地域包括ケア病棟で勤務する看護師の役割の全てを事例とともに徹底解説!
地域包括ケア病棟から退院された患者さんが自宅に戻ってから『最後にお世話になったあの看護師さんにもう一度あって感謝の気持ちを伝えたい』と思ってもらえるような看護をしませんか?
患者さんからここまで思ってもらえる看護をするために大切なのが「地域包括ケア病棟で勤務する看護師ならではの役割」を把握することです。通常の病棟で働く看護師とはまた異なる役割があるのですが、なかなかそこまで整理して把握できている看護師は少ないように感じます。
今回は地域包括ケア病棟で勤務する看護師の役割を事例とともに解説していきます。この記事を読んで実践することで、患者さんの心に残る看護師になって欲しい。そんな思いで書いていきます。
目次
1 地域包括ケア病棟の看護師に求められる5つの役割
地域包括ケア病棟には様々な病棟から患者さんが転棟してくるため、幅広い知識やスキルが必要です。この章では地域包括ケア病棟で勤務する看護師に求められる役割について簡単に紹介します。次の章では、それぞれの役割について詳しく解説しますので、参考にしてください。
① 入院の受け入れ
地域包括ケア病棟では、急性期病棟から退院後の生活に不安のある方の受け入れを行います。また、介護施設や在宅療養されている方の緊急時の受け入れを行うこともあります。
② 退院に向けての意思決定の支援
患者さんやご家族様が、退院後にどのような生活を送りたいか、どのようなサービスを利用したいかなどの意思を決定できるよう支援します。
③ 退院や療養に関する不安解消
退院後の生活や、療養生活における不安を解消できるよう、患者さんやご家族様に寄り添います。
④ 退院に向けての家族支援
退院後に患者さんをサポートするご家族様が不安を解消できるよう、サポートします。
⑤ 多職種連携のコーディネーター的役割
患者さんにかかわるすべてのスタッフが連携できるよう、看護師が中心になって調整します。
なお、他部署での経験があるスタッフが多い場合は、どのような看護を行えばいいか不安になったときは相談するようにしましょう。
2 【看護師の役割①】地域包括ケア病棟への入院の受け入れ
急性期病棟では、入院による治療や安静が必要な方などが、外来や他病院からの紹介、救急搬送等により入院されます。では、地域包括ケア病棟では、どのような患者さんを受け入れているのでしょうか。地域包括ケア病棟は、以下のような場合に入院となります。
2-1 急性期治療が終了し、退院後の生活に不安のある方
急性期治療が終了し退院できる状態となっても、「退院後の生活に不安がある」、「もう少しリハビリを行ってから、安心して退院したい」など、退院に向けての支援が必要な患者さんもいます。このような患者さんが少しでも安心して在宅療養や施設療養できるよう、看護師だけでなく他スタッフも関わり、支援します。
2-2 在宅療養中・施設療養中で緊急入院となった方
在宅で療養されている方や、施設等で療養されている方の緊急時の受け入れも地域包括ケア病棟で行います。スムーズに元の療養場所へ復帰できるよう、看護師を含むスタッフ全員でサポートします。
外科的治療を伴う場合や重症の場合などは、地域包括ケア病棟ではなく急性期病等での療養となる場合もあります。
2-3 レスパイト入院の方
在宅で療養中の方を介護しているご家族様が、身体的・精神的な疲れ等により介護をできなくなってしまうということがあります。介護者の負担を少しでも軽減し、息抜きして介護疲れを防ぐことを目的とした入院が「レスパイト入院」です。主に医療管理が必要でショートステイ等の利用が難しい、神経難病の患者さんや気管切開を行っている患者さんなどが対象となることが多いです。
例えば、整形外科病棟では骨折等の整形外科疾患の患者さん、消化器内科病棟ではイレウスなどの消化器内科疾患の患者さんが入院されます。しかし、地域包括ケア病棟では様々な疾患の患者さんが入院される可能性があるのです。そのため、看護師は様々な疾患に関する知識やスキルを求められます。
3 【看護師の役割②】退院に向けての意思決定の支援
急性期治療が終了し、退院についての話が出るようになった段階では、在宅での療養生活がイメージできていないこともあります。また、どのようなサービスを利用するか、在宅ではどのように過ごしたいかということなども、しっかり把握できていない状況ということも多いです。
地域包括ケア病棟では、入院期間中に「どのように在宅で過ごしたいか」、「どのようなサービスを利用すれば安心できるか」、「家族は退院後、どのように関わっていきたいか」など、退院してからの生活についてイメージできるよう支援するとともに、サービスの利用や過ごし方を決定できるよう支援します。
患者さん本人とご家族様の意見が異なる場合は間に入って、お互いの意見を尊重しながら、お互いが納得できる方法を提案することもあります。
病院によっては、患者さんが退院後の生活をイメージしやすくなるよう、自宅への外出や外泊を行います。その際、患者さんやご家族が不安に感じたことや、あればいいと感じた物品などについても確認することも大切です。
