看護師の総年収は483万円!手取り、賞与、残業代の全てを徹底解説【わかりやすいグラフ付き】
世間では「高収入で安定している」と言われることも多い看護師。
しかし、本当に看護師の年収は一般的に高いといえる額なのか、疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
また、基本給だけでなく残業代や夜勤手当などは平均でどの程度の額なのか気になる方も少なくないでしょう。
この記事では、看護師の年収について2020年の最新データをもとに、どこよりも多くの切り口で、様々な角度から解説していきます。
年収の内訳や都道府県別の平均年収、他の職種との比較、国際間比較もあわせて確認し、看護師の収入の実態をつかんでいきましょう。
目次
1 看護師の総年収はどのくらい?
ここでは、主に2015年から2019年の5年間における、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、看護師の総年収について解説します。「残業代込みの総額」「男女別」「企業規模別」「職種別(看護師・准看護師・看護助手)」といった切り口から、看護師の収入の実態について理解を深めましょう。
1-1 看護師の平均総年収は残業代込みで483万円
はじめに、基本給と残業代、夜勤手当などの各種手当を含めた看護師の総年収(総支給額)の平均について確認しましょう。
2019年の「賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均総年収は483万円となっています(平均年齢39.5歳・平均勤続年数8.2年)。2019年までの5年間も同程度の水準で推移しており、わずかに増加傾向であることから、年度によって看護師全体の年収相場が大きく変動する可能性は低いといえるでしょう。
1-2 男性看護師のほうが女性看護師よりも年収はやや高め
2019年の「賃金構造基本統計調査」によると、男性看護師と女性看護師の平均総年収(総支給額)は次の通りです。
■男性看護師
・平均総年収…496万円(平均年齢36.0歳・平均勤続年数7.2年)
■女性看護師
・平均総年収…481万円(平均年齢39.9歳・平均勤続年数8.3年)
統計によると、男性看護師のほうが女性看護師よりも総年収額がやや高めです。これは、勤務先の規模や家族手当の有無、夜勤の回数などが影響していると考えられます。なお、2015年から2019年の5年間で男性看護師・女性看護師ともに、平均年収額は微増傾向となっています。
1-3 施設規模が大きいほど年収が高くなる傾向に
2019年の「賃金構造基本統計調査」における、施設の規模別(職員数:10~99人/100~999人/1000人以上)の総年収額を見ていきましょう。
■職員数10~99人
・平均総年収…440万円(平均年齢47.3歳・平均勤続年数8.9年)
■職員数100~999人
・平均総年収…468万円(平均年齢41.3歳・平均勤続年数8.0年)
■職員数1000人以上
・平均総年収…512万円(平均年齢35.0歳・平均勤続年数8.2年)
職員数10~99人の施設よりも、職員数100~999人の施設のほうが約30万円、職員数1000人以上の施設では約50万円、平均年収が高いことがわかります。施設の規模が大きくなるほど基本給も高くなりますが、夜勤手当や残業代が加わることも影響しているようです。
施設の規模の大きさと総年収額との相関は、2015年から2019年までの5年間でほぼ変わらず、それぞれの施設規模における平均総年収も大きな変動はありません。
1-4 看護師・准看護師・看護助手では資格によって年収の差がある
看護の仕事に関わる職種には、大きく分けて「看護師」「准看護師」「看護助手(補助)」の3つがあります。(※)
2019年の「賃金構造基本統計調査」によると、これら3つの職種の平均総年収額は以下のようになっています。■看護師
・平均総年収…483万円(平均年齢39.5歳・平均勤続年数8.2年)
■准看護師
・平均総年収…403万円(平均年齢50.2歳・平均勤続年数11.6年)
■看護助手
