看護師の「忙しい」にも色々ある!特に忙しく感じる業務・病棟・時期
看護師がなぜいつも忙しそうにしているのか、どうしていつも忙しくなってしまうのか。
大部分の人には、看護師の仕事は診療の補助に目が行きがちで、療養上の世話や記録の作成、院内勉強会といった、看護師の業務の大部分を占める時間は見えてこないのが現実です。
この記事では看護師の抱える「忙しい」を4つに分類して解説していきます!
看護学生さん等、まだ看護師の現場を知らない人には実情を知っていただけるような、また、実際に働く看護師の皆さんには「あ〜、あるある!」と心の中で整理がつけられるような記事になっていますので、ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
目次
1.看護師の4つの忙しい理由
実際に働く看護師はいつも1つ業務で忙しい訳ではなく、複数の「忙しい・大変」な業務の積み重ねで慢性的に忙しくなっています。
ここでは看護師の忙しさにつながる4つの原因についてご紹介していきます。
1-1.看護師は「予期せぬ出来事の連発」で忙しい
病棟の看護師と言えば、決まった時間に食事・点滴の差し替え・服薬管理をしてくれる、人一倍時間には厳しくなってしまう職業とも言えます。
しかし、そうした完璧に見えるタイムマネジメントの裏には予期せぬ出来事の連続が毎日起こっているのです。
・内服薬や輸液の一時的な追加や変更
・救急搬送による担当患者さんの増加
・突発的な検査
・患者さんやその家族からのクレームの対応
ざっと挙げただけでもこのように看護師自身ではどうにもできない予期せぬ出来事があります。
特に患者さんやその家族からのクレームは看護師だけで解決できるものと、病院の入院制度上解決できないものがあり、不満の解消までに時間がかかるケースも少なくありません。
1-2.看護師は「日々の勉強」で忙しい
看護師に限らず、医療業界は日々進歩しています。新しい術式や治療方法、治療薬。最近では医療機器の進化も目覚ましく、新型コロナウイルスの流行当初は人工心肺装置「ECMO」の取り扱いができる医療従事者が少ないと話題になりました。
自身の働いている診療科についての勉強は勿論のこと、それ以外の分野についても広く知識を持っていないと異動になった時やキャリアアップ転職を視野に入れたときに選択肢が狭まってしまうため、就職後も勉強を疎かにすることはできません。
それ以外にも、他の診療科や疾患に精通することで患者さんの状態観察をする際の精度が格段に上がったり、作業効率の向上にも繋がるでしょう。
1-3.看護師は「患者さんの生活の世話」で忙しい
看護師の仕事には「療養上の世話」が大きくのしかかってきます。病床数の多い病院では、近年看護師不足だけでなく、看護助手不足が叫ばれおり、看護助手数は直近10年で最小となりました。
検査や服薬や点滴、清拭の時間はある程度決めることができますが、排泄のタイミングや食事にかかる時間というのは患者さんによって違ってきます。
現在の日本の病院では看護師1人に対し受け持ちの患者さんを7人とする「7対1看護」を推奨していますが、リハビリテーション病院などの緊急性の低い疾患の患者さんが入院している診療科では10対1看護や15対1看護が多く見られます。
これはあくまで日勤の話であり、夜勤帯は看護師の数が半分になってしまうことも少なくないので単純計算で看護師の負担は倍になります。
すべての患者さんが自立して排泄や食事ができるわけではなく、特に処置が立て込んでいなくても介助業務だけでてんやわんや、なんてことも珍しくありません。
1-4.看護師は「後継の育成」で忙しい
大きな病院のほとんどは看護学生の研修受け入れやプリセプター制度を設けています。
学生や新人さんと経験を積んだ看護師では知識や経験はもちろん、わからない人がわかるようになるための手段を自分で考え、相手に伝える必要があります。
患者さんのバイタルチェックからどういったことに気づけるか、どんな行動がとれるのか、どんなリスクを把握しているのかは一人ひとり違い、また、指導者の立場になる看護師自身も質問に答えられるよう知識を身に着けなければなりません。
なにより忙しさや負担に拍車をかけているのは、有事の際は指導者の責任が問われることです。
指導者という立場でなくても責任の伴う職業ではありますが、プリセプターとなった看護師の忙しさはひとしおです。
2.病棟の違いによる忙しさ
これまでは「看護師」という仕事の特性にまつわる忙しさについて紹介してきました。
ここからは病棟ごとに出てくる忙しさを紹介していきたいと思います!
