逃げたい!看護師に知って欲しい心と体をケアする正しい逃げ方・対処法7選
「看護師の仕事から逃げたい」と思うことは、決して悪いことではありません。
「逃げること」は、自分の心と体を守る方法の1つです。
しかし、逃げるときは正しい方法で逃げることが大切です。また、「逃げたい」と感じたときの解決策は1つだけでなく、様々な方法があることを知っておきましょう。
看護師はやりがいを感じることが多い職業ですが、責任も大きく、心身の負担も決して軽いとは言えません。
当社は訪問看護ステーションですが、9割以上が病院勤務から転職して入社した看護師です。病院時代を振り返った時に、皆一度は「逃げたい」と思ったことがあると言います。
看護師同士で話し合ってみると、以下のような状況で逃げたくなったと言います。
・日々の忙しさと責任の重さに耐えられない
・仕事前になると息苦しさを感じる
・毎日不安になって涙が出る
・せめて3年と思っていたが、「今」が辛い
・両親から看護師という職業を期待されているから簡単に辞めるなんて言えない
・インシデントやアクシデントを起こし、自分の知識や技術の未熟さを痛感した
・患者さんに「もう来ないで」と言われて、精神的に辛い
・人間関係や職場雰囲気が悪く、仕事に行きたくない
・休みが取れない
「逃げたい!」と思う時はたくさんあります。そんな時に1人1人が実践してきた逃げ方・対処法を集め、正しい逃げ方・対処法を整理しました。
「看護師の仕事から逃げたい!」と感じている状態は、精神的に追い詰められている状況であり、「心身ともに健康な状態ではない」ということを、正しく認識してください。
精神的に辛いときには、まずは心と体の応急処置を最優先に行いましょう。応急処置を行ったうえで、少し落ち着いてから「看護師の仕事を辞めるかどうか」をじっくり考えることがポイントです。
この記事では、「看護師の仕事から逃げたい!」と感じたときの正しい逃げ方・対処法をご紹介します。今すぐ実行可能な応急処置や、気持ちを落ち着かせてから考える「本当に逃げるべきかどうか」を判断するポイントも解説しますので、「看護師の仕事から逃げたい」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。
1 逃げたい!と思った時の正しい逃げ方・対処法7選
「逃げたい!」と感じたときにできる正しい逃げ方・対処法には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは心と体をケアする7つの応急処置について解説します。自分にできそうな方法を選び、まずは追い詰められている心と体の回復を図りましょう。
1-1 【病院は休んでいい】病院や同僚に迷惑をかけない正しい休み方
「看護師の仕事から逃げたい」と感じている方は、まずは仕事を休み、しっかりと心と体をケアすることが大切です。有給休暇の取得は働くあなたの権利です。病院側が有給休暇を取る日を決めるのではなく、あなたが決める権利を持っている休暇なんです。
もちろん、周りにそれを知らない人ばかりだと、正しいことを言っても反感を買うだけです。本来の休みに1日だけでも有休をくっつけるなど、職場に配慮しながら、可能な限りいつもより長めの休みを取りましょう。休みの間は、職場のことや業務のこと、勉強のことは考えないよう意識し、ゆっくりと心と体を休めてください。
業務が忙しく、勉強することもたくさんある看護師の仕事。休みがあっても、仕事のことが気になったり、交代制勤務で連休が取りにくかったりと、しっかり休めない方も多いのではないでしょうか。
しかし、「逃げたい」と感じているのは、精神的に追い詰められている状態です。仕事に対して不安な気持ちを抱え、精神的に不安定な状態では、仕事をきちんとこなすことが難しくなることも考えられます。
心身ともに少しでも回復し、「もう少し頑張ってみようかな」と思えるようであれば、職場に戻ってもう一度働いてみましょう。落ち着いて考えた上で、「辞めよう」と思うのであれば、退職・転職を考えることも1つの方法です。まずはきちんと休んで、少しでも心身の健康を取り戻すことを優先してください。
1-2 【とにかくいつもより長く寝る】病院や同僚に迷惑をかけない正しい時間の確保の仕方
睡眠時間と精神状態は非常に密接な関係があり、睡眠時間が短すぎると、健康リスクが高まり、うつ症状も出やすくなります。睡眠時間が足りないことは、「逃げたい」と感じている1つの要因かもしれません。
健康的な睡眠時間は、7~8時間程度といわれています。休みの日にいつもより長く睡眠時間をとることで、「逃げたい」という気持ちを落ち着かせることができるでしょう。
日本人は、世界的に見ても睡眠時間が短い傾向にありますが、特に看護師をはじめとする医療関係者は、激務で交代制勤務であることも多く、睡眠不足になりやすい職業でもあります。
鳥取県内の複数の医療施設を対象に行われた研究によると、総合病院に勤務する看護師の平均睡眠時間は6.05時間でした。また、看護師の半数は、睡眠時間が6時間以下と、慢性的に睡眠が足りていない状態となっています。(参照:「総合病院看護師の勤務条件と職業性ストレスおよび疲労蓄積との関連についての調査研究 」鳥取産業保健推進センター)
