【2020年最新】看護師の就職、求人倍率はどのくらい?
看護師の人手不足が深刻化している医療現場において、看護師の有効求人倍率は高く推移しており看護師業界は売り手市場が続いています。
さらに超高齢化社会である日本では、高齢者の割合が多いことによる医療ニーズが高まっているため、今後も看護師業界の売り手市場は続いていくものと考えられています。
それでは実際に、現在および今後の看護師の就職市場はどのようになっていくのかという見通しを、データを用いて解説していきます。
1 看護師の有効求人倍率はどれくらい?
厚生労働省が発表している資料を参考に看護師の有効求人倍率を見ていきましょう。
2020年11月時点での有効求人倍率は2.11倍であり、新規有効求人倍率は3.86倍にもなります。毎年、1月~3月あたりまでのいわゆる新年度に向けてのシーズンでは、人事異動や退職者が増加するということもあり、有効求人倍率は増加する傾向にありますが、11月時点でこれまで高いということはあまり見受けられないものです。
また、2020年1年間の有効求人倍率は、2.62倍となるのですが、一般職の有効求人倍率が1.1倍となるのでこのデータと見比べても医療関係者、特に看護師における有効求人倍率は高まっているということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
特に2020年は新型コロナウイルスの影響で一部の職業においては廃業、縮小に追い込まれるケースが増えている一方、医療職、特に看護師においては新型コロナウイルス対策のため看護師の増員をする医療機関が増加したという背景もあって看護師の需要が増しているということになるのです。
ただ、有効求人倍率の高まりは、新型コロナウイルス感染症が蔓延して看護師が大いに不足した2020年だけの話というわけでもありません。
実は、過去の有効求人倍率を見てみると、2019年では2.46倍、2018年では2.50倍、2017年では2.56倍です。つまり、2020年の有効求人倍率はやや多くはなるものの、群を抜いて高いということにはなりません。
このデータからわかるように看護師業界は常に人手不足となっており、求人においても売り手市場が続いているということになるのです。
さらに、今回のデータは、日本全国のものですが、地域別にみてみると地域によっては有効求人倍率が極端に低いところと極端に高いところがあるということがわかります。
特に、東京、神奈川、埼玉、千葉といった関東地方の都市部においては、看護師有効求人倍率が高い傾向にありますが、実はこの状況、数年ほど同じ状況が続いています。ですので、一概に新型コロナウイルスが流行したから有効求人倍率が極端に高くなったというわけではなく、看護師が売り手市場というのは、ずっと続いている話でもあるのです。
<参考>
- 看護師転職事情最新版
- 政府統計e-Stat 一般職業紹介状況『職業安定業務統計』
- 公益社団法人日本看護協会 新型コロナウイルス感染症対策に関する日本看護協会の取り組み
- 公益社団法人日本看護協会 都道府県別求人数等の実績
1-1 看護師は不足気味
さきほどもお話ししたように、看護師の有効求人倍率は、全国平均では、2~3倍の高水準となっているものの、地域別にみると顕著に差がみられます。
有効求人倍率と合わせてみていきたいのは、人口10万人における看護師の人数です。
例えば、求人数が多かったとしてもその分、求職者も多ければ、有効求人倍率は低くなります。そのため、求人数が多く、看護師が少ないという地域では、有効求人倍率が増加していく傾向にあります。
先ほどもお話ししたように、地域別に看護師の有効求人倍率を見ていくと、東京、神奈川、埼玉、千葉といった関東地方の都市部においては有効求人倍率が高い傾向にあります。
これらの地域の有効求人倍率が高い理由にはさまざまなことが考えられているのですが、この記事で注目したのは訪問看護ステーションの数です。
実は、訪問看護ステーションは看護師の働く場の中でも有効求人倍率が高いもので、年々増加傾向にあります。そんな訪問看護ステーションが多くある都道府県が東京都や神奈川県といった有効求人倍率が高い都心部にあたるのです。
とはいえ、全国的に見てみても、看護師1人に対して、2つ以上の医療機関が求人募集をしているという状況であるため、結果としては全国的に看護師が不足している状況であるということが言えるのです。
<参考>
2 看護師不足の原因は?
