看護師から目指せる!養護教諭の仕事内容と目指せるルートを徹底解説

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看護師から目指せる!養護教諭の仕事内容と目指せるルートを徹底解説

養護教諭と言えば、学校の保健室の先生

養護教諭は教員であり、短大や4年制大学の養護教諭養成課程を専攻して目指される方が一般的です。

一方で、養護教諭にはある条件を満たすと看護師からでも転職することができます。また、看護師になるための「看護師受験資格」と養護教諭になるために必要な「養護教諭一種免許」の両方を取得できる看護系大学もあります。

本章では、今現在看護師として働いていて養護教諭に興味のある方、将来の進路を看護師か養護教諭か悩まれている方の参考になるように、養護教諭の仕事内容や実際のなり方、お勧めの方法などをご紹介していきたいと思います。

採用情報

1 養護教諭の仕事内容・役割

保健室の先生である養護教諭ですが、その仕事内容について、しっかりとイメージできる方はそんなに多くはないのではないでしょうか?

養護教諭の仕事内容・役割は主に以下の5つです。

  • 救急処置
  • 学校環境の管理 
  • 保健指導・保健学習
  • 健康診断の管理
  • 保健室相談

それでは紹介していきます。

1-1 救急処置

まず第一の仕事としては、学校でケガや病気になった子どもの救急処置が挙げられます。

救急処置は、学校における医療専門職としての養護教諭にとって、より専門性を発揮する場であり、子どもや保護者、他の教職員からの期待度の高い職務です。

普段は小さな擦り傷の消毒や発熱時の観察くらいになりますが、症状が深刻な場合は、担任や校長の許可を得て救急車を要請したり、保護者に連絡して病院に連れていったります。

1-2 学校環境の管理

学校環境の管理も養護教諭の仕事の一つ。

学校は、環境の影響を受けやすい子どもが一日の多くの時間を集団で過ごす場です。学校環境衛生が子どもたちの健康や学習能率に大きな影響を及ぼします。

具体的には、飲料水の水質、施設・設備の点検や衛生環境の確認、教室の換気や温度、騒音などの点検などが挙げられます。

1-3 保健指導・保健学習

養護教諭は、学校における医療専門職としての役割とともに、教育者の役割も担っています。

教育者としての仕事としては、感染症の予防のために手洗いうがいの励行や、学校行事で行う保健指導の立案などが挙げられ、全校集会や担任と協力して授業やホームルームなどで指導を行います。

1-4 健康診断の管理

学校内の健康診断の計画立案や準備は、養護教諭の仕事となります。健康診断当日には医師の診察結果を書類に書き込むなどの補助を行います。また、子どもの健康状況を把握するために、食事・睡眠といった生活リズムなどの調査をしたりします。

1-5 保健室相談

保健室を訪れる子どもの相談に応じることも養護教諭の仕事です。

保健室への相談内容は大きく二つの分けられます。

一つ目は、病気や身体の健康に関することです。

たとえば、持病があって激しい運動ができない子どもは教科担当の教員に体調について報告するように勧め、周囲の子どもたちも理解できるように説明します。このように、病気を抱える子どもが安心して過ごせるような働きかけをするのも養護教諭の仕事の一部です。

学校生活の中で注意することを教えたり、健康面での問題によって不利益な事柄が生じないようにアドバイスをすることもあります。

二つ目は、心に関する相談です。

保健室には、身体に関することだけでなく、学校生活や進路、家庭での悩み、心に関する相談も増えてきており、養護教諭にはカウンセラー的な役割も担います。状況に応じて保護者や関係機関との橋渡し役になることも大事な業務の一つです。

こういった心に関する相談の中で、保健室登校での対応は想像しやすいのではないでしょうか。

保健室登校を”登校の一形態”として認める学校も増えています。子どもの中には、すぐに教室に入れない子や教室にはいれないけれど、保健室なら大丈夫という子どもにとって、保健室は学校の中で唯一の子どもの居場所で、養護教諭の関わりや存在自体が子どもの安心に繋がります。


2 養護教諭の休みと福利厚生 ~看護師との比較~

養護教諭は基本的に土日祝休みでしっかりと休みを取ることができます。

公立の養護教諭は公務員の身分で働くため、法律で定められている通り、休みはきちんと取得できます。

このほか、年末年始の連休や年次有給休暇、病気休暇、夏季休暇、妊娠出産休暇、育児休業などの福利厚生が充実しています。例えば、育休は公務員ですので3年取得できたりします。

