチが判明して働くことがつらくなったりすることもあるため注意が必要です。自分に合った職場で自分らしく働きたい方は、過度に自分をよく見せようとせず、自分なりの軸をもって適性検査に臨みましょう。
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