看護観とは「あなたの理想の看護師像」だれでもできる看護観の作り方~例文つき~
あなたは、「看護観」について考えたことはありますか?
特に、「看護観」に関するレポートの提出を求められた時、「何から書けばいいのか」、「どうすれば看護観についてまとめることができるのか」など、レポートの作成に困っている方は多いのではないでしょうか。
看護学校や看護大学では、実習や座学による学びに関してレポートの提出を求められることが多々あります。どのようなテーマであっても、様々な経験を振り返ったり多くの文献を活用しなければならないため、レポートを作成することはとても大変です。
ここでは、看護観とは何かということや看護観の考え方、看護観の作り方などについて、例も交えながら紹介します。看護観のレポートを作成するときの参考にするだけでなく、自分の中の看護観を確認するために参考にしてみましょう。
目次
1.看護観とは「あなたの理想の看護師像」のこと
看護観とは、簡単に言うと「あなたの理想の看護師像」のことです。どのような看護師になりたいか、患者さんから見てどのような看護を行いたいか、看護師として大切にしたいことなどをまとめたもの、というように考えることもできます。
きっと、「患者さんにとって優しい看護師」や、「思いやりを持った温かみのある看護を行う」などを思い浮かべる方が多いでしょう。
確かに、看護師といえば患者さんに優しく、思いやりをもって看護を行うことが大切です。しかし、これだけでは漠然としていて、レポートにまとめることは難しいでしょう。そのため、「患者さんにとって優しい看護師」から、もう少し具体的に考えていく必要があるのです。「看護師として患者さんにどのような看護を行い、患者さんからどのように思ってもらいたいか」ということまで、掘り下げて考えてみましょう。
2.主体的に考えるのが看護観のあるべき姿
第1章で看護観の定義を説明しましたが、これだけでは看護観についてのレポートはなかなか難しいでしょう。では、どのように考えれば自分の「看護観」について深めることができ、レポートにまとめることができるのか、具体的に解説します。
2-1.人のまねをしない
まず大切なのが、「人のまねをしない」ということです。自分の看護観についてなかなか考えがまとまらない、けどレポートの提出期限が近付いている…となると焦ってしまい、つい誰かのまねをしたいと考えてしまいます。中には、「インターネット上で紹介されている例文を少し変えれば大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、当然ですが、まねをするのはやめましょう。看護観について、すべての看護師が同じ考えではありません。一人一人の考えが違うように、看護師の数だけ看護観は存在します。「思いつかないから」といって、誰かのまねをすることは避けてください。
また、インターネット上に看護観のレポートの例が掲載されていますが、例はさほど多くはありません。インターネット上の例を少し変えただけでは、まねをしたことが先生にバレてしまい、レポートを受け取ってもらえなくなる可能性があります。必ず自分の考えを、自分の言葉で書くようにしましょう。
2-2.客観的にならず、主観的に考える
看護観を考えるときに勘違いしやすいのが、「看護師としてあるべき姿」を考えてしまうことです。「あるべき姿」とは、「こうでなければならない状態」と言い換えることができます。例えば、看護観を「看護師は患者さんに優しくあるべき」と考えたとします。これを言い換えると、「看護師は患者さんに優しくなければならない」となり、自分の意見というよりは「みんなが納得するような客観的な考えとなってしまいます。
上でも紹介しましたが、看護観とは「あなたの理想の看護師像」です。そのため、みんなが納得するような客観的な考えでなく、自分が納得するような主観的な考えをする必要があります。
3.自分が納得できて、周りからも称賛される看護観の考え方
ここでは、よりよい看護観の考え方について紹介します。自分が納得できて、さらに周りからも称賛される看護観とは、どのように考えればよいのか確認していきましょう。
3-1.今までの実習でのエピソードを思い出す
まず、これまでの実習での経験を思い出してみましょう。あなたが患者さんに行ったケアやコミュニケーション、ご家族様との関わり、指導者の看護師とのかかわりなど、多くのエピソードがあったと思います。その中から、あなたが特に印象に残った出来事や患者さんと看護師との関わりから学んだことなどから、あなたが「これからどのような看護師になりたいか」と感じたことをまとめてみましょう。
学生は全員看護実習に参加しますが、それぞれ受け持ちの患者さんや経験する内容、指導されたことは異なります。そのため、実習を通して学んだことなどから看護観をまとめることで、他の人とは異なる、「あなたオリジナルの看護観」に関するレポートの作成が可能です。
3-2.看護観と、理由や具体例が一貫していること
看護観についてレポートにまとめるときは、「あなたがなぜ、その看護観を大切にしているのか」という根拠を示す必要があります。その看護観を大切にしている理由や、看護観を考えるきっかけになった経験、具体的なエピソードなどを書かなければなりません。
レポートは、読み手がスムーズに理解できる内容にまとめる必要があります。そのため、あなたが挙げた看護観と、その理由や具体例が一貫している文章を書くように心がけましょう。
もし看護観と理由や具体例が一貫していなければ、読み手はスムーズに読み進めることができません。せっかく素晴らしい看護観を持っていたとしても、読み手は「本当にこの看護観を大切にしているのか」と疑問に感じます。場合によっては、「文字数稼ぎではないか」と思われてレポートが不採用となってしまうので、一貫した内容を書くようにしましょう。
4.看護観はPREP法でつくろう!
