子育てと仕事を両立させる看護師の働き方とは?
看護師は女性の割合が高いため、出産や子育てといったライフステージの変化を経験する方も多く、実際に子育てをしながら看護師として働いている方や、将来的に看護師の仕事と出産・育児を両立させたいと考えている方も珍しくありません。
しかし、看護師の仕事は夜勤や残業、呼び出しなども多いため、仕事と育児の両立に悩んでいる方や不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、看護師の仕事と育児を両立するために利用したい「子育て支援の制度」や、「病院・施設側が行っている子育て応援の取り組み」について紹介します。育児と両立しやすい職場や、子育てをしている看護師の1日のスケジュール例を確認し、看護師の仕事と育児の両立を図りやすい働き方を考えましょう。
目次
1 子育てをしながら看護師として働くには?
出産を経て子育てをしながら看護師として働く方も多くいますが、多忙な業務を抱える看護師の仕事と子育てを両立するためには、働き方を工夫することが必要です。子育て中の看護師が取り組める働き方の工夫には、「子育て支援を行う施設の利用」や「転職などによる職場環境の整備」などが挙げられます。
では、具体的にどのような工夫を行うことができるのでしょうか。ここからは、看護師が仕事と育児を両立するための方法について、「子育て支援を行う施設の利用」「職場環境の整備」といった2つの面から詳しく解説します。
2 子育て支援制度の施設を利用
ハードワークであることが多い看護師が仕事と育児を両立させるためには、まず子育て支援制度の活用を考えることをおすすすめします。子育て支援制度とは、「子育てと仕事を両立できるか不安」や「子どもを預けたいけれども、保育所が満員で預けられない」といった子育てに関する問題を解決するために、支援を必要とする家庭が利用できる環境を作る制度のことです。
保護者の状況 | 子どもの年齢 | ||
0~2歳 | 3~5歳 | 小学生 | |
仕事や介護などで子どもを見られない日が多い | ・保育所 | ・保育所 | ・放課後児童クラブなど |
ふだん家にいて子どもと一緒に過ごす日が多い | ・一時預かり | ・幼稚園 など |
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すべての子育て家庭 | ・利用者支援 |
参考URL:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201510/1.html
子育て支援の制度には、子どもの年齢や家庭状況に応じて、保育所(保育園)や認定こども園、学童保育の利用など、様々な選択肢があります。
ここでは、「院内の託児所」「保育所や認定こども園」「幼稚園」「学童保育」のそれぞれの保育施設について、対象となる年齢や施設の特徴を紹介します。各施設の概要を理解し、子育てと仕事を両立するために上手に活用しましょう。
2-1 院内の託児所を利用する
院内保育とは、勤務先などが医療施設内や勤務先の周辺に整備している保育施設(保育園・託児所)を指します。子育て支援の制度の中では、地域型保育の事業所内保育に該当します。近隣の保育を必要とする子どもも受け入れている場合もありますが、主に病院で働くスタッフの子どもを預かる施設となるため、子育て中の看護師の力強い味方となってくれるでしょう。
育児をしながら働く場合、子どもの保育施設への送迎はもちろん、突然の発熱・ケガなどの緊急事態にも対応しなければなりません。しかし、院内保育を利用できれば、送迎の時間が短縮できたり、子どもの急病にも迅速に対応できたりなど、メリットがたくさんあります。
ただし、院内保育の場合は一般的な認可保育園や認定こども園よりも規模が小さい場合が多いことに注意が必要です。しかし、地域によっては保育園に入園しにくいケースもある0~2歳の小さな子どもを預ける場合には、職場との近さや利便性、安心感といった魅力も多いため、検討してみることをおすすめします。
2-2 保育園や認定こども園などを利用する
職場に院内保育施設がない方や、施設の規模(園庭の広さや園児数など)にこだわりがある方は、地域の保育園(保育所)や認定こども園の利用がおすすめです。保育園や認定こども園は、両親が働いている、または病気などで、子供の保育が十分にできない家庭のために未就学の子どもを保育する施設を指します。
保育園は児童福祉法に基づく保育福祉施設であり、厚生労働省の管轄となっています。一方、認定こども園は内閣府が管轄する幼保一定型施設であり、保育と教育の両方を受けることが可能です。どちらの施設も、0~6歳(就学前)の子どもを保育士や幼稚園教諭に預けられる施設が多いため、職場復帰から小学校入学前までの仕事と子育ての両立を強力にサポートしてくれるでしょう。
