看護師の退職届の書き方完全マニュアルと辞められないときの対処法
看護師として勤務していた職場を退職する際には、多くの場合、勤務先に「退職届」を提出する必要があります。
しかし、退職届を書く機会は人生でそれほど多くはなく、今回初めて作成するという方も少なくないでしょう。
退職届の内容や体裁、提出のタイミングなど、どのように対応すればよいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、看護師の退職届の基本的な書き方を例文とともに紹介します。
退職届を作成する際の注意点や退職までのスケジュール、退職届を職場が受理してくれない場合の対処法なども併せて確認し、可能な限り円満かつスムーズな退職を目指しましょう。
目次
1.退職届のお手本~例文~
一般的に、現在勤務している職場を退職する際には、「退職届」を提出する必要があります。勤務先によっては退職届の体裁が決まっている場合もありますが、特に規定がなければ、イチから自分で作成しなければなりません。
自分で作成する必要があるとは言っても、看護師の退職届の基本的な構成や、退職届に記載する内容はそれほど難しいものではありません。
ここでは、看護師が退職する際に提出する退職届の基本構成と例文を紹介します。退職届を作成する際の注意点も併せて確認し、退職届の作成をスムーズに行いましょう。
1-1.退職届の基本構成とお手本となる例文
退職届に記載する内容や基本的な構成は、多くの業種・職種で共通しています。看護師を含めた多くの職業で次のような構成が活用できるため、基本をきちんと押さえておきましょう。
■退職届の基本構成(縦書きの場合)
①書類のタイトル(冒頭行) | 「退職届」と記入します。 |
②本文の書き始め | 「私議」または「私事」から書き始めます。 |
③退職の理由 | 退職の理由を記入します。自己都合退職の場合は |
④提出する年月日 | 退職届を実際に提出する日付を漢数字で記入しましょう。 |
⑤所属部署など・氏名 | 所属や役職を正式名称で記入します。 |
⑥あて先 | 提出する相手(院長など)の役職と氏名を記入します。 |
■退職届の例文(縦書き)
■退職届の基本構成(横書きの場合)
①書類のタイトル(冒頭行) | 「退職届」と記入します。 |
②提出する年月日 | 退職届を実際に提出する日付を算用数字で 記入しましょう。 |
③あて先 | 提出する相手(院長など)の役職と氏名を 記入します。 |
④所属部署など・氏名 | 所属や役職の正式名称、自身の氏名(フルネーム) を記載してください。 |
⑤本文の書き始め | 「私議」または「私事」から書き始めます。 |
⑥退職の理由 | 退職の理由(「一身上の都合により」)を記入します。 |
■退職届の例文(横書き)
退職届や退職願には退職の理由を記入する必要がありますが、基本的には「一身上の都合により」と記載すれば問題ありません。提出時に口頭で退職理由を尋ねられた際には、「キャリアアップ」「結婚や配偶者の転勤といった家庭の事情」といった理由であれば正直に答えてもよいでしょう。
1-2.退職届は手書きが基本
近年ではデジタル化やペーパーレス化が進んでいますが、退職届は手書きで作成することが基本となります。丁寧な字で書くように心がけ、誤字や脱字がないかきちんと確認しましょう。
誤字や脱字があった場合は、修正液を使用したり訂正の二重線を引いたりせず、最初から書き直すようにしてください。
一般的な便箋に書く際にはB5サイズ程度の大きさの白無地のものを、パソコンで作成してもよい場合はB5サイズまたはA4サイズの白無地のコピー用紙を利用しましょう。
手書きで作成する場合には黒のボールペン、パソコンで作成してプリントアウトする場合はモノクロで出力してください。
2.退職届を入れる封筒の選び方・書き方
退職届を提出する際には、退職届を封筒に入れる必要があります。封筒は郵便番号を書く欄がない白無地のものを使いましょう。
B5サイズの便箋・用紙で作成した場合は「長形4号」、A4サイズの用紙で作成した場合は「長形3号」を選択し、書類を三つ折りにして封入します。
退職届を入れる封筒の表面には、中央に大きく「退職届」と記入しましょう。裏面の左下には、自分の所属部署の正式名称と、自分のフルネームを書いてください。
<表面>
<裏面>
3.退職届は直属の上司に「手渡し」が原則
退職届のあて先は、「院長」など勤務先の最高執行責任者を記載します。しかし、退職届の提出先は「看護部長」や「看護師長」といった直属の上司となることに注意しましょう。
また、退職届は直属の上司に直接手渡しして提出することが基本となります。上司が不在の場合は一旦持ち帰り、改めて提出するようにしましょう。「上司の机に置いておく」「郵送する」といった渡し方は可能な限り避けるようにしてください。
なお、提出を予定していた日(退職届に記載した日付)に上司に退職届を渡せず、日を改めて提出することとなった場合には、退職届の日付を書き直す必要があります。
