転職前に知るべき精神科看護師の仕事内容・悩み・やりがいなどの全て
精神科の看護師って、どんなイメージを持っていますか?
「特殊な現場」「なんだか怖そう」
そんなイメージをもたれている方が多いのではないでしょうか?
ストレス社会と言われる現代。鬱病など精神疾患を患う方も多い世の中。
そんな方々の支えになりたい、精神科でスキルを上げて患者さんに寄り添う看護をしてみたいと思っている方にとっては、転職のための情報が少ないのも事実かと思います。
本稿では、精神科での看護師の仕事内容や役割、特有の悩みなど、今後精神科の看護師へ転職を考えている方に役立つ情報を書きました。最後まで読めば、きっと転職するべきかどうか決められるかと思います。
目次
1 精神科看護師の仕事内容・役割
まずは精神科の看護師の仕事内容やどんな役割があるのかは知りたいところですね!!
精神科の看護師の仕事内容は大きく下の4つです。
- コミュニケーションによる心理ケア
- 患者さんの精神症状・身体症状の把握やアセスメント
- 日常生活動作の援助
- 与薬
それでは、一つずつ解説していきます。
1-1 コミュニケーションによる心理ケア
コミュニケーションによる心理ケアは、精神科の看護師の仕事として非常に重要です。
他の診療科との最も大きな違いは、患者さんの疾患の身体的なけがや病気ではなく「心の病」であること。
そのため、コミュニケーションによる心理ケアが患者さんの回復に必要不可欠になります。
例えば、もしあなたが自分の業務で忙しい時に、患者さんから「看護師さん、ちょっと話したいことがあるのですが。」と声かけられた時はどうでしょうか?「ちょっと待って」なんて言ったりしないでしょうか?
精神科の患者さんにとっては、そういった何気ない言葉でも、物凄い勇気を出したものだったかもしれません。その勇気に「ちょっと待って」の一言は重い一言にもなり得ます。
精神科の患者さんにとっては、簡単なやりとり一つ一つが大事なやりとりでもあり、看護師とのコミュニケーションでの関わり合いが大事な時間なんです。
精神科の患者さんは治療期間が長く、完治しないケースも少なくありません。他の診療科と比べても、長い付き合いになることも多いので、より一層信頼関係が大切になります。
1-2 患者さんの精神症状・身体症状の把握やアセスメント
患者さんの精神症状・身体症状の日々の把握やアセスメントは大事な仕事です。
精神疾患の患者さんは、自分の状態を把握したり他人に上手く伝えたりすることができないことも少なくありません。また興奮や暴言・暴力といった手段で自分の気持ちを表現することもあります。
例えば、身体的な症状、腹痛や頭痛がある時に「お腹の中に蛇がいる」「頭に何かいる」などと、まるで幻覚や妄想のような訴えをする場合も。
その訴えは精神症状なのか、それとも身体症状なのかを鑑別することが大事で、なるべく早期にキャッチして医師に報告する必要があります。
1-3 日常生活動作の援助
精神疾患の患者さんは、精神症状の影響で日常生活動作の援助が必要な方が多いです。
例えば、アルコール離脱の患者さんに薬で鎮静をかけたり、興奮状態で危険行動のリスクがある患者さんには身体拘束をしていたり、鬱病や統合失調症の患者さんは、何事に対しても関心が薄くなり、身だしなみにも無頓着状態、などなど。。
このように精神疾患の患者さんは、精神症状の影響のため日常生活動作を援助していく必要があります。
1-4 与薬
精神科における最も一般的な治療は薬物療法のため、与薬が精神科の看護師の重要な役割になります。
与薬のときに大切なのは、看護師の前でしっかりと飲み込んでもらい、それを確認することです。
例えば、患者さんの中にはうまく舌の裏に隠して後で吐き出す方や、飲み込まずに薬を隠して後で一気に飲むことで自殺しようとする方もいらっしゃいます。
他の科と違い、このように与薬に対して一筋縄にいかない患者さんもいることは覚えておいた方が良いでしょう。
2 精神科看護師の1日のスケジュール
精神科の看護師の1日のスケジュールを知ると、より一層転職時のイメージができるかと思います。
下記にスケジュール例を示します。
スケジュールとしては、一般病棟と同じようなサイクルで行われます。
ただ、精神科の場合は他の病棟と比較してバタバタしている訳ではないので、患者さんと落ち着いて向き合うことができます。
3 精神科看護師にまつわる7つのQ&A
精神科の患者さんは何をするかわからない、暴力や暴言が怖くて働くのに抵抗があると考える看護師さんもいるかと思います。
基本的に暴言や暴力は入院時の急性症状として認められることが多く、しっかりと投薬管理されていればその症状はおさまります。精神科の回復期や慢性期の現場では力仕事や危険な事は少なく、女性看護師も多く働いています。そのため、精神科希望だけど、暴力や暴言が怖くて、という方であれば絶対に慢性期をお勧めします。
精神科の回復期や慢性期病棟における暴言・暴力は、突発的ではなくある程度の前駆症状がみられてから起こります。暴言・暴力の前駆症状では、患者さんのイライラ感や不安・不満の訴え、引きこもり行動、表情の変化などがみられ、看護師の申し送りで情報交換をして早期に対策することでリスクを減らしています。
