7つの役割を抑えておけば安心!チームナーシングのリーダーの役割
看護方式としてチームナーシングを採用している病院でリーダーの役割を任されている方はスタッフがなかな自分の気持ちを分かってくれなくて困っていませんか?
また、同じリーダーを任されている方に相談しようにも、リーダーは数が少なく、この気持ちを分かってもらえる人が周りにいなくて心細い思いをしていませんか?
そう思っている方はリーダーとして日々立派に頑張っている方だと思います。
私は、訪問看護の会社の役員としてリーダーを束ねる役割を担っています。リーダーとしてしっかりチームをまとめている方は概ね孤独を感じ、スタッフとの意思疎通に困っているのを日々相談されているからその気持ちがよくわかります。
根本的な原因は、視野の広さと遠くを見る視点の違いです。何人もスタッフをまとめないといけないリーダーの視野の広さとスタッフの成長や将来を考えるリーダーの遠くを見る視点、いずれも日々考えているリーダーに対して、スタッフは日々目の前の指示された仕事をこなすという視野・視点ですので、当然ギャップが生じます。
このギャップを埋めようと思わないでください。リーダーとスタッフでは日々の役割、考えていることが違うので、埋めようとして埋まるものではありません。また、スタッフがわかってくれないからといって、スタッフを批判することはやめましょう。スタッフはスタッフなりの目線で日々努力し頑張ってくれているからチームが成り立つのです。大事なことは、ギャップを感じ、孤独を感じながらも、自分のリーダーの役割や行動に自信を持つことです。
リーダーとしての役割を総括すると、目的達成のために必要なことに対して、「いつ」、「どのように」物事を進めていくかを計画し実行・指示することです。
今回は、リーダーとして自信をもって安心して日々取り組めるよう、チームナーシングのリーダーの役割を7つに分類し、課題に対処するための具体的なアドバイスを提供します。これからリーダーの役割を担う方も是非この記事をご覧になっておいてください。リーダーとなった看護師は、看護方式の目的をしっかりと認識し、役割を果たしていくことで、スタッフ1人1人を支えながら、ひとつのチームとして「質の良い看護の提供」に繋げていきましょう。
目次
- 1 【役割①】患者さんの問題をチームで共有し、適切な解決策を導く
- 2 【役割②】患者さんに複数のスタッフを関わらせ、より多角的な看護を行う
- 3 【役割③】看護師間の業務量をチーム内で平準化する
- 4 【役割④】チームで連携をとり、患者さんへ素早い対応を行う
- 5 【役割⑤】看護師に能力差があっても全患者さんに一定水準の看護を提供する
- 6 【役割⑥】チームで目標を立て、モチベーションを高く保つ
- 7 【役割⑦】チームスタッフのスキルアップ、キャリアアップを応援する
- 8 新人リーダーが知っておくべき成功事例と具体的なアドバイス
- リーダーとして、自分の視野を広げるためには、継続的な学びや経験の積み重ねが重要です。また、スタッフの視野を広げるためには、情報共有や研修を通じて知識やスキルの向上をサポートしましょう。
- スタッフの成長をサポートするためには、定期的な面談やフィードバックを行い、スタッフのニーズに応じたサポートを提供することが重要です。また、チーム内でのメンター制度やコーチングを導入し、スタッフ同士の支援を促進しましょう。
- 9 まとめ
1 【役割①】患者さんの問題をチームで共有し、適切な解決策を導く
チームナーシングでは、看護ケアの内容や看護目標の展開などもチームカンファレンスを行い、患者さん情報や看護の問題点を共有します。
カンファレンスを通してスタッフそれぞれの経験や知識を共有できることで、自分以外の視点を知ることができ、多角的な看護に結びつけることができます。
【求められる役割】時間確保と看護計画の見直し
ここで求められる役割は『看護師間の情報共有の時間を確保し、看護計画を見直しをする』ことです。看護計画をチーム全体で見直すことは、チームナーシングの基本といえるでしょう。
【役割を果たす行動】看護目標の方向付け
役割を果たすための行動は、目標を達成するためにスタッフとのコミュニケーションを密に行いながら、カンファレンスを通して看護目標の方向付けをすることです。カンファレンスを執り行うだけでなく、スタッフへの質問を行い、スタッフからの意見や提案に対して、自分の考えを押し付けるのではなく柔軟に対応し、看護問題を解決する方向に指南していきましょう。
忙しい業務の中で、チームカンファレンスをする時間を「いつ、どのタイミングで確保するのか」について、リーダーとして考えることが必要です。
2 【役割②】患者さんに複数のスタッフを関わらせ、より多角的な看護を行う
チームナーシングのメリットとして、1人の患者さんに対してチームスタッフ内で様々な看護師がケアに関わることができるという点があります。
プライマリーナーシングのように看護師が一貫して関わる方法とは違い、多数の看護師で診ることができるため、より多角的な視点から患者さんについて考え、1人では導き出せない問題解決法も浮かんでくるはずです。