例えば、「退院後の生活のイメージがつかない」と話す患者さんがいる場合、土・日を利用しての外泊を提案します。外泊前は「退院してから、必要と思ったものを揃えれば大丈夫だと思う」と話していた患者さんも、外泊後は「玄関の段差も気になるし、トイレの中の手すりがないことも困った。風呂にも廊下にも手すりがあった方が安心だ」と、手すりがあった方がいいということを退院前に確認できます。また、入院中に手すりの工事を終えることができ、安心して在宅に戻ることができるようになります。
4 【看護師の役割③】退院後の療養に関する不安解消
退院後の療養生活に不安を感じている方は大勢います。そのため、看護師は少しでも不安を解消して療養生活を送ることができるよう、入院中に支援を行うことが大切です。
4-1 外出・外泊による不安を解消
例えば、先ほども紹介したように、退院後の生活を確認するために自宅への外出や外泊ができるよう支援することも、患者さんやご家族の不安解消につながるでしょう。
4-2 在宅での管理の不安を解消
吸引や経管栄養などのケアが必要な患者さんに対しては、専用の手引きを作成し、入院中に不安なく一人で実施できるよう指導することも大切です。さらに、手技だけではなく、何かトラブルが生じたときの病院受診の目安や、すぐに受診した方がよい状況なども併せて手引きに記載して伝えることで、さらに安心できるでしょう。
また、胃ろうを造設し、退院後の生活に不安があると患者さんが言っているとしましょう。一般的な説明資料を用いての指導は終えているものの、退院後は自分でできるか、何かトラブルがあったときにどうすればよいかなど、不安に感じる患者さんは多いです。
患者さんが安心して自分で胃ろう管理ができるよう、患者さんに許可を得て、実際に患者さんが使用されている物品、患者さんに実際に経管栄養を実施しているときの写真を撮影し、その写真を用いて管理のための手引き資料を作成してあげるのはいかがでしょうか。手順は一般的なものとあまり変わりはありませんが、不安に感じていることや病院受診の目安、物品を交換したほうがよい状況なども併せて文章にすることで、患者さんの安心感につながります。
5 【看護師の役割④】退院に向けてご家族も支援
退院後の生活において、患者さんが不安に感じていることを確認するとともに、ご家族の不安に感じていることも確認することが大切です。例えば、「自分は本当に介護をできるのか」、「夫は家での生活を望んでいるが、介護施設などで過ごした方がきちんとした介護を受けることができるのではないか」などの不安を感じていることが多いです。
在宅療養をするためにはご家族の協力も必要不可欠です。そのため、ご家族様も安心できるよう支援していきましょう。
5-1 患者さんとご家族で不安を感じるポイントは異なる
患者さんが不安に感じていることと、ご家族が不安に感じていることが異なる場合もあります。しかし、ご家族は患者さんを前にして、どのようなことを不安に感じているか看護師に伝えることができず、そのまま退院となってしまうことがあります。できれば、看護師はご家族と話をする時間をとり、どのようなことを不安に感じているのか確認するようにしましょう。
吸引や経管栄養などのケアが必要な場合、ご家族も手技や注意点、トラブルが生じたときの対処法などを理解しておく必要があります。そのため、患者さんだけでなくご家族にも手引きを渡して指導をすることで、患者さんだけでなくご家族も安心することが可能です。
5-2 介護を行うご家族が休むすべを伝える
在宅療養でご家族がメインで介護を行う場合、気の休まる時間がなく精神的にも身体的にも疲労し、介護疲れの状況となってしまうことも多いです。そのため、ショートステイやレスパイト入院等を利用できることを伝え、時には気分転換も大切なことを伝えておくといいでしょう。
6 【看護師の役割⑤】他職種連携のコーディネーター的役割
患者さんが在宅や施設での療養生活を送るためには、看護師だけでなく医師やセラピスト、ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師など、様々なスタッフと連携し、患者さんがより良い状態で退院できるように支援していかなければなりません。そのため、看護師はスタッフ間の中心となり、患者さんの情報を共有できるよう調整する役割を担います。
例えば、患者さんの退院に向けたカンファレンスを開催する際は、看護師が他のスタッフの予定を確認し、開催する日程を決めます。また、各スタッフが患者さんの状況などを情報交換できるよう、カンファレンスの中心となることも多いでしょう。
患者さんが安心して療養生活を送るためには、「切れ目のない連携」が大切です。院内のスタッフだけでなく、退院後にかかわるケアマネジャーや訪問看護師等とも連携をとることができるよう、調整する必要もあります。
7 まとめ:地域包括ケア病棟で働く看護師の役割は今後ますます重要になる!
地域包括ケア病棟で働く看護師の役割を紹介しました。
地域包括ケア病棟は平成26年に新設された病棟のため、詳しく知らないという方もいるでしょう。しかし、医療が在宅へシフトし、在宅療養をされる方は増加していくことが考えられるため、今後はますます需要が高くなっていくことが考えられます。そのため、興味のある方は地域包括ケア病棟での看護師の仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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