養護教諭は非常に女性が多い職業ですが、出産や育児に関する休みが取得しやすく、また復帰後も家庭との両立をしやすいため、長く安定して勤めることができます。

一方の看護師は、病院勤務の場合、基本的に夜勤ありのシフト制であることが多いため、生活リズムは不規則になりがちです。大きな病院であれば福利厚生がしっかりしていますが、公務員並に休みの数が多いところも多くはないでしょう。


3 養護教諭の給料 ~看護師との比較~

養護教諭は公務員であり、他の教員と基本的に給与体系が同じです。厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によると、高校教諭の平均年収は約710万円(平均年齢43.7歳・14.3年)となっています。

同じ統計調査では、看護師全体の平均総年収は483万円となっています(平均年齢39.5歳・平均勤続年数8.2年)(参考:看護師の総年収は483万円!手取り、賞与、残業代の全てを徹底解説【わかりやすいグラフ付き】)

平均年齢や平均勤続年数が看護師平均年収データの方が短いため、単純な比較はできませんが、公務員である養護教諭の方が、長く働くことによって収入が確実に上がってくることが考えられます。


4 養護教諭になるための2ステップ

養護教諭になるためには、大まかに言うと以下の2ステップを踏みます。

①養護教諭免許状を取得する

②養護教諭採用試験に受かる

それでは、解説していきます。

4-1 養護教諭免許状を取得する

養護教諭になるには養護教諭免許状が必須になります。養護教諭免許がないと、養護教諭採用試験を受けることができません。

養護教諭免許状は経路によって以下の3種類存在します。

  • 大学を卒業して取得する「一種免許状」
  • 短大・専門学校を卒業して取得する「二種免許状」
  • 大学院を修了すると取得できる「専修免許状」

いずれの免許状でも養護教諭採用試験を同じように受験できます。

看護師が養護教諭の免許を取得する方法は、看護師資格のみなのか、保健師資格も持っているのかで違ってきます。

◯看護師資格のみ

看護師資格のみの方は、文部科学大臣が指定する養護教諭養成施設に1年以上在籍して、指定の科目を修得して卒業することで、養護教諭の一種免許状を取得できます。

この養護教諭養成施設は以下の7ヶ所しかありません。

  • 北海道教育大学
  • 山形大学
  • 新潟大学
  • 金沢大学
  • 岡山大学
  • 熊本大学
  • 富山県立総合衛生学院

◯看護師資格 + 保健師資格あり

保健師資格を有する場合は、文部科学大臣が指定する養護教諭養成施設に半年以上在籍して、必要な単位を修得して卒業することで、養護教諭の一種免許状を取得できます。

また保健師資格がある場合、教職員免許法施行規則第66条の6に定める単位を修得する方法で、養護教諭の二種免許状を取得する手段もあります。

教職員免許法施行規則第66条の6に定める単位とは、日本国憲法2単位、体育2単位、外国語コミュニケーション2単位、情報機器の操作2単位です。

これらの8単位は、各大学で科目履修生として修得することもできますし、放送大学でもこれらの単位を取得できます。

4-2 養護教諭教員採用試験を受ける

養護教諭免許状を取得後、公立学校での勤務を希望する場合、各都道府県(市)の教育委員会が行う、教員採用試験に合格することが必要です。教員採用試験が行われるのは年に1度です。

各自治体によって異なりますが、出願から採用が決まる合格発表までの流れとおおよその時期としては以下になります。

3月~5月

説明会実施、募集要項・出願書類配布期間

4月~6月

出願期間

7月

一次試験

7月~10月

一次試験結果発表

8月~10月

二次試験

9月~10月

合格発表

試験内容としては、一般教養、教職に関する知識を問う学力試験、論文試験、人物試験(面接)などが行われます。

また、模擬授業によって指導能力や子どもとのかかわり方などを見られる試験を実施している自治体もあります。

4-3 養護教諭教員採用試験は倍率6.7倍の狭き門

養護教諭教員採用試験は倍率6.7倍の狭き門です。

以下は、平成30年度公立学校教員採用選考試験の各倍率です。

  • 小学校    3.2倍
  • 中学校    6.8倍
  • 高等学校   7.7倍
  • 特別支援学校 3.5倍
  • 養護教諭   6.7倍
  • 栄養教諭   7.4倍