【求められる役割】スタッフの割り当て
患者さんを複数の看護師で診ることができるメリットから導かれる役割は、1人の患者さんに対して、複数の看護師を割り当てることです。メンバーそれぞれの能力や適性を把握し、シフトを考慮しながら患者さんに配置することで、患者さんにとっても効率の良い看護に繋がります。また、スタッフ同士の交流や連携を促すことで、チーム全体で知識やスキルの共有を進めていきましょう。
【役割を果たす行動】業務計画立案と実行指示
役割を果たすための行動は、看護師や患者さんの適性を考慮しながら、業務を計画し采配することです。チームで担当する患者さんのカルテやワークシートを事前に確認し、受け持ち看護師の配分や個々の仕事内容を決定します。スタッフの経験値や日々の看護の実践能力、個性を理解し、どう患者さんと関わるように配置していくかを考えていく必要があります。
3 【役割③】看護師間の業務量をチーム内で平準化する
業務量の偏りは、スタッフのストレスや労働環境の悪化につながります。リーダーとして、看護師間の業務量をチーム内で平準化することが求められます。
【求められる役割】スタッフ間の業務量の公平化
業務量の調整ができるというメリットを最大限享受するためにリーダーに求められる役割はチームの看護師の業務量や残業時間の差を無くすことです。スタッフにいる看護師の能力差は様々ではありますが、チームナーシングはそのメンバー間で業務を協働して取り組んでいく必要があります。
【役割を果たす行動】業務量の日々確認
役割を果たすための行動は、まずはチーム看護師の業務の進捗を適宜確認することが大切です。看護ケアは予定していてもその通りに進まないことも多々あります。その日に割り振った業務に遅れが出ている看護師がいたり、逆に手薄になってしまった看護師がいる場合は、スタッフの能力などを考慮しながら柔軟に業務分担を組みなおすようにしましょう。
チームの看護師のシフト持続時間にばらつきがないかなどにも気を配りましょう。また、効率的な業務フローを構築し、無駄なタスクを削減しましょう。
4 【役割④】チームで連携をとり、患者さんへ素早い対応を行う
チームナーシングでは、患者さんからのナースコール対応や医師や薬剤師から急な指示があった場合でも、複数人居るスタッフの中で役割分担し、連携していくことで素早い対応に繋げることができます。
【求められる役割】患者さんへの対応フォロー
患者さんへ素早い対応を行うために求められるリーダーの役割は患者さんの要求に対して、看護師が素早く対応できるようにすることです。チームで連携をとり、患者さんへ迅速な対応を実現することが重要です。これにより、患者さんの満足度向上を目指しましょう。
【役割を果たす行動】なるはやでスタッフをフォロー
役割を果たすための行動は、スタッフたちが受けた要求や指示に対して必要に応じて即座にフォローをすることです。患者さんからのクレームなども含めて、スタッフだけでは対応できない場面があるような場合にはリーダーも一緒に現場に行き、状況を判断し対応することが必要です。
また、スタッフの看護師間だけではなく、医師や薬剤師との連携の橋渡しをすることもリーダーの仕事です。スタッフの看護師から患者さんの状態変化などの相談を受けた場合には必要性を判断し、担当医師に伝え新たな指示受けなどを行っていくことも必要となります。
5 【役割⑤】看護師に能力差があっても全患者さんに一定水準の看護を提供する
リーダーとして、看護師の能力差があっても、全患者さんに一定水準の看護が提供できるようにすることが求められます。チームナーシングは複数人の看護師で構成されているため、経験年数や能力などもスタッフ間である程度の能力差が生まれてしまうのは仕方ないことです。しかし、複数人で構成されているからこそ、弱い部分も補えるという利点があります。
【求められる役割】業務漏れの確認
一定水準の看護を提供するためにリーダーに求められる役割は全ての患者さんに予定された業務が、ミスなく漏れなく達成されているかどうかを確認することです。スタッフの能力差を複数人で協働して補っていくことで、予定業務に余裕を持って取り組めるため、ミスや漏れを防ぐことに繋がります。
【役割を果たす行動】質問・観察によるスタッフ業務の確認
役割を果たすための行動は、日々、スタッフの業務の実施状況を観察すること、及び、スタッフのアセスメントや判断が適正であるかを1つ1つ評価していくことです。チーム内でのメンター制度を導入し、経験豊富な看護師が新人や能力が低い看護師のサポートを行いましょう。
また、患者さんの状態やケアの進行状況などをスタッフに質問していき、補助が必要な部分がないかスタッフ間で交代は必要かなどを見極めて采配していくことも、リーダー看護師として行うべき行動といえます。
6 【役割⑥】チームで目標を立て、モチベーションを高く保つ