院内においても暴言・暴力行為に関する勉強会や訓練をしていることが多いため、その点は安心できる材料かと思います。
時間外が少なく他の病棟よりも残業代が少ないですが、基本夜勤回数などでの増減が大きいでしょう。患者さんの精神状態によっては暴力行為などの看護師自体に危険や被害が及ぶ可能性があり、それを踏まえて危険手当が付けられる病院もあります。危険手当の金額平均は、大体1万円程度です。
精神科の病棟は慢性期病棟の方が多いですが、急性期病棟も存在します。
急性期病棟では重い症状の患者さんを主に受け持つことになりますから、急患でバタバタと対応したりしなければいけないこともあり得ます。
患者さんとじっくり対話しながら精神看護に携わっていきたい方は、慢性期病棟で働くほうが向いているかもしれません。
一般病棟のように、時間指示でしなければいけないことやナースコールの対応、食事や排泄の介助などがある一方、夜間帯は特に精神科の患者さんは不安定になりやすく、自傷行為や自殺行為のリスクが高くなります。特に夜勤は人手が少ないこともあり、患者さんも止められる可能性が低いそういった時間に行動をします。
私の経験にはなりますが、例えば、窓が割れていて患者さんが血だらけになっていたこと、全身拘束してミトンまでしていたけれど、全部引きちぎってベッドの上に立っていたことも。(今でもどうやって外したのか疑問ですが。。)
夜勤の際に気をつけるポイントは下記の3つです。
- 頻回な巡回
- 施錠の確認
- 危険物の回収
危険物というのは、わかりやすいもので言えば、ハサミや爪切りなどの刃物類、わかりにくいもので言うと、お箸、ティッシュ、洗剤などです。例えば、ティッシュも喉に詰まらせることで窒息することもできます。
ただ、色々と書いてきましたが、基本は穏やかな夜勤が多いのでご安心を。
新卒で精神科に勤めた場合、身体の知識・技術が身につかないという不安は誰しも持つものだと思います。しかしながら、当然精神疾患の患者さんも、他の病気を持っていたり、併発している場合も多いです。
最近では、精神疾患の患者さんの高齢化もしているため、他の内科疾患を勉強する機会も増えていると思います。その中でも、研修制度・教育制度がしっかりしている病院を選択すれば、新卒でも全般的な勉強はできると思います。
精神科の救急外来や緊急入院を受け入れている病棟では、急性症状をきたしている患者さんに対する必要があります。暴れる患者さんを押さえる必要があるために男性看護師の方が女性看護師よりも多いです。
一方、急性期以外の精神科療養病棟や認知症病棟では、看護師の男女比は同比率もしくは女性看護師の方が多い傾向にあります。
4 転職前に知っておくべき精神科看護師の4つの悩み
転職後に後悔しないためにも、精神科の看護師特有の悩みを知っておいた方が良いでしょう。
精神科の看護師の悩みを以下に4つ挙げます。
- 患者さんのネガティブな思考で自分自身も病む
- 身体抑制しなければならないことが辛い
- 看護計画がスムーズに進まないケースが多い
- 看護師としての医療技術が乏しくなりやすい
4-1 患者さんのネガティブな思考で自分自身も病む
精神科看護師の悩みの一つに、患者さんのネガティブな思考が伝染して自分の気持ちも病んでしまうことが挙げられます。
1章で紹介しましたが精神科の看護師の仕事にコミュニケーションによる心理ケアがあります。
患者さんの話をとにかく聞いてあげることが第一歩になりますが、精神科の患者さん特有の重たい・ネガティブな話をひたすら延々と聞いていると、いくら根が明るい人でも、悪い方に引っ張られてしまいます。
私自身も初めのうちは仕事が終わるとどっと精神的に疲れたのを覚えています。実際に、精神科で働いている看護師の先輩が鬱状態になってしまったこともありました。
距離感を保ちながら接することが大事なのですが、距離感が保てずに患者さんへ感情移入しすぎる人は難しいかもしれません。
また、プライベートで気分転換になるような趣味を持っておくのも大事になります。
4-2 身体抑制しなければならないことが辛い
精神科では精神状態により患者さんを身体抑制しなければならないことがあり、それをつらいと感じて悩んでしまうことがあります。
患者さんの安全のため必要な措置とは理解しているものの、身体抑制に戸惑い衝撃を受ける看護師は少なくありません。
4-3 看護計画がスムーズに進まないケースが多い
精神科の患者さんは、入院から退院までの看護計画が進まないことも多くあります。
精神科の急性期ではまず隔離部屋や閉鎖病棟へ入院し、回復期になると開放病棟へ、そして自宅やグループホームへ退院というステップで患者さんの症状に合わせて看護計画を立てていきます。
しかし、患者さんの症状が改善しても、患者さんの家族が様々な事情で自宅への退院を拒否するということがあります。
このような理由から退院への看護計画がスムーズに進まずに長期入院が多くなってしまうことは、働いていて悩みと感じることです。
4-4 看護師としての医療技術面が乏しくなりやすい