ここまで、看護観についての考え方を紹介しました。しかし、実際にレポートにまとめるとなると、「どうやって文章をまとめればよいかわからない」と感じるのではないでしょうか。
まず、看護観のレポートについては、「PREP法」でまとめるようにしてください。「PREP法」とは、以下の順で内容をまとめることです。では、まずはPREP法を用いて作成した、看護観のレポートの例を紹介します。
①結論・要点(Point)
②理由(Reason)
③具体例(Example)
④結論・要点(Point)
(Point)
私の看護観は、どのような場面でも患者さんが話しかけやすい雰囲気作りを大切にすることである。
(Reason)
病院実習で患者さんを受け持ってみて、患者さんやご家族様は、常に今の病状や今後の経過、退院後の生活についてなど、多くの場面で様々な不安や疑問を持っているということが分かった。
しかし、何か不安に感じたり疑問があったとしても、医師や看護師が慌ただしくしていると、なかなか確認をすることができず不安や疑問を解消することが難しい。
(Example)
病院実習中にある患者さんを受け持った際、患者さんから「今度手術を受けるんだけど、手術後はどんな生活を送ることになるか、全然想像ができない」という話を伺った。
患者さんに「看護師さんに聞いてみたことはありますか?」と尋ねると、「看護師さんも先生もいつも忙しそうで、不安や疑問を聞きづらい」といわれた。
また、他の患者さんのご家族様からは「私も聞きたいことがあるけれど、家族からの質問は先生や看護師さんにとって迷惑ではないか」と相談を受けたこともあった。
(Point)
患者さんやご家族様が抱えている不安や疑問を解消できることで、さらに患者さんやご家族様に寄り添った看護が提供できると考える。
そのため、慌ただしく働いている中でも、患者さんやご家族様が話しかけやすい雰囲気を作ることが大切だと思う。
いつでも気軽に話しかけてもらえるよう、日ごろから笑顔を心がけ、自分から積極的にコミュニケーションをとっていきたい。
また、バイタルサインの測定時やナースコールの対応時など、短時間のかかわりの時であっても「何かお困りのことはありませんか?」という一言を忘れないようにして、どのような場面でも患者さんが話しかけやすい雰囲気作りを大切にしていきたい。
5.結論・要点(Point)の作り方
先ほど紹介した例文をもとに、結論や要点をどのように作ればよいのか見ていきましょう。
5-1.自分がどんな看護師になりたいかを一言にまとめる
結論や要点は、「自分がどんな看護師になりたいか」ということを、一言でまとめてください。最初に一言でまとめることで、読み手に「このような看護観を大切にしているんだな」ということがわかりやすくなります。理由などは次の段落で記載すればいいので、一言で記載するのみで大丈夫です。
「みんなとは違う、立派な看護観を考えなければ…」と考えている方はいませんか?このような考えになってしまうとレポートにまとめることがますます難しく感じてしまいますし、自分の本来の看護観から考えが遠ざかってしまいます。自分の看護観をうまく言葉にすることができなくなってしまうので、難しく考えないようにしてください。あなたが「今」大切にしていることを、そのまま書きましょう。
5-2.結論・要点(Point)の例文
とはいえ、看護観を一言で表すのは難しいと考える方もいるでしょう。いくつか例を紹介しますので、参考にしてください。
- 私の看護観は、患者さんとの信頼関係を大切にすることである
- 私は、笑顔を大切にして看護を行うことを看護観としている
- 臨機応変に対応できることを看護観として大切にしている
- 私の看護観は、患者さんだけでなくご家族様にも信頼される看護を行うことである
これらのように、あなたの看護観が一言でわかるように記載しましょう。
6.理由(Reason)の作り方
結論や要点の次は、「なぜあなたがその看護観を大切にしているのか」という理由を記載します。では、理由の文章を作る時のポイントや例を見てみましょう。
6-1.実体験を紹介する
理由(Reason)を作る際には実体験を基にすることを最もおすすめします。なぜなら、自分の実体験に基づく看護観は自然と自分だけの看護観になるからです。
