看護師の勤務時間、残業時間、夜勤について
看護師の勤務時間帯や労働時間の長さは、職場や雇用形態によって異なりますが、入院病床のある病院などに勤務する看護師の場合は、日勤と夜勤(準夜勤・深夜勤)といったシフト制勤務(交代制勤務)であることが多いでしょう。
勤務時間帯が変則的である上に1か月単位でシフトを組むことが一般的であることから、実際の労働時間を把握していない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、看護師の勤務時間帯や労働時間について、勤務体系別に詳しく紹介します。残業や夜勤における労働時間もチェックして、看護師の労働時間がどの程度となるか確認し、自分に合った働き方ができる職場で看護師として活躍することを目指しましょう。
目次
1 交代制勤務の職場では変形労働時間制が採用されている場合も多い
大学病院や国公立病院など、入院病床のある医療機関で働く看護師の多くは、常時稼働を止められない職場などで多く採用されている交代制勤務。看護師の仕事は24時間体制であるため、日中に業務を行う「日勤」と夜間に業務を行う「夜勤(準夜勤・深夜勤)」があり、日や週によって勤務シフトが異なることが一般的です。
勤務シフトが週によって異なる場合、「労働時間が1週間に40時間を超えてはならない」とする労働基準法に違反するケースも出てきてしまいます。この問題を法的にクリアするために、交代制勤務のある職場では「変形労働時間制」が採用されていることも珍しくありません。
■変形労働時間制とは
一定の期間での労働時間を平均して算出した1週間あたりの労働時間が、法律で定められた労働時間を超過しなければ、特定の日や週に法律で定められた労働時間を超えて従業員を働かせることができる制度。 |
なお、雇用形態や雇用条件によっては、病棟看護師でも日勤のみという働き方が可能ですが、一般的な雇用条件の病棟看護師の場合、基本的には1か月に数回は夜勤に入る必要があります。夜勤は精神面・体力面での負担が大きいといわれていますが、夜勤がある多くの職場では、看護師の負担を減らすために作られた「72時間ルール」という制度を採用しているため、夜勤シフトが多くなり過ぎることはほぼないといえるでしょう。
では、看護師の心身の健康を守る「72時間ルール」とはどのような制度なのでしょうか。72時間ルールの内容を確認し、夜勤のある職場での働き方への理解を深めましょう。
1-1 72時間ルール
看護師の夜勤における72時間ルールとは、夜勤のある職場に勤務する看護師の健康を守るために定められた、夜勤時間を規制する制度のことです。この72時間ルールを守らない医療機関は、最悪の場合、入院基本料が減算されるというペナルティを受けることになります。
■72時間ルールの概要・ポイント
【制度の概要】 入院基本料を算定している病棟について、同じ入院基本料を算定している全ての病棟の看護職員・看護要員の「月平均夜勤時間数」を72時間以内に収めなければならない。
【制度のポイント】 ●月平均夜勤時間数が72時間を超えた場合、変動が72時間の1割以内(月平均夜勤時間数が79時間以内)であれば、入院基本料が減算されない。 ●夜勤に従事する職員として認められるのは、月の夜勤時間数が16時間を超えた看護職員である(短時間勤務の正職員は月12時間以上)。2016年のルール改正前よりも、育児や介護などで短時間勤務を希望する方を雇用しやすくなった。 ●月平均夜勤時間を72時間以内とするよう定められているのは、入院基本料を算定している病棟だけである。特定入院料を算定している病棟(ICUなど)は対象から外れることに注意。 |
このように、月平均夜勤時間の制限を医療機関側に設けることにより、看護師の労働環境が悪化しないようにしています。ただし、「72時間」という上限は夜勤に従事する職員の平均夜勤時間であるため、夜勤時間が少ない職員がいれば、夜勤時間が80時間よりも多い職員もいることにしましょう。
参考: ttps://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000105050.pdf
2 看護師の勤務体系
看護師の勤務体系は職場や雇用条件によって異なりますが、大きく分けて「日勤のみ」と「交代制勤務」の2種類があります。では、それぞれの勤務体系を採用している職場にはどのような特徴があるのでしょうか。「日勤のみ」が多い職場と、「交代制勤務」が多い職場について、代表的な施設の種類や特徴を見ていきましょう。