高等学校が最も高いですが、養護教諭も中学校同様に高い倍率であることがわかります。この養護教諭の倍率6.7倍というのは、7名のうち1人しか合格しないという意味になります。

また、教員採用数が多い都市部の倍率が低く、地方の倍率が高くなる傾向にあります。公立学校の場合、自治体によっては倍率が20倍~30倍になることもあります。

養護教諭は基本的に1つの学校につき1人なので、倍率が非常に高くなるため、その点で難易度は高いのです。

下記は、平成30年度公立学校養護教諭教員採用選考試験の既卒・新卒の受験者数と合格者数になります。

こちらを見てわかるように、受験者の約70%が既卒者になります。合格者数の割合は新卒者、既卒者変わらず、およそ14~16%です。

このように、養護教諭は難易度が高く、ほとんどの人が何度も受験しているのが現状です。

参考:平成30年度公立学校教員採用選考試験の実施状況 第1表 受験者数、採用者数、競争率(倍率)

4-4 採用試験に落ちた場合は非常勤講師などで働く

採用試験に落ちた場合は、多くが「臨時的任用教員」または「非常勤講師」として働きながら、教員採用試験を受験し続けることになります。

「臨時的任用教員」、「非常勤講師」も正規雇用の教諭が産休や育休を取ったり、疾病や家族の介護、あるいは長期研修に参加するため休まなければならなくなった場合に限りますので必ずしも、働けるわけではありません。また、何年受けても受からない人も存在するのも事実です。

【コラム】養護教諭免許状の「一種」「 二種」「専修」の違い

養護教諭免許状には「一種」「二種」「専修」の3種類があります。

4年制大学で取得できる「一種」、2年制の短大で取得できる「二種」、大学院で取得できる「専修」と取得方法とそのための期間に違いがあるものの、どちらの免許状を持っていても、養護教諭になってからの仕事内容に違いはありません。

どの免許状を持っていても職務上の差はありませんが、初任給やキャリアパスで違いが出てきます。取得方法自体に学歴の違いがありますので、「専修(大学院卒)」>「一種(大学卒)」>「二種(短大卒)」という形で差がでてきます。

キャリアパスは、もし将来的に管理職(校長など)を目指すのであれば、できるだけ上級の免許状を取得しておくほうがよいです。最低限でも「一種」、また「専修」の免許状があると、キャリアアップに近づきます。


5 養護教諭になる方法【おすすめルート別】

前章では、大まかな養護教諭になるステップを紹介しましたが、実際には以下の図のように養護教諭採用試験までいくつかのルートがあります。

養護教諭になるルート

本章では養護教諭になるルートをメリット・デメリットも加えて解説していきます。

5-1 とにかく最短で目指したい方は短期大学

とにかく最短で目指したい方は2年で二種免許状を取得できる短期大学をおすすめします。

メリット① とにかく最短

短期大学ルートのメリットはとにかく最短で目指せることです。最短ということは、学費も少なく抑えることができますし、卒業後は早くから社会人として生計を立てられるとも言えます。

デメリット② 学べる範囲が少ない

短期大学は4年制大学よりも期間が短い分、学べる範囲が少ないです。

短大の方よりも4年制大学出身の方の方が採用率は高い傾向にありますが、大学の違いというよりは、あくまでも4年制大学出身の方が教員採用試験に必要な基礎学力があるためと考えられます。また、近年採用される養護教諭の8割が養護教諭第一種免許状を持つ人といわれており、短大の方が、採用試験対策ができる時間が短いという点ではデメリットと言えます。

デメリット② 就職浪人のリスクがある

養護教諭を目指される方のほとんどが新卒採用されないのが現状ですので、就職浪人のリスクがあります。4章でも紹介しましたが、全国平均で7名中1名しか採用されないため、就職浪人する覚悟は必要でしょう。

何年受けても受からない人も存在します。採用されれば安泰ですが、それまでは将来の不安を抱えることもあるでしょう。

5-2 絶対に養護教諭と決めている方は4年制大学の教育学部

絶対に養護教諭になると決めている方は、迷わずに4年制大学の教育学部をおすすめします。

メリット① 養護教諭になる勉強に集中できる

4年間とゆとりを持った時間で養護教諭になるための教育をしっかりと受けることができます。また、短大と違い、一種免許状が取得できるため、養護教諭になった後のキャリアも考えたい方にもおすすめです。