また、深い睡眠はコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を抑制できるため、睡眠をしっかりとることでストレスを緩和できる可能性があります。睡眠時間を確保するとともに、質のよい睡眠をとれるように工夫しましょう。
・日中に軽い運動をする
・就寝直前の入浴は避ける
・就寝1~2時間前から、スマートフォンやパソコンの使用を避ける
・寝室の室温や湿度を適切に保つ
1-3 【エクスプレッシブ・ライティング】自分の感情や思ったことをひたすら書き出す筆記開示
緊張時やストレスを感じたとき、不安を感じたときに、ネガティブな感情に支配されないようにするためには、自分の感情や不安な気持ちにしっかりと向き合うことが大切です。
特に、「不安なことがたくさんあって、とにかく看護師の仕事から逃げたい!」と感じたときには、「筆記開示(エクスプレッシブ・ライティング)」という方法が有効です。
筆記開示とは、自分の気持ちや考えていることを、紙などにひたすら書き出していく心理療法のことを指します。気持ちや思考を言語化することで、現在の自分を客観的に見ることができ、ストレスの発散につながります。
また、「自分がストレスを感じるのはどのようなときか」「精神的に辛くなったときに、どのように対処すれば良いか」を見つけることもできます。
■準備するもの
・ノートとペン(パソコンやスマートフォンなどでも可)
■筆記開示の進め方
①負の感情や自分が思っていることを、ひたすらノートに書き出す
②書き出したものを見て、「なぜそのような感情・考えに至ったのか」という原因を考える
③原因に対する対処法を考える
■目安の時間
・10分前後
書き出された心配事の1つでも2つでも対処法を考えることができると、明らかに心が軽くなります。
筆記開示を行った際に、時間と心に余裕があれば、前向きな感情も書き出してみましょう。ネガティブな感情もポジティブな感情も出し切り、現在の自分の状況を再確認することで、本当に逃げるべきかどうかも、はっきりしてくるはずです。
1-4 【身近な人への相談】信頼のおける1番近くの同僚・家族に相談
感情や考えをアウトプットするという意味では、筆記開示だけでなく、自分の身近にいる同僚や家族、友人などに相談してみるのも良いでしょう。
「逃げたい」という気持ちを人に話すだけでもスッキリしますし、声に出すことで頭の中を整理することができます。
他の人に相談する際には、自分が本当に信頼できる人や、自分のことを理解してくれる人、自分の気持ちや考えを肯定してくれる人、今までの頑張りを褒めてくれる人を選びましょう。
このような方に相談すれば、「看護師の仕事から逃げたい!」という気持ちを受け止めてもらった上で、客観的かつ前向きなアドバイスが期待できます。もしかすると解決策も見つかるかもしれません。
1-5 【インナーワード】『今が最高!』と繰り返し思考する
信頼できる人やポジティブな意見をくれる人など、相談できる相手が周囲にいない場合は、自分で自分を肯定し、自分自身を励ましてあげることが大切です。
声に出しても良いですが、勤務中など、言葉を発することが難しい場合もあるでしょう。このようなシーンに備えて、「インナーワード」が常に前向きなものになるよう、意識することが大切です。
インナーワードとは、「声には出さないが、脳内で随時生まれている言葉」を意味しており、一説によると1日で30,000語以上のインナーワードが生まれていると言われています。
言葉の力は決して侮れるものではなく、自分が感じたことや考えたことを実現しようと頭の中が動き、行動に移せることも珍しくありません。
いわゆる「思い込み・暗示による力」であり、「プラシーボ効果」とよばれる現象です。「今が最高!」と意識的に考えることで、ポジティブなインナーワードが連鎖的に発生するため、仕事へのネガティブな考え方も変わっていく可能性が高いです。(参照:ドクターから健康アドバイス プラシーボ効果と心身一如:心が治癒力を左右する)
しかし、労働時間が長く激務であるケースなど、心身の負担に思い込みがついていかない場合もあります。あくまでも「理由はわからないが看護師の仕事から逃げたい!」と感じたときにチャレンジする方法として考えてください。
1-6 【逃げ目標の設定】少し余裕があるなら、こうなったら逃げるという『逃げ目標』の設定
「逃げたい!」と思っているものの、今すぐではない場合には、「こうなったら逃げる」という「逃げ目標」を設定し、それまでは仕事を続けてみましょう。
逃げ目標まで頑張った結果、最終的に病院を辞めることになったとしても、「ここまではきちんと頑張った」という自信がつきます。これから進む道も、前向きに歩いて行けるでしょう。
逃げ目標を設定する際には、期限を具体的に決めることが大切です。「年度末まで頑張ってみよう」「この患者さんが退院したら辞めよう」「次の就職先が決まったら逃げよう」など、客観的なゴールを設定してください。「もっと辛くなったら」など、主観的なラインを設定しないように気を付けましょう。