手間はかかりますが、退職届は重要な書類であるため、きちんと作成し直すようにしましょう。
4.退職を決意してから退職までのスケジュール
現在の職場を円満に退職するためには、退職までのスケジュールについて、余裕をもって立てておくことが重要です。
ここでは、退職を決意してから実際に退職するまでのスケジュールや書類提出などを行うタイミングについて見ていきましょう。
■退職を決意してから退職するまでのスケジュール
退職の決意をしたら、退職したい旨を直属の上司に伝えましょう。 就業規則などに明記されていない場合は、引継ぎや後任者の準備を考慮して、遅くとも退職予定の2か月前には退職の意向を上司に伝えてください。 |
↓
退職に関する相談に日数を要する場合や、上司になかなか対応してもらえない場合は、上司に「退職願」を提出しましょう。 また、退職の交渉がスムーズに進んだ場合には、退職願は必要ないケースもあります。退職願が必要かどうか、職場のほうに確認しましょう。 |
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退職の交渉が進み、退職する旨が受理されたら、上司と相談して正式な退職日を決定します。 |
↓
正式な退職日が決定したら、雇用契約書や就業規則の記載にしたがって退職届を準備します。 |
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実際に退職する日までは、通常の業務と並行して後任者のために担当業務の引継ぎを行います。 デスク回りやロッカーなど、私物や職場からの貸与品・備品を整理することも重要です。私物は少しずつ自宅に持ち帰り、貸与品や備品は退職日までに返却できるよう整頓しておきましょう。 |
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退職届を提出するタイミングは、「上司と相談の上で正式な退職日を決定した後」となります。退職の意思を伝えるための「退職願」とは提出するタイミングが異なることに注意しましょう。
5.病院が退職届を受理してくれないときの対処法
看護師業界は常に人手不足であるため、勤務先に退職の意向を伝えても、すぐに対応してくれなかったり引き止められたりするケースも少なくありません。
職場によっては、退職願や退職届を受理してくれない場合もあるため注意が必要です。
ここでは、病院などの勤務先が退職届を受理してくれない場合の対処法について解説します。
退職届をなかなか受理してもらえない場合の最終手段として、ポイントを押さえておきましょう。
5-1.法律上、受理してくれなくても自由に退職することができる
退職届は、退職をする際に重要な書類の1つですが、実は法律上は退職届を受理してもらえなくても自由に退職することが可能です。
そもそも、労働者側が「退職したい」と職場に伝えたのであれば、職場側は退職を引き止める権利はありません。
民法627条1項では、正規雇用の職員のように、雇用期間が定められていない雇用契約を結んでいる場合「退職の意向を伝えてから2週間経過することによって雇用契約が終了する」といった内容が定められています。
引継ぎや後任者の準備といった関係上、病院などの職場側は就業規則に「2か月前には申し出ること」と定めていることもありますが、法律上は退職届の有無にかかわらず、退職希望日の2週間前までに退職の申し入れをしていれば、自由に退職できることを覚えておきましょう。
ただし、退職交渉や退職届の提出をせずに退職することは、退職の意向を伝えても全く対応してもらえなかった場合の最終手段です。
可能な限り退職交渉ができるように物事を運び、円満な退職を目指しましょう。
5-2.受理されないときの対処法3選
退職交渉や退職届の受理など、退職に関連する対応を全くしてもらえなかった場合には、上述した通り退職の意向を伝えてから2週間が経過すれば自由に退職することが可能です。
しかし、法律上では退職が可能であるとはいえ、「職場が退職届を受理してくれない状態ではすっきりと辞めることができない」と感じる方もいるでしょう。
ここでは、退職届を受理してくれない上司・職場に退職届を提出する方法について紹介します。退職の意思が固く、退職希望日までに確実に退職したい方は参考にしてください。
5-2-1.直属の上司よりもさらに上の立場にある上司に相談する
直属の上司が退職届を受け取ってくれない場合は、直属の上司よりもさらに上の立場にある上司に相談することで、退職交渉が進むケースがあります。
直属の上司の立場に配慮しながら、直属の上司よりも上の立場の上司に退職交渉を進めてもらえるよう取り計らってもらいましょう。
5-2-2.内容証明郵便で退職届を郵送する
退職届を手渡しすることが難しい場合、「内容証明郵便」で退職届を郵送するという選択肢も視野に入れましょう。