地域の保育園や認定こども園は、院内保育とは違い、地域の子育て支援施設となるため、地域の事情に左右される場合があることに注意が必要です。保育園や認定こども園の激戦区に住んでいる方の場合、送り迎えに不便な施設しか入園許可されないこともあることに留意しましょう。また、突然の発熱などでは必ずお迎えに行く必要があるため、院内保育の場合よりも急な早退・休みが増える恐れがあることも覚えておく必要があります。
一方で、地域の保育園や認定こども園では、地域で暮らす同年代の子どもたちが通っていることもあり、子ども自身に長く付き合っていけるお友達ができやすいといったメリットもあります。施設の規模が大きくなることで、保育や教育の幅も広がることが期待できるでしょう。
2-3 幼稚園の利用する
パートやアルバイトとして働くことを考えている方で、保育園や認定こども園の激戦区に住んでいる方の場合、預かり保育が充実している幼稚園を検討してみることも1つの方法です。幼稚園は文部科学省の管轄であるため、充実した幼児教育を受けられるというメリットがあります。
ただし、預かり時間が保育園や認定こども園よりも短いケースが多いことや、夏休みなどの長期休暇もあることに注意が必要です。3歳以上の子どもでなければ通園できないため、子どもが2歳以下の場合は、幼稚園を利用して働くことはできないことを覚えておきましょう。
参考URL:https://part.shufu-job.jp/news/solution/8990/
2-4 学童保育を利用する
学童保育とは、小学生の放課後や土曜日、夏休みなどの長期休暇中に保育を行ってくれる施設を指しており、管轄によって「放課後子ども教室(文部科学省)」「放課後児童クラブ(厚生労働省)」「民間学童保育(民間法人など)」といった種類があります。施設の種類や地域にもよりますが、学童保育では、宿題を行う時間やおやつの時間、友達や保育を担う大人との会話の時間といったように、子どもの成長に欠かせない時間を送ることができます。
学童保育の保育対象は、基本的には小学生(6~12歳)となっています。地域の事情や施設の方針にもよりますが、学童保育では一般的に、一人親家庭や低学年の小学生がいる家庭、共働き(フルタイム)の家庭は優先されやすいといわれています。フルタイム勤務の看護師の場合は学童保育を大いに活用できるでしょう。
参考URL:https://kidsna-connect.com/site/column/hoiku_workstyle/3402
3 夜勤がない職場に転職
院内保育では保護者の夜勤に対応している施設もありますが、地域の保育園や認定こども園、学童保育の開所時間は基本的に日中のみであり、保護者の夜勤には対応していないケースがほとんどです。そのため、夜勤は子育て中の看護師にとって大きな負担となってしまうでしょう。
夜勤が自分自身や子ども、家庭に大きな負担となってしまうと考えられる場合には、子育てのために日勤のみの職場に転職することも1つの方法です。ここでは、夜勤がなく日勤のみの勤務であることが多い職場を3つ紹介します。子育て中の方やこれから出産・育児を予定している方はぜひ参考にしてください。
3-1 診療所・クリニック
入院施設を備えている病院は、外来のほかに病棟勤務もあるため、夜勤や呼び出しがあるケースがほとんどです。一方、同じ医療機関である診療所やクリニックは入院施設をもたないケースも多く、基本的に外来診療のみとなります。
外来診療のみの診療所・クリニックであれば、入院患者のケアをするための夜勤・呼び出しはありません。また、診療日や診療時間も決まっていることがほとんどであり、土曜日や日曜日が休みであることも多いため、子どもや配偶者との予定も合わせやすいでしょう。正職員としてだけでなく、パートやアルバイトとしても働きやすいことも特徴です。
ただし、小規模なクリニック・診療所の場合、勤務している看護師・スタッフが少ないという施設も珍しくありません。事務作業や清掃など、看護師業務以外の業務があることや、急な休みが取りにくいケースもあることに注意しましょう。
3-2 訪問看護ステーション
訪問看護とは、自宅や施設などで過ごす病気療養中の方や障害を持つ方などを対象に、利用する方の自宅や施設などに訪問して、医師の指示に従って看護ケアを行うことを指します。訪問看護を行う看護師は、訪問看護ステーションに所属することが一般的であり、訪問看護ステーションから利用者が暮らす自宅・施設に向かうこととなります。