2-1 日勤のみの勤務体系
看護師が「日勤のみ」という条件で働ける職場は、「入院設備がない」「施設の開所時間帯が日中のみであることが多い」といった特徴があります。
医療機関であれば、入院設備がない診療所(クリニック)や病院の外来などが該当するでしょう。また、一般企業の保健室のようなところで働く看護師(企業看護師・産業看護師)や、医薬品関連の企業に勤務する看護師は、企業の勤務時間に合わせて日勤のみとなることがほとんどです。
福祉施設では、デイサービスや保育園なども看護師が日勤のみで働ける職場として挙げられます。育児や介護、自身の健康状態などで夜勤が難しい方は、このような日勤のみの職場での勤務も検討をおすすめします。
2-2 交代制勤務の勤務体系
日勤と夜勤の両方のシフトがある交代制勤務を採用している職場には、「入院病床がある」「24時間体制で医療や看護、福祉サービスを提供している」といった特徴があります。交代制勤務を採用している職場の代表例には、入院病床のある病院や老人保健介護施設などが挙げられるでしょう。
入院病床のある病院の規模には大小ありますが、大学病院や国公立病院といった大規模な病院ではさまざまな症例を経験したり、最先端の医療技術や看護知識を身に付けたりできます。看護師として働き始めたばかりの方や、キャリアアップを図りたい方の多くが経験する職場となるでしょう。
看護師の交代制勤務は、職場によって「2交代制(日勤・夜勤の2つのシフト)」と「3交代制(日勤・準夜勤・深夜勤の3つのシフト)」のいずれかとなっています。交代制勤務となっている職場への就職活動や転職活動を行う際には、2交代制と3交代制のどちらが自分に向いているか、よく検討することが大切です。
3 看護師の勤務時間
看護師の勤務体系には、主に「日勤のみ」「3交代制」「2交代制」の3種類があります。では、それぞれの勤務体系では、どのような時間帯に勤務することとなるのでしょうか。
ここでは、看護師の「日勤のみ」「3交代制」「2交代制」の3種類の勤務体系における勤務時間帯についてそれぞれ紹介します。それぞれの勤務体系の特徴を知り、自分に合った働き方ができる勤務体系を採用している職場を選びましょう。
3-1 日勤のみの勤務時間
日勤のみの看護師の場合、勤務先や施設の種類によって勤務時間帯も異なりますが、おおむね「8時~17時」もしくは「8時30分~17時30分」といった時間帯に勤務するこにとなります。
毎日同じ時間帯で働くこととなるため、生活リズムも整いやすく、プライベートの予定も立てやすいというメリットがあります。クリニックや保育園、デイサービスなどといった施設では、休日の曜日が固定されている場合も多いため、家族や友人との時間を十分に取りたい方にもおすすめです。
3-2 3交代制の勤務時間
看護師が働く職場で採用されている「3交代制」は、1日(24時間)を「日勤」「準夜勤」「深夜勤」の3つの勤務時間帯に分け、それぞれの時間帯を交代で担当するシフト制です。3交代制の勤務時間帯の代表例は次の通りです。
■3交代制の勤務時間帯(例)
|
3交代制では、それぞれの勤務時間帯において、途中で45分ほどの休憩を挟みます。実働時間はいずれのシフトも8時間程度となるため、自分の合計労働時間の計算もしやすく分かりやすい割り振り方であるといえるでしょう。
3交代制では夜勤(準夜勤・深夜勤)1回あたりの労働時間が短いため、体力的に自信がない方でもこなせる可能性があります。ただし、夜勤シフトが2種類あるため、1か月間の夜勤回数は2交代制よりも多くなる可能性があることに注意しましょう。
3-3 2交代制の勤務時間
看護師が働く職場で採用されている「2交代制」は、1日を「日勤」と「夜勤」の2つの勤務時間帯に分けて働くシフト制です。2交代制における勤務時間帯の分け方は職場によって異なりますが、主に2つの分け方があることに注意しましょう。
■2交代制の勤務時間帯(例)
【パターン1:1日を12時間ずつに分けたシフトで勤務する】
【パターン2:日勤8時間・夜勤16時間に分けたシフトで勤務する】
|
最近では、日勤8時間・夜勤16時間で割り振っている2交代制の職場も多くなっています。
夜勤の日は、入院患者さんからのナースコールや、救急車・急患の受け入れがなければ、勤務時間内で数時間の休憩や仮眠をとれますが、その分夜勤1回あたりの勤務時間は長くなることに注意が必要です。ただし、1か月間の夜勤回数は3交代制よりも少なくなることが多いため、夜間の勤務を減らしたい方にはおすすめの働き方といえるでしょう。
4 看護師の残業時間は?