1-7 【瞑想】緊張や不安が激減するマインドフルネス
「逃げたい!」という不安な気持ちを落ち着かせ、心も体もリラックスさせる1つの方法として、「マインドフルネス」が挙げられます。マインドフルネスのやり方には様々な方法がありますが、ここでは日常生活に取り入れやすいマインドフルネスのやり方をご紹介します。
①背筋をピンと伸ばし、リラックスできる姿勢で椅子に座る(座布団の上で胡坐をかくのも可)。
②目を閉じ、深い呼吸をゆっくりと行う。
③鼻の奥に意識を集中させ、空気の出入りを感じながら呼吸をする。
④鼻の奥から意識が逸れたら、逐次意識を鼻奥に戻す。
⑤強い感情・考えが思い浮かび、意識を鼻奥に戻せなくなったら、お腹に意識を集中させ、空気が入ったときの膨らみや、空気が出るときのへこみを意識する。
⑥③~⑤を2分~3分間行う。
上記④は、自分の感情が動く様子を自分自身で捉えるメタ認知といわれるものです。マインドフルネスを続けることでメタ認知能力が高まります。
メタ認知能力は自分自信が感じる不安や悩みを整理し、落ち着かせる力でもあり、マインドフルネスを続けると、不安や不満を感じることが驚くほど減少します。
毎朝起きたときに行うなど、1日のうち決まった時間・タイミングで行うと、習慣化され、大きな効果を得ることができます。
2 一度逃げて一息ついてから、「本当に逃げるべきか」「逃げないでおくべきか」を考える
様々な応急処置で「逃げたい!」という気持ちをいったん落ち着かせることができたら、次に「本当に逃げるべきかどうか」を考えましょう。「逃げたい」と感じる理由は人によって様々ですが、本当に逃げた方が良い場合と、できれば逃げない方が良い場合があります。
逃げた方が良い場合 | 逃げない方が良い場合 |
・うつ等の疾患を患った ・パワハラ/セクハラ ・いじめ | ・先輩が厳しい ・不規則勤務が辛い ・苦手な業務がある |
これらの他にも「逃げたい」と感じる理由があると思います。では、自分の逃げたい理由が「逃げた方が良い場合」と「逃げない方が良い場合」のどちらに該当するかを判断する基準とは、一体何なのでしょうか。それぞれに共通するポイントを押さえ、本当に辞めるべきかどうかの1つの指標にしましょう。
2-1 【逃げて良い場合】自分の努力で改善が難しいときは逃げて良い
看護師の仕事や現在の職場から逃げたほうが良い場合とは、自分の努力では改善することが難しいことが理由で「逃げたい」と感じているケースです。
例えば、パワハラやセクハラ、職場内でのいじめなどは、自分でもある程度防御策をとることは可能ですが、自分の力だけで克服することは難しいでしょう。頑張りすぎると、精神的にさらに追い込まれてしまう恐れがあるため、その職場・仕事から離れることをおすすめします。
また、「うつ病などの病気を患った」「仕事のことで悩みすぎて、睡眠不足や体調不良が続いている」といった場合は、すでにメンタル的に危険な水域に入っています。この状態が長引くと、社会復帰することさえ難しくなってしまうため、早めに逃げるようにしましょう。
2-2 【逃げない方が良い場合】努力次第で改善が見込めるときは逃げない方が良い
自分の努力での改善が困難な場合は、現在の仕事や職場から逃げたほうが良いと考えられますが、努力や工夫次第で改善が見込める場合は、もう少し踏みとどまってみましょう。
例えば、「先輩が厳しい」という理由。先輩が厳しいのは、後輩をいじめたいからではありません。成長のためにあえて厳しく指導してくれている場合がほとんどです。苦手な業務も、日々の仕事をこなしていく中で上達していくかもしれません。不規則勤務が辛いと感じている方は、今一度、睡眠のとり方や休日のストレス発散方法を考えてみましょう。
このように、応急処置を行った後に冷静になって考えると、努力や工夫次第で改善できそうなケースもあります。一時的な感情に流されないようにしましょう。
3 まとめ
看護師の仕事は、激務かつ責任の大きな仕事です。人間関係のストレスや、睡眠不足・交代制勤務による慢性的な疲れも溜まりやすいため、「逃げたい!」と思うのも当然といえます。
「逃げたい!」と感じたときには、まずは休んだり睡眠をとったりして、自分が落ち着いて考えられる時間を確保しましょう。確保した時間に、筆記開示や周囲の人への相談などで自分の感情や考えていることを整理することが大切です。また、思い込みの力を利用したり、マインドフルネスを行ったりと、メンタル面のケアも積極的に行うことをおすすめします。
落ち着いて考えた結果、努力や工夫次第で改善が期待できる場合は、逃げない方が良いと考えられます。しかし、逃げることは決して悪いことではありません。
自分の力だけでは克服できないと判断した場合は、きちんと逃げることも大切です。重要なのは、心身ともに健康な状態で働くことです。ストレスを感じたときや、「逃げたい」と感じたときは、早めに応急処置を行い、逃げるべきかどうかを判断するようにしましょう。
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