デメリット② 就職浪人のリスクがある

短大の所でも紹介しましたが、養護教諭一本の進路のため就職浪人のリスクがあります。

短大よりは、教員採用試験への対策ができる期間があることはプラスです。しかしながら、倍率が高いため多くの方が受からないのも事実です。

5-3 看護師か養護教諭か悩まれている方は両方取得できる看護系大学

全てではありませんが、看護系大学の中には「看護師国家試験受験資格」と「養護教諭一種免許」の両方を取得できる大学があります。

「看護師国家試験受験資格」と「養護教諭一種免許」の両方を取得できる看護系大学の数は下記になります。

  • 私立大学:59校
  • 国公立大学:25校

2019年4月時点 参考URL:養護教諭1種の免許を取得できる看護系大学一覧

看護師か養護教諭か悩まれている方は両方取得できる看護系大学をおすすめします。

メリット① 就職浪人のリスクが減らせる

養護教諭教員採用試験は狭き門のため、基本的に新卒で採用されることは少ないです。

看護師の資格があれば、少なくとも就職で困ることはありません。

メリット② 選択肢の幅が増える

看護師資格と養護教諭一種免許の両方を取得できる看護系大学に進むことで、選択肢の幅を持つことができます。養護教諭以外になる道を残すことで、養護教諭への教員採用試験に挑む際も心の余裕を持ちながら取り組むことができます。

また、養護教諭になりたい理由が、「学校の保健室の先生になりたくて、公立、私立にこだわらない」という方であれば、養護教諭免許状がなくても看護師免許があることで、私立学校、専門学校や大学での学校看護師として働く選択肢も増えます。養護教諭としてではなく、看護師として働きますので、健康教育や性教育などの授業は行いませんが、それでも養護教諭に近い仕事をすることができます。

デメリット① 勉強が大変

看護師資格と養護教諭免許を卒業と同時に取れるようにカリキュラムは組まれてますので、当然看護師資格だけよりも勉強は大変になります。勉強をして努力できる方におすすめです。

5-4 看護師からの転職を目指す方

看護師から養護教諭に転職を目指す方も少なくありません。看護師が養護教諭の免許を取得する方法は、看護師資格のみなのか、保健師資格も持っているのかで違ってくることは、4章で説明しましたが、養護教諭免許状を取得するまでに概ね半年~1年はかかります。

メリット① 看護師経験が活かせる

看護師からの転職のメリットとしては、看護師としての勤務経験が直接養護教諭としての仕事に活かされることです。養護教諭になるには看護師の資格が必須ではないものの、仕事内容からも医療の知識は必要です。特に、救急処置や対応については、ある程度場数を踏まないと落ち着いた判断はできないものです。病院勤務の方であれば、日常的に経験できている点が大きなポイントだと思います。

メリット② 生活の安定性が得られる

5-3でも記しましたが、養護教諭免許状がなくても看護師免許があることで、私立学校、専門学校や大学での学校看護師として働く選択肢もありますので、その場合は、追加の履修期間はなく目指せる形になります。

看護師としての道も選択肢として残っているため、生活の安定性は担保されつつ目指せることが挙げられます。

デメリット① 看護師の仕事をしながら目指すのが大変

看護師免許を活かしつつ看護師として働きながら養護教諭を目指すのは体力的精神的に大変でもあります。

収入や生活は安定しますが、それと同時に看護師としての仕事も大変であるからです。看護師の仕事が大変で、採用試験の受験勉強が疎かになれば、受かる可能性は低くなり、結果的に中途半端な形になってしまう可能性もあります。


6 まとめ

保健室の先生である養護教諭は、人気が高く採用枠が少ないことから、実際に、養護教諭になるには難易度が高いと言えます。看護師という選択肢が絶対ない方であれば、教育学部などのルートを選択すべきです。

一方で、看護師も選択肢として考えている方であれば、個人的には看護師免許とのダブル取得を狙うのがおすすめです。既に看護師の方にとっては、養護教諭に転職することは決して簡単な道ではないですが、チャレンジしてみる価値はあると思います。

 

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