精神科は医療行為が少ないために、医療技術面が他科の看護師よりも乏しくなりやすいことが精神科看護師の悩みの一つとして挙げられます。
他科の看護師と比べると、例えば、他科でよく使われる医療機器の扱いやマーゲンチューブ・胃瘻の管理、創傷処置といった経験はどうしても少なくなってしまいます。
精神科自体が、医療行為よりもコミュニケーションや精神的ケア、生活指導などが中心となる診療科であるので、医療技術面が乏しくなることはある程度仕方がないことだと思った方がよいです。
将来的に内科や外科などへの再転職を考えている方にとっては、医療技術の苦手意識から一歩踏み出せないなんていうこともあるでしょう。
その一方で、精神疾患の患者さんや家族の精神的ケアという精神科の看護師として得られる経験は、他科ではなかなかできないため、他科へ転職や異動した場合には頼りにされる場面もあり、必ずしもマイナスではない一面もあります。
精神科看護師の悩みは、以下の4つです。
・患者さんのネガティブな思考で自分自身も病む
・身体抑制しなければならないことが辛い
・看護計画がスムーズに進まないケースが多い
・看護師としての医療技術が乏しくなりやすい
他の科と違い、患者さんとの関係性で悩ませることもあるため、ストレスに対する対応法を持っていると良いでしょう。
5 精神科看護師の3つのやりがい
悩みがある一方、精神科の看護師のやりがいも当然あります。
精神科の看護師のやりがいを3つ挙げます。
- 患者さんの笑顔が見れること
- 看護師の果たす役割が大きい
- 他では学べない専門分野を学べる
5-1 患者さんの笑顔が見れること
患者さんの笑顔を見れることは、精神科の看護師のやりがいの一つです。
精神科の看護師は他の科と比較しても、患者さんとの信頼関係を大事にして、コミュニケーションをとることも多くなります。
また、入院期間も長くなりがちなため、その患者さんが笑顔になっていく、回復する姿が見れることはより一層の喜びに感じられるでしょう。
5-2 看護師の果たす役割が大きい
精神科の患者さんにとっては、薬物療法とともに他者とのコミュニケーションも治療に効果的な方法です。
関わり合いの強い看護師さんの果たす役割は非常に大きく、それ自体が看護師にとってはやりがいの一つになります。
5-3 他では学べない専門分野を学べる
精神科の領域は他の診療科と比べて特殊なため、かなり専門性が高い分野を学べることはやりがいに繋がります。精神疾患の知識だけでなく、精神疾患の患者さんの対応やコミュニケーションスキルは、精神科の看護師ならではのものです。
さらに精神科の看護師として、より専門性を高められる資格として「精神科認定看護師」があります。
そういった、より専門性を高められる環境にあるのもやりがいの一つです。
詳細は下記を参照ください!!
精神科で働く看護師のスキルアップに役立つ資格2選〜資格取得の流れ・費用・合格率〜
6 こんな方にお勧め。精神科看護師に向いている人の3つの特徴
ここでは精神科の看護師に向いている人の特徴を紹介します。
向いている人の特徴は下記の3つです。
- コミュニケーション力がある
- 精神の専門的な知識を身につけたい人
- 観察力がある
それでは解説していきます。
6-1 コミュニケーション力がある
コミュニケーション力がある人は精神科看護師に向いています。
精神科は心のケアをする診療科ですから、患者さんとのコミュニケーションが重要。
精神科の患者さんはコミュニケーションが苦手な患者さんもいます。そのような患者さんとコミュニケーションをとっていける力がある方は精神科看護師に向いていると言えます。
「コミュニケーションはちょっと。。」
そんな方でも、コミュニケーション力は高められるスキルであることをお忘れにならないように!!
精神科の先輩看護師の患者さんとのやりとりから、勉強していけばコミュニケーション力もついてくると思います。
6-2 精神の専門的な知識を身につけたい人
精神の専門的な知識を身につけたいという明確な目標がある方にはお勧めします。
医療技術面が乏しくなりやすいデメリットがある一方、精神の専門知識やスキルは他の科では学べません。
6-3 観察力がある
観察力がある人は精神科の看護師に向いています。
精神科の患者さんは、自分の体の不調を上手く伝えることができない人が多いです。看護師は患者さんの少しの変化にも気づける観察力が必要です。
一方、観察力は、日々の経験から培われる部分も多くあります。転職を考えている方で、今は観察力に自信がなくても、経験値で身につく部分があることは考慮しても良いと思います。
7 まとめ
精神科の看護師について紹介してきました。
精神科は心の病気を扱う科のため、患者さんとの信頼関係やコミュニケーションが非常に大切になります。他の科と比較して特殊な面がありますが、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください!!
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