・平均総年収…303万円(平均年齢46.7歳・平均勤続年数8.5年)
看護師と准看護師では、仕事内容は大きく変わらないという施設が多いものの、資格の違いによって年収に差があることに注意が必要です。看護助手は看護師や准看護師が行える医療行為以外の業務(シーツ替えや後片付けなど)を担うため、医療行為を行う看護師や准看護師よりは年収が少なくなります。
この傾向は2015年から2019年までの5年間で大きく変わりません。看護師や准看護師の年収も微増傾向にありますが、看護助手の平均年収が10万円ほど増加している点は喜ばしいポイントといえるでしょう。
・看護師:看護師国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受けた方
・准看護師:准看護師試験に合格して、都道府県知事の免許を受けた方
・看護助手(補助):資格は必要なく、看護師や准看護師のサポートを行う方(看護師のような医療行為は行わない)
2 看護師の年収の内訳を解剖
ここでは、看護師の収入を「基本給」「賞与」「夜勤手当」「残業手当(時間外手当)」「その他手当」の5つに解剖し、それぞれの金額について確認します。看護の仕事に携わる方は、ぜひ自分の給与明細と比較してみてください。
2-1 12か月分の基本給の総額は平均295万円
12か月分の平均基本給与額は約295万円(税込で約385万円)となります。
基本給の金額は、年齢や勤続年数、役職などによって異なります。ここでは、2019年「病院看護実態調査」より、「勤続10年、31~32歳、非管理職の看護師の月額基本給与」について2010年から2019年までの推移をみてみましょう。
2019年「病院看護実態調査」よると、「勤続10年、31~32歳、非管理職の看護師」の場合、1か月分の平均基本給与額(税込額)は約24.5万円であり、総支給額(税込額)は約32.1万円となっています。
2-2 賞与は平均81.6万円
賞与額も様々な要素によって異なりますが、2019年における看護師の平均賞与額(年間)は81.6万円となっています。
また、賃金構造基本統計調査によると、2015年から2019年までの5年間において看護師の平均賞与額は大きく変動しておらず、80万円前後の水準をキープしています。このことから、賞与額が年度によって大幅に異なる可能性は低いといえるでしょう。
2-3 夜勤手当は平均62.1万円
病院看護実態調査によると、平均夜勤手当額は以下のように推移しています。
夜勤形態 | 回答施設数 | 月平均夜勤回数 | 【参考】2018年 |
三交代制 | 926 | 7.6回 | 7.3回 |
二交代制 | 1,868 | 4.7回 | 4.5回 |
このデータに基づき、3交代制の「準夜勤」「深夜勤」、2交代制の「夜勤」における1年間の夜勤手当を次の式(A)で算出すると、下の表のような金額となります。
■1年間の看護師の夜勤手当
【算出式(A)】
1回あたりの夜勤手当の平均金額×夜勤の平均回数×12か月
夜勤形態 | 夜勤手当の平均額(1年間) |
(3交代)準夜勤 | 37.8万円 |
(3交代)深夜勤 | 45.9万円 |
(2交代)夜勤 | 62.1万円 |
なお、3交代の夜勤シフトについて、準夜勤と深夜勤を半数ずつ行った場合の平均額(年間)は、41.9万円となります。3交代制のほうが1回あたりの勤務時間は短いというメリットがある一方、2交代制のほうが夜間勤務の時間が長く、年間の夜勤手当は増える傾向です。
2-4 残業手当は平均14.8万円
2015年から2019年までの5年間において、看護師の1か月の平均残業時間数は7時間ほどで推移しています。残業単価は1,763円(時給換算)(※1)であるため、1年間の残業手当の平均額は次の式で算出できます。
1年間の残業手当の平均額=1,763円×7時間×12か月=約14.8万円
(※1)残業単価の算出
平均基本給額(245,459円)÷(1か月勤務日数(21.75日)×1日の所定労働時間(8時間))×割増残業賃金(125%)=1,763円