転職や異動を考えている方もぜひ参考にしてみてくださいね。
2-1.ICU
ICU看護師の忙しさのポイントは「領域の広さ」「患者家族のケア」「全身管理」にあります。
専門病棟と違い、ICUの病棟には子供や妊婦、高齢者と様々な人が入院し、そのほとんどが重篤な状態です。
重症度も高いため、意識の無い場合も多く、患者さん本人との意思疎通が難しいことからご家族の不安も大きいです。
また、ICUは2対1看護が必須なため夜勤のサイクルが早く、三交代制の場合は日勤が終わって数時間後には夜勤が始まってしまうこともあり、心身ともに休まらない状況が看護師の「忙しい」という感覚に拍車をかけています。
2-2.リハビリテーション病棟
リハビリテーション病棟の看護師は「患者さんの生活介助」が大変です。
前述したICUとは対象的に、13対1や15対1看護が基本のリハビリテーション病棟は看護師一人当たりの身体的負担が圧倒的に多く、自分よりも体の大きい患者さんの介助も一人で行う必要がありますので時間がかかります。
自分で動けるようになってきた患者さんが知らない間に自力でトイレに行こうとして転倒、結果としてインシデントレポートの発生してしまうことも。
なかなか報告書やカルテ記入を集中して行う時間を確保できないため、デスクワーク残業が増えやすい傾向にあります。
2-3.専門分科病棟
そもそも脳神経外科や心臓血管外科、消化器外科などの専門分科をおいている病院は少なく、それ故に数少ない専門文化病棟には高度な治療を必要とする患者さんが多く入院します。
一般外科病棟であれば急性期(発症初期段階)の患者さんが多いイメージがありますが、専門分科の場合は急性期と慢性期どちらの患者さんもいるため、レスパイト入院や寝たきり状態の人を看護しながら術後の患者さんの状態観察や急変対応をこなさなくてはいけません。
手術前後の管理やケア、退院後の生活に関する指導も担当するため、患者さんひとりひとりへのフレキシブルな対応が求められるのも専門分科病棟の看護師の忙しさにつながります。
3.時期による忙しさ
看護師の仕事の忙しさは季節や気温、流行している感染症や天候によって左右されます。
近年で言えば、発熱外来に指定されている医療機関の声が大きく取り上げられました。
診療科によって繁忙期は違いますが、ここではどの診療科でも忙しくなりやすい時期をご紹介します。
3-1.気温の変化による急変や交通事故が増える1月
1年の中でも1月は、明るい時間が少なかったり、積雪量の増加による交通外傷やウィンタースポーツによる怪我の搬送が増える時期になります。
また、急激な冷え込みにより心肺停止・心筋梗塞・脳卒中など患者さんや、年末年始の飲み会等で急性アルコール中毒が一番増える時期でもあります。
小児科ではインフルエンザの患者さんがピークを迎え、医療現場全体で最も忙しい時期とも言えるでしょう。
3-2.新人が大量に入職してくる4月
4月は新入職の看護師が配属され、プリセプターなどの役職についている看護師にとっては非常に忙しい時期と言えます。
これは看護師に限った話ではなく、大きな病院であれば研修医や実習生が研修・実習を開始したり、在籍している看護師の間でも異動により人間関係も大きく変わる時期です。
一年で一番人が多いはずなのに、一年で一番忙しいと実感する人も多いでしょう。
特に、これまで経験したことのない診療科へ異動となった人は新人看護師ほどのフォローは得られない中での業務になり、ある程度仕事が軌道に乗るまでは気が休まらないことから、より忙しさを感じる傾向があります。
3-3.熱中症や水難事故が増える8月
1月同様に季節的な影響を受けて忙しくなりやすいのが8月です。
8月は1年のうちで平均気温が最も高く、特に年齢問わず熱中症で重篤な状態に陥るケースが多いです。
また、8月は子供だけでなく社会人もお盆休みとして連休を取得したりとアウトドアやレジャーでの楽しみが増える一方、水にまつわる事故も増える時期になります。
4.日々の積み重ねが看護師を「忙しい」から救う
ここまで、看護師が忙しくなりやすい理由についてご紹介してきました。どれだけ経験年数を重ねても業務が立てこめば、どんな人でも「忙しい」と感じるでしょう。
慌てずに冷静に対処することができればミスやインシデント、残業時間の削減にも繋がります。
そのためには日々の積み重ねが大切です。
例えば、予期せぬ出来事やクレーム対応についてはスキマ時間にインシデントレポートの確認をするだけで、どういった状況がトラブルの発生につながるのか知ることができ、防止策を講じることができます。
季節的に増える疾患の把握や日々の勉強は出勤時間や休日の朝に行うと効率よく取り組めるでしょう。
そして何より、一番大切であり一番難しいのが同僚とのコミュニケーションです。
交代制勤務の方は特に、申し送り以外でも会話の中から情報収集することを心がけると、思わぬ収穫に繋がります。
今すぐすべてを習慣づけることは難しいかもしれませんが、自分自身が特に困っていること・今後困るであろうことに絞って取り組み始めることはできると思います。
5.まとめ
看護師の仕事は業務・病棟・時期によって忙しさが大きく左右されます。
入職・転職や異動をしたばかりの人、これまでと立場が変わった人は特に、環境の変化による影響を受けやすくなります。
忙しさを感じ始める前に、スキマ時間や休日を上手に使って勉強や対策をコツコツ積み重ねること、そして何より疲労感を溜め込みすぎないことが大切です。
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