バイタルサインで知るべき5項目と、抑えておくべきそれぞれの正常値
バイタルサインとは「呼吸」「脈拍」「血圧」「体温」「意識レベル」の5つを測定することで、生命維持の基本をなす、としています。
バイタルサインを把握することで、客観的な数値データを収集し、アセスメントをすることは勿論のこと、前日などとの比較を行い異常の早期発見にも役立ちます。
各項目の正常値を把握することは勿論のこと、普段との解離を見つけてアセスメントすることが看護師には求められます。事例などを見ながら日々の業務に活かせるようにしましょう。
目次
1 バイタルサインとは「呼吸」「脈拍」「血圧」「体温」「意識レベル」の5つ
バイタルサインは英語で表記するとVital signsであり、Vital(生命)とSigns(徴候)という直訳から生命徴候と言われています。「生体が生存していくために、必要な基本的生理機能を保持していることを示す徴候」を表しており、基本的には「呼吸」「脈拍」「血圧」「体温」「意識レベル」の5つを指します。
多くの疾患は生命維持の基本をなす循環・呼吸機能に影響を及ぼすので、バイタルサインを観察することによって、生命の危機及び異常を早期に発見することができます。そして、客観的なデータを元にアセスメントが可能となるため、バイタルサインの測定は重要な意味を持ちます。基準値からの逸脱は勿論のこと、前回と比べての変化があるのか、前日の測定値との変化があるかなどを比べることも大事になります。
2 バイタルサインの基本は正常値を知ること
バイタルサインを測定する上で、最も重要なことはそれぞれの正常値を把握することです。基準値からの逸脱がないかを抑えることが重要な指標になります。その上で普段の患者さんの状態とを比べて、以上の早期発見に努めることが大切になります。
2-1 呼吸数の正常値は12~20回/分
呼吸は無意識な状況で、規則正しく1分間に約12~20回行われます。①腹式呼吸、②胸式呼吸、③胸腹式呼吸とそれぞれの呼吸法がありますが、規則正しく呼吸という部分がポイントになります。
数十秒にわたる低換気の後に、大呼吸を繰り返す「チェーンストークス呼吸」や、口をパクパクさせた喘ぐような「下顎呼吸」などの代表的な異常呼吸があります。いずれも規則的な呼吸とは逸脱していることが多い為、まずは規則正しい呼吸であるのか、呼吸数は12~20回に収まっているのかを把握することが大切になります。
2-2 脈拍の正常値は60~80回/分
脈拍も呼吸同様規則正しくというポイントは重要になりますが、正常範囲は60~80回/分が基準になります。脈拍は頻脈や徐脈などの回数の問題に加えて、①期外収縮、②心房細動、③心室細動に代表される不整脈の確認も大事になります。期外収縮では主に脈が飛んでしまう方に出やすい症状で、胸痛を伴う場合は心筋梗塞のリスクが上がります。心房粗動では脳梗塞のリスクが高まり、心室細動では心停止が生じることがあります。そのため、必ず脈拍は触診するようにし、症状があれば心電図の測定や医師への報告を必ず行いましょう。
脈拍数(HR:Heart Rate) | 状態 |
60回/分未満 | 徐脈 |
60~80回/分 | 正常値 |
100回/分異常 | 頻脈 |
2-3 血圧の正常値は120~139/80~89mmHg
血圧は薬剤やストレスなどの内的因子や、気候や気温などの外的因子で変動があるものの、基本的には120~139/80~89mmHgが正常値になります。高血圧症は自覚症状がないですが、継続すると虚血性心疾患や脳卒中、腎不全などへの重篤化、低血圧では、立ち眩みや失神などを引き起こします。血圧は日々の変化を比べるのが非常に重要になります。
2-4 体温の正常値は36.6~37.2℃
日本人の7割以上の体温は、36.6~37.2℃の間にいます。但し高齢になると平熱が下がる傾向にあります。そのため、体温に関しては、日々の測定値から比較をすることが大事になります。また発熱だけで症状が測れないことも多くあるため、気になる場合は熱感の有無や、体熱感の有無の確認を併せて行うことが大事になります。
2-5 意識レベルはジャパン・コーマ・スケール(JCS)を使用
日本で主に使われているのはジャパン・コーマ・スケール(JCS:Japan Coma Scale)になります。JCSは覚醒度を3段階に分け、それぞれが3段階に分かれているので3-3-9度方式と言われます。どの病院でも使われるので、これは丸暗記しましょう。
<JCS/3-3-9度方式>
意識区分 | コード | 意識状態 |
0 | 意識清明 | |
Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態 | ||
Ⅰ | 1 | だいたい意識清明だが、今一つはっきりしない |
Ⅰ | 2 | 見当識障害がある |
Ⅰ | 3 | 自分の名前、生年月日がいえない |
Ⅱ.刺激をすると覚醒する状態~刺激をやめると眠り込む~ | ||
Ⅱ | 10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する |
Ⅱ | 20 | 大きな声または体をゆさぶることにより開眼する |
Ⅱ | 30 | 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじで開眼する |
Ⅲ.刺激をしても覚醒しない状態 | ||
Ⅲ | 100 | 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
Ⅲ | 200 | 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる |
Ⅲ | 300 | 痛み刺激に反応しない |
3 バイタルサインの報告実例2選
バイタルサインを報告するにおいて重要なことは「正常値の逸脱」を把握することと「普段との正常値の変化」を掴むことです。まずはそれぞれの事例を見て学びましょう。
3-1 正常値の逸脱をしてしまった心筋梗塞疑いのAさん
呼吸数12回/分、脈拍数121回/分、血圧172/92、体温36.8℃、意識レベル清明(0レベル)
この場合の医師への報告はやはり、脈拍数と血圧の異常値にあります。もしAさんが胸を苦しがったり、冷や汗などの症状があれば、心疾患を疑って医師に報告あるいは、事前に12誘導心電図を測定することが看護師として求められます。まずはバイタルサインの測定から正常値との逸脱を早期に感じ取るようにしましょう。
3-2 正常値だが普段とは違う感染症疑いのBさん
呼吸数18回/分、脈拍数80回/分、血圧122/82、体温37.2℃、意識レベル清明(0レベル)
Bさんの場合は異常値が見つかりません。しかし、普段の体温が36.0℃であればどうでしょう。この場合、正常値ではありますが、普段と1.2℃の差もあることから熱発を疑い肺炎や風邪などの感染症を疑わないといけません。正常値の範囲を把握しつつ、普段の値を理解することが看護師としてとても重要になります。
4 さいごに
バイタルサインの測定は基本的には「呼吸」「脈拍」「血圧」「体温」「意識レベル」の5つの項目になります。看護師として毎日測定する業務になりますが、正常値の値を把握することは勿論のこと、患者さんの普段の値と比較することが重要になります。
その上でチームで患者さんをみているので、次勤務者との共有は大事な業務になります。特に学生や新人は正常値にばかり意識がいきやすいですが、患者さんの状態は千差万別です。数字を看るのではなく、それぞれの状態に目を向けるようにしていきましょう。
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