看護師はシフト勤務であるため、残業は一般企業と比べると多くありません。残業手当は時間数に応じた金額となるため、残業代で収入アップは狙いにくいといえるでしょう。
2-5 その他諸手当は30万円ほど
基本給・賞与・夜勤手当・残業手当を合計したものと、年収483万円との差をその他の諸手当とすると、年間で30万円ほどとなります。看護師に支給される手当には、次のようなものがあります。
■看護師がもらえる代表的な各種の手当
・役職手当
・資格手当
・住居手当
・通勤手当
・休日手当
・呼出手当
・危険手当
(参照:日本看護協会 5分でわかる給与明細)
自分に支給されている手当は、給与明細を確認すればわかります。自分がどのような手当をもらっているかわからないという方は、給与明細を確認してみましょう。
3 看護師の年収・都道府県ランキング
最終学歴や都道府県ごとの看護師の年収差はどの程度か。ここでは、最終学歴が「高卒/3年課程」「大学卒」「大学院卒」の看護師について、それぞれ都道府県別の収入ランキングを確認しましょう。
結論として、最終学歴によらず、以下のような大都市圏で収入が高い傾向が見られます。
- 東京都
- 神奈川県
- 大阪府
- 愛知県
一方で、都市圏から離れる以下のエリアはやや低い傾向が見られます。
- 東北地方
- 九州地方
ただし、同時に物価も低いことが考えられるため、それほど生活に支障が出るわけではないでしょう。
最終学歴と平均収入との間にも、最終学歴が高くなるほど平均収入も高くなるという相関が見られます。自分の最終学歴と勤務地のある都道府県の平均収入を確認し、自分の給与が適正かどうか、チェックしてみましょう。
【高卒/3年課程】
【大学卒】
【大学院卒】
4 看護師の年収は本当に高い?
ここまで、看護師の年収に関するリアルな情報を確認してきましたが、看護師の年収は他の職種と比べて本当に高いのでしょうか。全職種との比較や医療・福祉分野の職種との比較、そして生涯年収についても考えてみましょう。
4-1 全職種と比較すると平均を下回る
2019年「賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収が483万円である一方、全職種の平均年収は501万円であることから、全職種と比べると看護師の収入は、突出して高くなく、むしろ平均をやや下回る程度といえます。
看護師 | 全職種 | 差額 |
483万円 | 501万円 | △18万円 |
しかし、看護師の多くを占める女性で考えると、女性看護師の平均年収は481万円、全職種(女性)の平均年収は388万円と、女性労働者の中では高収入を得られる職業だといえるでしょう。
看護師(女性) | 全職種(女性) | 差額 |
481万円 | 388万円 | +93万円 |
4-2【職種別】年収ランキング:看護師は36位
2019年「賃金構造基本統計調査」に基づく、職種別年収ランキングでは、看護師は129職種中36位となっています。上位は航空機操縦士や医師、薬剤師といった高度な専門知識が要求される資格職で占められていることからも、資格職の強さが垣間見えます。
なお、女性のみの職種別平均年収ランキングでは看護師は128職種中19位となっています。
4-3【医療・福祉の職種別】年収ランキング:看護師は6位
医療・福祉分野に絞ると、看護師は6位にランクインしています。
女性では、1位「医師(1,016万円)」、2位「薬剤師(536万円)」に次ぐ3位に看護師がランクインしています。医療現場においては、医師が圧倒的に高い収入を得ているものの、看護師も比較的高収入であるといえるでしょう。
4-4 生涯年収は2億984万円
看護師として、22歳から定年の65歳を迎えるまで働き続けると、生涯年収は2億984万円になります。全職種の平均生涯年収(2億1,622万円)を少し下回る結果となります。
看護師 | 全職種 | 差額 |
2億984万円 | 2億1,622万円 | △638万円 |
一方、女性に限ると、看護師の平均生涯年収は、全職種の平均生涯年収(1億6,666万円)をはるかに超えています。
看護師(女性) | 全職種(女性) | 差額 |