内容証明郵便とは、「送り先」「送り主」「郵送した日」「郵便物の内容」について、郵便局が公的に証明してくれる郵送方法です。
内容証明郵便で退職届を郵送することで、第三者である郵便局が「退職届を職場あてに郵送した」ということを証明してくれます。
直属の上司が退職届を直接受け取っていなかったとしても、内容証明郵便を職場が受け取ったことで「退職の意思」を伝えたことになるため、手渡ししても直属の上司にどうしても受け取ってもらえない場合などには利用を検討するとよいでしょう。
5-2-3.不当な取り扱いを受けた場合はしかるべき機関に相談
「内容証明郵便の受け取りを拒否される」「退職後に看護師免許証を返還してくれない」など、不利益な取り扱いを受けた場合には、労働基準監督署や法律事務所といったしかるべき機関に相談することが大切です。
当事者どうしの間に入って解決方法を探してくれるため、自分だけで対応するよりもスムーズに解決できるでしょう。
6.退職届に関するQ&A
退職届の内容や封筒の書き方、退職までのスケジュール、退職届を受理してくれない場合の対処法について解説しましたが、「退職届と退職願の違いがイマイチわからない」「病気の療養中で手渡しができないため、郵送したいもののどのように郵送すれば失礼にならないか知りたい」といった方も多いでしょう。
ここでは、「退職届と退職願の違い」「退職届を郵送する場合のマナー」について確認します。退職届に関する疑問を解決し、退職届を適切に提出できるよう準備しておきましょう。
6-1.退職届と退職願の違いは何か
「退職届」と「退職願」は名前が似ていますが、それぞれの書類が持つ意味や提出するタイミング、提出後の撤回の可否が異なることに注意が必要です。
■「退職届」と「退職願」の違い
退職届 | 退職願 | |
書類が持つ意味 | 退職交渉が済み、「この日に退職する」 ということを届け出るための書類 | 「これから退職交渉を行いたい」ということ の意思表示をするための書類 |
書類が持つ意味 | 退職交渉後、直属の上司と相談して正式な 退職日を決めた後に提出 | 直属の上司に退職の意向を伝え、退職交渉の相談 |
撤回の可否 | よほどのことがない限り撤回はできない | 上司に提出後も、職場の最高責任者(院長など) が承諾するまでは撤回可能 |
退職届と退職願は、いずれも相談なくいきなり提出することはマナー違反となります。看護部長や看護師長といった直属の上司に退職の意向を伝え、相談してから提出するようにしましょう。
6-2.退職願いの書き方
退職願いの書き方は退職届と同じです。
第1章で紹介した退職届の例文を下記の2点を書き換えればOKです。
・タイトル
『退職届』⇒『退職願い』
・文章
『退職いたします。』⇒『退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。』
なお、決まりはありませんが、退職希望日の2か月前をめどに上司に提出すると良いでしょう。
6-3.郵送する場合の礼儀
病気療養中などといった理由で退職届を直接手渡しできない場合には、退職届を郵送によって提出することも1つの方法です。退職届を郵送する際には、添え状を忘れないように準備しましょう。
■退職届を郵送する際の添え状(例文)
退職届を郵送することとなった理由が職場にとってマイナスな理由でなければ、手渡しで提出できなかった理由や、手渡しできなかったことへの謝罪の言葉を添えるとよいでしょう。
退職届を郵送する際には、郵送時に使う封筒も別に用意します。
退職届を入れる封筒(白無地)には直接住所は書かず、退職届を入れる封筒よりも一回り大きな封筒を準備し、その封筒に送り先や送り主を書くようにしましょう。添え状もこの一回り大きな封筒に入れるようにしてください。
<表面>
<裏面>
退職届を入れた白無地の封筒および郵送用の封筒は、それぞれ必要なものを封入したら、のりや両面テープなどで丁寧に封をしましょう。
閉じた部分には「緘」「〆」など、封を行った印を入れてください。発送後、3日から1週間経過したころに勤務先に連絡し、到着しているかどうかの確認もしておきましょう。
7.まとめ
退職届は、退職交渉が進み、正式な退職日が決まった後に職場に提出する書類です。書き方や体裁、提出する時期には一定のルールやマナーがあるため、就業規則や雇用契約書なども確認しながら適切に対応するようにしましょう。
退職届がなかなか受理されない場合は「直属の上司のさらに上の上司に相談する」「内容証明郵便で退職届を郵送する」といった方法も視野に入れる必要があります。
退職届を一方的に提出して退職することも法律上は可能ですが、どうしても退職交渉が進まなかった場合の最終手段と心得ておきましょう。
退職届や退職願は、円満に退職するために重要な書類の1つです。適切なタイミングで作成し、スムーズな退職交渉を目指しましょう。
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