看護師は多忙な職種であり、場合によっては本来の勤務時間内に業務が終わらないことも珍しくありません。
救急車の受け入れや急患などがあれば、しかるべき対応をした後で次のシフトに入る看護師に引き継がなければならないため、職場によっては残業が発生することも多々あります。病院勤務の看護師の場合は緊急対応などもあるため、時間外労働が発生しやすいといえるでしょう。
一方で、クリニックやデイサービス、保育園などといった職場では、ある程度業務時間が定まっているため、病院勤務の看護師と比較すると残業は少なめであることが一般的です。ただし研修や勉強会などが勤務時間外で行われることも多いため、セミナーなどに参加することが多い方は残業が多くなる可能性があります。
このように、看護師の残業時間数は、勤務先や個人の働き方によって大きく異なりますが、残業が全く発生しない職場は多くありません。大なり小なり残業は発生するものとして考えておきましょう。
4 夜勤について
看護師の勤務体系のうち「2交代制」「3交代制」を採用している職場では、準夜勤や深夜勤を含む夜勤が発生します。
入院病床のある病院の場合、24時間体制の看護が必要となるため、夜勤に入る看護師は不可欠です。しかし、人間の体内リズムに逆らって労働することとなる夜勤は、看護師にとって身体的にも精神的にも負担が大きくなってしまいかねません。
このような看護師の負担を軽減するために、近年では多くの病院で次のような対策が講じられています。
■夜勤を行う看護師の負担軽減策(例)
|
就職活動や転職活動を行う際には、上記のような対策が実施されているか確認することも重要です。現在勤務している職場で上のような対策が取られていない場合には、先輩や上司などと負担軽減のための対策について相談してみることをおすすめします。
5 まとめ
看護師の仕事はハードであり、体力的にも精神的にも負担が大きいと感じることも多々あります。プライベートとの両立を重視したい方や、健康上の理由などから変則的な勤務が難しい方は、「日勤(8時間勤務)のみ」で残業もほとんどない職場を選ぶことも1つの方法です。
しかし、キャリアアップを狙いたい方や、新卒で看護師としての知識や技術をこれから身に付けていく必要がある方などの中には、「2交代制」や「3交代制」といった夜勤がある交代制勤務を採用している病院(大学病院など)での勤務を希望している方も多いでしょう。
夜間の勤務や変則的な労働は、日勤のみといった働き方よりも、心身ともに負担が大きいといわれています。しかし、夜勤がある職場の場合、「平均夜勤時間に上限が設定されている(72時間ルール)」「基本的には8時間労働であり、労働時間が長くなり過ぎないようにシフトが設定されている」「規則的な夜間配置となっている」「夜勤中に十分な仮眠時間がある」など、看護師の労働環境に配慮した勤務体系となっていることが一般的です。
このように、最近では夜勤のある職場でも看護師の負担を減らす工夫も行われています。「夜勤がある職場=ハードな職場」と決めつけず、夜勤の回数やシフトの入り方、残業時間なども考慮して、自分に合った職場で働くことを目指しましょう。
コメント