2億984万円 | 1億6,666万円 | +4,318万円 |
これは、看護業界は慢性的な人員不足であり、常に求人があるため一生働き続けることができるという面が大きな影響を与えていると考えられます。比較的安定して一定の収入を得ることはできますが、ハードワークでもあるため体を壊さないように注意しましょう。
5「年代別」「経験年数別」などの気になる区分での年収解説
一般的な企業でも、年齢や勤続年数(経験年数)によって、収入は異なります。では、看護師の場合、年収はどのように変わってくるのでしょうか。ここでは、「年代別」「経験年数別」に看護師の年収データを見ていきましょう。
5-1 年代別年収
グラフより、看護師や准看護師は、就職した後に年々収入を伸ばし、50代をピークに定年退職の年齢(60〜64歳ごろ)から少しずつ低下するという傾向が確認できます。
一方で、看護助手では看護師や准看護師で見られるような30代後半から50代にかけての収入の伸びが見られません。看護助手は業務内容も限られており、パートやアルバイトといった形態で働く方が多いということが、収入増加が鈍くなる原因の1つと考えられます。
5-2 経験年数別年収
看護師・准看護師・看護助手のすべての職種で、経験年数が長いほど収入も高くなる傾向が見られます。収入の増加幅は資格の種類によって異なり、看護師が最も大きくなっています。資格の種類や有無は、経験年数0年のスタート地点における年収額の差だけでなく、その後の収入額の伸びにも影響することに注意しましょう。
6 役職別の年収比較
看護師として順調にキャリアを重ねていくと、役職につく方も出てきます。では、役職の有無や階級によって、年収は大きく異なるのでしょうか。
看護師を抜き出すと下記のようにまとめられます。
看護師の平均税込給与総額(円) | 准看護師の平均税込給与総額(円) | |
非管理職 | 335,015円 | 282,053円 |
中間管理職 | 412,964円 | 380,403円 |
管理職 | 465,979円 | – |
看護師も准看護師も、非管理職より中間管理職、中間管理職よりも管理職のほうが、収入が高くなる傾向があります。勤続年数や経験年数、年齢による部分もありますが、役職手当などの特別手当が支給されることが主な要因と考えられます。
7 海外の看護師と日本の看護師の年収比較
海外の看護師と日本の看護師の年収を比較すると下記になります。
国 | 年収(万円) |
アメリカ | 700万円 |
オーストラリア | 530万円 |
日本 | 483万円 |
アメリカの看護師の平均年収はおよそ69,110ドル(およそ700万円)とされています。
一見、日本よりも高いと感じますが、アメリカでは特に都市部で物価が高いため、生活には困らないものの、裕福な生活を送るのは難しいでしょう。
また、カリフォルニア州では97,000ドル(およそ1,060万円)、サウスダコタ州では50,000ドル(およそ540万円)と、州によって大きく給料相場が異なることも珍しくありません。
物価が日本と大きく変わらないオーストラリアでは、看護師の平均年収はおよそ55,000ドル(およそ530万円)となっています。日本よりも平均年収はやや高いものの、日本やアメリカなどと同様に、看護師になるための労力や業務内容に見合っていないと感じる方も多いようです。
8 まとめ
高収入と言われがちな看護師という仕事。ほかの職業の平均年収と比べて特別に多いわけではありませんが、若い世代や女性といった集団の中では、比較的高い収入となっています。
ただし、資格の有無や役職、夜勤や残業の頻度、勤続年数・経験年数・年齢といった様々な要素で収入額も変わるため、金額だけを見て一概に「高い」「低い」と断言することはできません。看護師の収入の実態をしっかりと理解し、自分の勤務する地域や職種、資格の有無、勤務実態などと照らし合わせてみることが大切です。
(参照リンク)
・厚生労働省 賃金構造基本統計調査
・日本看護協会 2019年病院看護実態調査
・日本看護協会 2019年病院看護実態調査 結果
・日本看護協会 2017年 看護職員実態調査
コメント