看護を行っていく上で、到達目標を定めてそこに向けて看護を展開していくことが重要です。目標を達成することで、チーム全体の士気が向上し、より良いパフォーマンスが期待できます。チームナーシングでは、カンファレンスなどを通して目標をチームで共有し業務を行っていくことができるため、1人だけでは見失いがちの方向性もしっかりと定めることができます。
【求められる役割】チームの看護目標の設定
チームスタッフの方向性をそろえるためにリーダーに求められる役割は、チームでモチベーションを高く保ち、より良い看護に繋げていくために、チームでの看護目標を設定することです。
【役割を果たす行動】看護目標の設定・進捗確認・修正
役割を果たすための行動は、まず、目標設定の際に、スタッフの意見や希望を取り入れ、達成可能で具体的な目標を立てましょう。また、ブリーフィングやカンファレンスの場を設け、「チームの目標を整理・修正する」ことと、適宜チームでの目標に沿って進行しているかを確認しながらスタッフへの意識付けを行っていくことです。チームで相談し合える機会をどのくらい設けていくのかを、リーダー看護師は頭に入れておく必要があります。看護目標に対して、その日に行う看護や処置、観察項目などが設定されていきますので、そこを指標にスタッフに声掛けを行っていきましょう。
7 【役割⑦】チームスタッフのスキルアップ、キャリアアップを応援する
リーダーとして、チームメンバーのスキルアップやキャリアアップをサポートすることが求められます。チームナーシングでは個人間で能力差があっても、チーム全体で協働して動くため能力差や業務量のカバーができるとお話しました。先輩看護師との共同業務やその時々での指導を通して、スタッフ間の新人看護師や復職看護師のキャリアップへの意識へも繋げるとこができます。
【求められる役割】スタッフを成長させる
チームスタッフを応援するということについてリーダーに求められる役割は、スタッフ個人のスキルを伸ばすこと・苦手分野を克服できるよう指導することで、各スタッフのキャリアアップを応援することです。
看護師という職業を通じて、経験年数に限らず次にリーダーができるような人材教育やキャリアップを助ける雰囲気作りも大切です。
【役割を果たす行動】模範となる行動をとる
役割を果たすための行動は、模範となるような行動をすることが一番です。
「チームナーシングのリーダーとは」という看護師像を示していけるように、カンファレンスの実施や教育時間の確保、連携業務を率先して行う、リーダーとしての日々の業務を確実に遂行していくことが基本です。
そのためには、リーダー自身が持っている不安(未経験の事例に対する知識や急変時の対応など)を解消していくことも必要となるでしょう。自身の知識やスキルの習得や手順の再確認も日々の業務の中で必要なことです。
8 新人リーダーが知っておくべき成功事例と具体的なアドバイス
成功事例1: 視野の広いリーダー
あるチームナーシングリーダーは、自分の視野を広げ、スタッフの視野の狭さを理解することで、スタッフとのコミュニケーションが改善されました。リーダーは、自分の経験や知識をスタッフに共有し、スタッフが自分の視野を広げる手助けをしました。結果として、スタッフの理解が深まり、チーム全体の連携が向上しました。
リーダーとして、自分の視野を広げるためには、継続的な学びや経験の積み重ねが重要です。また、スタッフの視野を広げるためには、情報共有や研修を通じて知識やスキルの向上をサポートしましょう。
成功事例2: スタッフの成長をサポートするリーダー
別のチームナーシングリーダーは、スタッフ1人1人の成長や将来を考えるリーダーシップを展開しました。リーダーは、スタッフの個々の能力や目標を把握し、適切な研修や教育プログラムを提供しました。結果として、スタッフのスキルアップやキャリアアップが促進され、チーム全体のパフォーマンスが向上しました。
スタッフの成長をサポートするためには、定期的な面談やフィードバックを行い、スタッフのニーズに応じたサポートを提供することが重要です。また、チーム内でのメンター制度やコーチングを導入し、スタッフ同士の支援を促進しましょう。
9 まとめ
チームナーシングにおけるリーダー看護師の役割についてお話してきました。リーダー看護師は、チームのまとめ役であり時には教育係となり、また医師や多職種との連携の要にもなります。その多岐にわたる役割を担っていくためには、自らのスキルや判断能力の向上を続けていくことも必要でしょう。
時には、複数の看護師をまとめていくのは大変だと思うこともありますが、スタッフたちにとってリーダー看護師はとても頼りになる存在です。日々の看護に励むことができるのも、リーダー看護師がいてこそなのです。
リーダー看護師として自分自身も切磋琢磨することで、その姿を見本とする後輩たちも出てくるでしょう。これからも、リーダー看護師としての役割を意識しながらチームを効率よくまとめ、チームワークの向上と患者さんへの質の良い看護の提供へとつなげていってください。
※参考文献:看護師のリーダー業務の評価方法に関する研究
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