訪問看護師は1日に訪問する利用者数(時間数)や1週間に働く日数、勤務する曜日など、比較的自由に決められる仕事です。土日祝日休みが多く、基本的には夜勤や残業がないため、仕事と育児との両立もしやすいでしょう。
3-3 介護施設(デイサービス)
介護施設で勤務する看護師も日勤のみであるケースが多く、子育て中の看護師の方におすすめです。特にデイケアやデイサービスといった、リハビリに特化した通所型の施設は、施設の開所時間が基本的に日中のみであることから、夜勤がある可能性は低く、残業もほとんどないと考えられるでしょう。
介護施設では、看護師は利用者の服薬管理や健康管理、バイタルチェック、生活介助などを中心に行います。病棟勤務のように患者(利用者)の生死に関わるような事態は少なく、精神的な負担が比較的小さいため、育児を行うための心のゆとりも持てるでしょう。
3-4 保育園・幼稚園
一定以上の規模の保育園や認定こども園、幼稚園といった幼児を対象とする保育施設・教育施設では、園児の健康をサポートするために看護師を配置しているケースがあります。保育園などで働く看護師の主な業務として、園児の健康管理や健診の補助、保育士や幼稚園教諭のサポートなどが挙げられます。
保育園などは基本的に日勤のみであり、日曜日や祝日など施設が休みの日には看護師も休みになります。夜勤はなく、残業も比較的少ない職場ですが、運動会などの行事があれば日曜日や祝日でも出勤する必要があることに注意しましょう。
4 子育て中の看護師の1日
看護師の仕事と育児とを両立させるためには、院内保育や地域の保育園、学童保育などといった保育施設を活用したり、夜勤のない職場に転職したりといった工夫が必要です。では、現在子育てをしながら働く看護師は、どのような働き方をして育児との両立を実現しているのでしょうか。ここでは、子育て中の看護師の1日のスケジュール例を見てみましょう。
■子育て中の看護師のスケジュール(例:保育園に通う子ども1人の場合)
【朝のスケジュール】 ―5:30…起床・自分の出勤準備 ―6:00…家事(洗濯・掃除など)・朝食やお弁当の準備 ―6:30…子どもを起こし、朝食を食べる ―7:00…子どもの保育園準備(洗顔・歯磨き・着替え・保育園での持ち物準備など) ―7:45…自宅を出て子どもを保育園に送る ―8:30…職場に到着・業務開始 【勤務中のスケジュール(日勤)】 ―8:50…申し送り・患者の情報収集 ―9:15…患者のケア開始・ナースステーションで事務作業など ―12:00…患者の食事介助 ―13:00…お昼休み ―14:00…患者のケア・予定入院などの対応・ナースステーションで事務作業など ―16:30…夜勤を担当する看護師への申し送り・引き継ぎ ―17:00…退勤・保育園へのお迎え 【夕方・夜のスケジュール】 ―18:00…帰宅・夕食の準備 ―18:45…夕食 ―19:30…入浴・子どもと遊ぶ ―21:00…寝かしつけ ―21:45…家事・翌日の準備・自分のくつろぎタイム ―23:30…就寝 |
子育て中は子どもの保育園・学校の準備や遊びの時間、寝かしつけといったケアの時間も多く必要であり、毎日が慌ただしく過ぎていくでしょう。
子どもが小さなうちは大変に感じる日もあるかもしれませんが、スケジュールに慣れて1日を効率よく回せるようになったり、子どもの自立が進んだりと、徐々に両立しやすい環境が整っていきます。
看護師としてのキャリアを継続するためにも、子どもとの将来のためにも、子育てと仕事を上手に両立しましょう。
5 まとめ
看護師が子育てをしながら看護師としての仕事をするためには、院内保育などといった職場の子育て支援制度や、地域の保育園・認定こども園、学童保育といった施設を活用することが重要です。また、育児と仕事を両立しやすい日勤のみの職場(無床診療所や訪問看護など)に転職することもよいでしょう。
看護師が育児と仕事を両立するために利用できる施設やサービス、働きやすい職場にはさまざまなものがあるため、自分の勤務先や地域の状況を確認した上で検討してみることをおすすめします。
子育て中の看護師は仕事も育児も忙しく、「1日があっという間に過ぎてしまった」ということも珍しくありません。子どもが小さなうちは育児にも慣れておらず大変に感じることもありますが、育児と仕事のペースをつかみ、子どもの自立も進めば、少しずつ負担も小さくなっていきます。
支援制度の利用や労働環境を整えるための転職など、子育て期を乗り切るための工夫を行い、育児と仕事を上手に両立しましょう。
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