実は看護師の免許を取得している方の人数は、増加傾向にあり、直近2年間分、つまり2019年と2020年では5万人以上が看護師国家試験に合格し、看護師の免許を取得しています。
毎年これだけの人数の看護師が誕生していながらなぜ、全国的に看護師不足に陥ってしまうのでしょうか。
<参考>
2-1 医療ケアが必要な人が増えている
現在、日本は超高齢化社会といわれ、2020年9月の時点で全人口のうち28.7%が65歳以上の高齢者となっています。これは、過去最高の値となるのですが、これを上回る勢いで高齢化率が上昇するのが2025年なのです。なぜ、2025年に高齢化率が一気に上昇するかというと、1947年から1945年に生まれたいわゆる「団塊の世代」と呼ばれる世代が後期高齢者に差し掛かることが理由であり、これを2025年問題とも呼ばれています。
団塊の世代が後期高齢者になることの何が問題であるのかというと、医療や介護の需要が高まることが問題視されているのです。
基礎疾患の憎悪や、新たに疾病にかかることはもちろんですが、何よりも危惧されているのが認知症高齢者の増加です。厚生労働省は2025年には高齢者の5人に1人が認知症になっていると推計しています。
これに加えて、日本では健康寿命は延びてきているものの、その伸び率は平均寿命よりも短いことが分かっています。
これらのことから、高齢者が増加し、特に長命であればあるほど、医療ケアを必要な方が増加し、医療や介護及び看護師の需要が増えてくるということなのです。
特に、2025年には夫婦のみの世帯あるいは単身独居の高齢者が増加するということや、地域包括ケアシステムによって疾病を抱えていても医療機関に長期間入院はせず、疾病を抱えながらも社会資源を活用して地域で生活していくというスタイルになっていきます。ですので、特に訪問看護や往診といった在宅医療分野などのニーズは増加していくことが考えられるのです。
現実問題、2020年の時点でも認知症高齢者は5年前よりも増加し、健康寿命が延伸しているとはいえ、平均寿命と比較すればその伸びはまだまだな部分があり、医療需要は増してきています。さらに、地域包括ケアシステムは2025年までに確立ということなので、2020年現在も始まっており、訪問看護をはじめとする在宅医療のニーズは高まってきています。2020年の現況から考えてみても2025年問題を回避するということは難しいといえるでしょう。
<参考>
- 総務省統計局 高齢者の人口
- 厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
- 内閣府 第一章 高齢化の状況
- 厚生労働省 今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~
- 厚生労働省 地域包括ケアシステム
2-2 離職率の高い職場環境
看護師の働く環境については長い間さまざまな問題点が指摘されてきました。例えば、時間外勤務が多いということや、夜勤による不規則な勤務形態による心身の負担、休暇が取りづらいあるいは休日であっても学習会などのために休日出勤をしなければならないなどです。
看護師は、有効求人倍率が高い、つまり、やめたとしてもすぐに次の職が見つかりやすいという傾向もあることから離職率も高いことが特徴です。
日本看護協会が行った調査によれば、2019年の離職率は、正規雇用看護職員10.7%、新卒採用者7.8%、既卒採用者17.7%となっており、この割合は例年通り、つまりはほぼ横ばいであるとしています。
日本看護協会では、厚生労働省が打ち出した働き方改革に基づき、2019年より、規定以上の時間外労働による罰則や、有給取得の義務などの改革を打ち出しました。また、各事業所でも看護師の賃金や手当の増加をして対策に講じてきています。
しかし、2020年においては新型コロナウイルスの影響でこの改革や施策通りに進められていない事業所も多く、また例年とは違う離職率となってくることが予想されます。
さらに、働く環境絡みでもう1点考えられているのが看護師の就業者の割合です。最新のデータである平成30年のものを見てみると、看護師として働くものの男女比は女性が92.2%、男性が7.8%となり圧倒的に女性が多い職場です。女性は特にライフイベントによって離職を余儀なくされるケースも多く、実際に、22.1%の看護師が出産や育児のため、17.7%が結婚のため離職をしていることが分かっています。働く環境に問題があり、ライフイベントに伴い就業継続が難しくなっているのも離職する看護師が多くなってしまう理由となると考えらえています。
<参考>
3 看護師の採用はどのくらい?
厚生労働省が2年ごとにまとめている最新のデータによると、全国の看護師は毎年3~3.5万人ペースで増加をしています。この数を単純に医療機関の数で割ってしまうと、各医療機関における採用人数が少ないと思われるかもしれません。ですが、実際には看護師は不足しているという世情もあり、この数値よりも採用人数は多いことが考えられています。
各医療機関ごとに具体的な採用人数は発表していないことや、随時募集をかけて、看護師を雇い続けているという医療機関もあることから、明確な数値が分かりかねるということから、このデータのみで、看護師の採用者数を割り出すことが難航される所以となります。
例えば、大学病院などでは1度の求人で大量に看護師を雇い入れる一方、中小規模の医療機関では1度の採用人数は少ないものの追加で看護師を集め続けているという傾向にあることも、上述したものを裏付けることができるかと考えます。
そのため、看護師の採用を行う医療機関は多々あり、求職者側はじっくり選択できるといえるでしょう。
<参考> 厚生労働省 平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
4 まとめ
日本の高齢化社会が加速していることに伴い、看護師不足も加速していっております。
そのため、有効求人倍率は一般職と比べて高く、就職はしやすい状況であるといえるでしょう。
ただし、すべての医療機関において、看護師を歓迎しているというわけではなく、特に人気の医療機関などでは、求人がない、何年待っても出てこないということはあり得るものです。
もしも自分が希望する病院があるのであれば求人が出た際には応募されることをおすすめします。
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