6-2.本や文献を引用する
例文では、特に本や文献からの引用は行っていません。しかし、説得力のある文章を作成したいときには、本や文献から、根拠となる部分を引用すると良いです。
なお、インターネット上の文章は、知識のない方が書いている場合もあるので説得力に欠けます。引用する場合は、本や文献から探すようにしてください。また、引用しているということがわかるよう、著者名やタイトルなども記載しましょう。
6-2.理由(Reason)の例文
実体験の例文は第5章で紹介したので、ここでは理由(Reason)に文献を引用する例文を部分的に紹介します。参考にしてください。
「笑顔」を看護観としている場合の例文
看護師の笑顔に関しては、小林が「病気のために基本的ニーズが満たされなくなった時の援助は笑顔の看護師さんだと安心して頼むことができる」」ことや「人間本来の持てる力を発揮できる環境をつくるためには看護師の笑顔はとても大切」であるということを述べている。
「臨機応変」を看護観としている場合の例文
患者さんの状態は、常に変化している。また、急変や緊急入院など、予期せぬ状況にも対応していかなければならない。そのため、あらかじめ考えていた計画通りに看護や業務を行うことは難しく、臨機応変に行動することが大切である。
7.具体例(Example)の作り方
続いて、具体例はどのように考えていけばよいか見ていきましょう。
7-1.看護実習で見たこと、感じたことを紹介する
もっとも考えやすいのが、看護実習で実際に見たことや感じたことを文章にすることです。あなたと患者さんとのかかわりの中で感じたことでもいいですし、患者さんと看護師のやり取り、患者さんの言葉など、特に印象に残ったことを文章にしてみましょう。
7-2.具体例(Example)の例文
「寄り添い」を看護観としている場合の例文
受け持ちの患者さんのケアをしていた際、このように言われることがあった。「看護師さん、いつも忙しそうで、なかなか話しかけにくいのよ。頑張って不安に感じていることを話しても、しっかり聞いてくれている感じはないし、他のことを聞けなくなってしまう」。看護師は一人で多くの患者さんを担当するため、時間に追われることも多い。しかし、患者さんへの寄り添いの気持ちを持っていなければ、患者さんにより良い看護を行うことができなくなると考える。
「自己研鑽」を看護観としている場合の例文
病院実習で受け持った患者さんに、「この薬って、なんの薬なの?」ときかれた。しかし、すぐに答えることができず、自分の勉強不足を痛感した。看護師が患者さんに信頼されるには、日ごろの関わりや身だしなみ、コミュニケーションなどが大切である。さらに、幅広い知識をもって、日ごろの看護に活かすことも大切だと感じた。
8.看護観を作っておくと面接の準備にもなる!
看護観のレポートについて、PREP法での作成方法を紹介しました。何がきっかけで、どのようなことを大切にしているか、相手にわかりやすく伝えることができたと思います。この文章は、面接にも役立つということをご存知ですか?
就職活動での面接時、「あなたの看護観と、その理由を教えてください」と聞かれることがあります。しかし、看護観についてしっかり考えたことがなければ、上手く答えることができません。
今回紹介したPREP法は、結論→理由→具体例→結論・要点と文章がまとまっており、話の展開が論理的で説得力があります。分かりやすく、最後まで聞きやすい構成なので、面接官もあなたの看護観を理解しやすいです。
就職活動の時にも生かすことができるよう、この機会に看護観についてしっかり考えてみましょう。
9.まとめ
いかがでしたか?看護観とは何かということや看護観の考え方、看護観の作り方などについて紹介しました。
看護観は、「あなたの理想の看護師像」です。しかし、看護観についてまとめるには、人のまねをせずに、主観的に考えなければなりません。また、実習でのエピソードを添えることで、あなただけの看護観を考えることができます。
難しく考える必要はありません。あなたの考えやこれまでの経験を、今回紹介したPREP法でまとめ、あなただけの看護観について考えてみましょう。
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